修羅と金糞 第三話
その男はアナンヤの四番目の男だった。
フェリシアンは何年か前――ちょうど授業料の支払いで問題があった前後――にそう言う男がいるということだけは聞いていた。まだ付き合いがあったのかと少し感慨深くなった。
彼が言うところでは、最近までアナンヤさんとは法的にも事実婚が認められる可能性が高い状態であったそうだ。
社会的地位も資産もあるアナンヤさんとの事実婚を祝い、三年前に男は両親のために首都近くに土地とともに大きな屋敷を夫婦でローンを組んで買った。
だが、アナンヤさんが突然支払いを拒否したとのことだった。さらにアナンヤさんは突然気が合わないから籍は入れないと言い出したらしいのだ。
困り果てた末に「籍は入れていないが事実婚状態だったから、これは財産分与に含めるので、アナンヤさんにも支払いの義務が発生している」と事実を述べたが拒否されて、今では連絡も取りづらくなったそうだ。
男はやや怒り、机に拳を何度も叩きつけ悔しがりながらそう話した。フェリシアンはその姿に少しばかり同情した。
ところで、この男がなぜ無関係と言って良いほどの距離にいるフェリシアンのところに来たのかである。
フェリシアンが恐る恐るそれについて尋ねると、男は鼻の穴を含まらせて得意げな顔になり、とんでもないことを言い始めたのだ。
「ああ、そうだね。本題に入ろうか。お互いに忙しいからね。
繰り返しになって恐縮なのだが、本題も君のお姉さんのことについてなのだ。
ぼくは親孝行をしようと思って買った屋敷の代金は君のお姉さんにも支払いの義務があると先ほど言ったよね。だけど払ってくれないことも。
だから血の繋がった弟である君に、フェルシアンくんに代わりに払って貰いたい。
姉弟とは家族であり、家族愛があるのだろう。君がお姉さんを心から愛しているのは、よく知っている。
よく聞かされたよ、シスコンで困ってるってね。お姉さんも君を心から愛していた。とてもいい弟だってよく言ってたからね。ははは。
君はその愛に報いて責任を果たした方がいいと思うんだよね」
「す、すいません。あの、お名前は何と仰るのでしょうか? 僕は姉からいるという話しか……」
フェリシアンは男が何を言いたいのか理解するよりも先にまずそれを尋ねた。
フェリシアンはアナンヤの四番目の男は顔も名前も知らなかった。ただ四回目の結婚をするかも知れないと言う話を、数年前に聞いていただけだった。
このときが初対面なのである。初対面でありながら、もう親戚になる可能性はゼロになっていた。
男は驚いたように目を開き、饒舌によく絶え間なく動いていた舌をやっと止めた。黙り込むと顔を両手で押さえ擦り、大げさに悲しみを表に出した。




