過ぎ往く者 第四話
「おい、フェリシアン! 誰かと一緒になりたいというなら、それ相応になりなさい!
アルフォードさんは優しいから、それでもいいなどと言ってしまう!
だが、そんなことはない! アルフォードさんにだって幸せになる権利がある! それを分かっているのか!?」
フェリシアンは色々と報告し足りないとは思っていたし動揺はしていたが、喜んでくれると思っていた。
怒られたことで動揺していたことも忘れるほどにあっけにとられて目を丸くし黙り込んでしまった。
「よもやアルフォードさんに養って貰おうなどと思っていまいな!? いくらなんでもそれは、それだけは私も許さないぞ!」
フェリシアンはドナシアンの言葉に押さえ付けられて下を向いてしまった。アルフォードは悲しい顔をしたが、ドナシアンの言葉を止めようとはしなかった。
ドナシアンは怒鳴り続けていたが、あるときふとフェリシアンが「お爺ちゃん……」と下を向いたまま呟いたのだ。
ドナシアンは立ち上がり怒鳴っていたが、フェリシアンの小さな呟きが聞こえて言葉を止めた。
フェリシアンは顔を上げると「お爺ちゃん、もうやめてくれ」と言い返した。
生まれて初めて、フェリシアンはドナシアンに強く言い返したのだ。青年となるまでの長い時間の中でフェリシアンのこれまでに無い反応にドナシアンは驚き、口を開けたまま硬直してしまった。
「もうやめてくれ! そんなに母さんをあんな風に育てたのが嫌だったのか!? 僕にそのお爺ちゃんの昔の影を追わないでくれ!
僕はお爺ちゃんが大好きだ! でも、お爺ちゃんの子じゃない! 孫だ!
父親も誰だか分からないような、もう英雄の血なんて何処にも無い、普通よりもどうしようも無いただの孫なんだ!
それでも僕は一人の男としてアルフォードさん、ポリーを一人の女性としてみている。ポリーも僕を男して見てくれている。だから、こうして報告に来たんじゃないか!
今の僕を気持ちも何も知らないクセに、そんな言い方は無いだろう! いくらお爺ちゃんでも許せない!」
フェリシアンは社会に出ようと意気込んでいたこともあり、つい言葉に力が籠もってしまった。
ドナシアンは驚いてしまい、しばらく黙り言葉を探すように何度も息を吸い込んだが言葉は見つからず、「……そうか」とらしくもなく小さな声でそう言うことしか出来なかった。
フェリシアンは自分が少し前のめりになっていることにドナシアンに言い返してから気がついた。
だが、素直に謝ることが出来なかった。ドナシアンはこの世界唯一素直ではなくてもいいことを許容してくれていた存在だったからだ。




