修羅と金糞 第七話
終業のベルが鳴り、タオルで汗を拭いながら工場の外に出た。
季節は進み秋の足音も遠くなり始めていた。高く高く秋の空はどこかへ飛んでいき、代わりにやってきた冬の乾いた冷たい空気はフェリシアンには丁度よい心地よさだった。
今日は給料日だということで、フェリシアンは少し浮かれていた。
給料は一部手取りであり封筒で渡され、一部は社会保障制度や税金などの引き落としなどがあるため振り込みとなっていた。
手取りの封筒を受け取ったら、帰り道で何か美味しいものでもを買って帰ろう。
フェリシアンは軽く弾むような足取りで事務所に行き封筒を受け取り、ロッカーで着替えを済ませて足早に工場を後にした。
その日の昼間にロセッティは来なかった。もう諦めたのだろうと思っていたので足取りはますます軽かった。
「フェルセンパイじゃないっすか。帰宅っすか?」
スキップするような足取りでゲートを出ようとしていると、後輩から声をかけられた。
「そうだよ。ちょっとだけ良いもの買って帰ろうと思う」
「奢ってくださいよぉ、パイセェン」と後輩の男はフェリシアンにニタニタしながら言った。
「今日は給料日で舞い上がってるけど、このところ色々あって疲れてるからさ」
「ああー……、そういえば、なんか色々……そうッスねぇ」と後輩は後頭部を掻いた。
この後輩はフェリシアンの指導を受けていて、職場ではほとんど一緒に行動している。本社に呼ばれたこともロセッティが工場の前に来て騒いでいることも全て知っている。
後輩の残念そうな顔を見たフェリシアンは「仕方ないな。でも、お酒は飲まないよ?」と仕方なさそうに笑った。
後輩は「マジすか!」と目を輝かせ「ぜんぜん良いッスよ! ラッキー! 自分、肉食いたいッス! 肉!」と両手を挙げた。
「この野郎!」とフェリシアンは肘で後輩をやさしく突くと、二人は笑い合った。
二人は街にある小さなパブに向かっていた。
早く美味しい食事にありつきたくて足取りも軽く、近道をしようとして狭い路地に入った途端、後ろから麻袋を被せられてしまった。
フェリシアンは暴れて麻袋を取ろうとしたが、被せられると同時に首を紐で縛られた。
フェリシアンは身体が頑丈であっても、息が出来なければ気を失ってしまう。そして、紐で縛られて息を止められた程度ではすぐには死なない。
その二つを知っている者が犯人だった。フェリシアンには思い当たる人物がいた。




