法律は誰かを不幸にする為ならず、皆を幸福にする為にある 第三話
――アリスタルフ・カプスチンはなぜアリノルトの兄アリアルトという若い弁護士を付けたのか。
悩むまでも無いほどに、実に分かり易い理由があった。
元々、アルテナイがドナシアンと作った遺言書は法的に認められていたものであり、敗訴するというのはアリアルト自身の手腕に拠るところが大きいと踏んでいた。
そしてそれをカバー出来る事実、フォン・バイクがフェリシアン側に肩入れをする、もしくは本格的に付くということを最初から知っていたからだ。
それは賭ではなく、確実性を持ってしてそうなるという自信があったからだ。
フォン・バイクがつけば、如何なる訴訟であってもほぼ必ず勝利する。つまり、アリアルトに大きな裁判で、それも人生において初めての裁判で勝利したという実績を作らせるためだったのだ。
しかし、そのような事実はアリアルト自身も気がついていない。全て自力でやり遂げたと思っていた。だが、それはアリアルトに大きな自信を与えたことは間違いないのだ。
しかし、フェリシアン有利となり、コレットとアナンヤの主張が退けられることがほぼ確定したある日。最終口頭弁論が開かれる数日前のことだ。事件は起こった。
アルフォードは色々と手続きに追われており、頻繁に首都の役所に行っていた。
裁判とは別に遺産の受け取りの手続きはアルテナイと共に行われていた。受け継ぐ額が天文学的なため、身重の身体ながら首都に書類を受け取りにいっていたのだ。
フェリシアンはそれを心配したが、アルフォードは「安定期にも入ったんだからまったく動けないワケじゃない」とフェリシアンを叱った。ガリバルディが何かと気を回し、首都での世話をしていた。
フェリシアンも「僕は僕で頑張らなければいけいない」と意気込み、毎日ガリバルディのところに顔を出していた。それが実り、ついに明日からガリバルディに整えて貰った職場で働くことになったのだ。
初日であり寝坊などするわけにはいかない。早く寝ようと思ったところに来客がきた。
「フェリシアン・ガリマールさんですね」
ドアを開けると黒のフロックコートに同じ素材のハットを被った男が二人、突然尋ねてきたのだ。
「昨夜は何処にいらっしゃいましたか?」
「首都から帰ってきてお爺ちゃ……祖父のドナシアンの部屋の片付けをしていましたが」
「あなたにポリー・アルフォード殺害の容疑がかけられています。ご同行を」




