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英雄遺産のエーヴィッヒ  作者: 大浣熊猫
三度過ぎ往くツワンツィヒ
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修羅と金糞 第二話

 事前の連絡で彼の義理の兄と名乗る者が面会を求めて本社に現れたと聞かされた。

 フェリシアンの勤めていたガリバルディ・メタル・インダストリーの工場は長い間暮らしている海辺の街の近くにあった。

 しかし、本社は首都にあり、海辺の街から魔導列車の特急で五時間ほど乗ったところにある。

 日帰りすることは出来ないので、フェリシアンは勤め始めてから初めて職場を休むことになった。


 工場長には社長から話が言っており、早く戻ってこいと送り出された。仕事が終わり、深夜の最終便に乗って首都に向かい、安い宿に泊まった。面会は自称義理の兄の都合により午後からだった。

 正午過ぎに宿をあとにして首都の真ん中にあるガリバルディメタルインダストリーの本社ビルへと向かった。

 都会はフェリシアンにとって初めてであり、多すぎる人と車に目眩を起こして気持ち悪くなっていた。

 おぼつかない足元と強すぎる人の流れに逆らいながら必死になって辿り着いた本社ビルはこれまでに見たことが無いほどに高く、前で立ち止まって首が折れるほど天を見上げてしまった。

 ロビーの受付で社長に呼び出されたと伝えると、受付嬢に怪訝な顔をされた。そこで初めて自分の服が正装ではなく時代遅れのものだと言うことに気がついて、青ざめていた顔が熱くなるのを感じていた。


 外の景色が見える来客用のエレベーターに乗せられて最上階へ進んでいく感覚は腹の底が地面に落ちていくような気持ち悪さがあり、このまま死んで天界に引きずり込まれてしまうのではないかという恐怖を彼に与えた。


 血の気が引いたような状態で社長室に通されると、ガリバルディ社長と見たことの無い男がいた。

 上品でシンプルなスーツを着ている社長は椅子に座り腕を組んで部屋に入ってきたフェリシアンの顔を見つめていた。

 男は別珍の高そうなスーツを着ているが、彼方此方に皺が寄っている。普段の手入れが甘く、着ているときに繰り返し出来る皺がそのまま深く刻まれているのだ。


 男はソファから立ち上がると両手を広げて「やあ、こんにちは。ぼくの弟のフェルシアンくん」と初対面というよりも何年かぶりに再会を果たした親友を見るような満面の笑みを浮かべた。フェリシアンにのしのしと近づき、両手を無理矢理包み込むように握った。

 何故か力が込められていることにフェリシアンは驚き振りほどこうとしたが、さらに力を込めてきた。彼は話を合わせろと脅したのである。


 フェリシアンは助けを求めるようにガリバルディの方を見たが、彼女は何もしようとしなかった。

 机の上に足を乗せて椅子をゆらゆら揺らし、ペンを頬に突き立てながら、怪しい者を見るようなぎらついた視線を目の前で交わされている一方的な握手に向けているだけだった。


 男はそのような視線などお構いなしに一方的に話を始めた。

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