修羅と金糞 第一話
フェリシアンは学校を不登校のままで卒業した。
フェリシアンの学年主任は不登校であるにもかかわらず教員としての務めを果たさずに放置し続けたことは、誰も口にはしなかったが周知の事実であった。
学習指導執行部もそれは把握しており、彼は逃げ切れるわけもなく退職金が支払われることも無く、定年退職直前に不慮の事故で死んだ。
学習指導執行部も「フェリシアンのいじめは確かにあった」と事後報告で全てを終わらせた。
フェリシアンが学校に行っていない日数は実に九百日近くにもなる。
その間に景色も世界も様変わりしていった。三回目のツワンツィヒが終わり、いよいよ四回目に突入していた。そこまで来るともう魔王などは過去の伝説になっていた。
フェリシアンは祖父に嘘をつき続けることからは解放されたが、働くことになった。
ドナシアンの世話はこれまでの週四日から二日に減った。それでは生計を立てることが出来ないので、正式な仕事を見つけなければ行けなくなった。
しかし、不登校だったフェリシアンは協調性が全く育っていなかった。
働き口はなかなか見つからず、希に就職できた職場では他人と協力することが不得手ですぐに辞めさせられていた。
不登校を容認し、自らの権力でもってそのまま何事も問題が無かったように卒業させたドナシアンはここでも甘かった。
かつての仲間であるフェルディナディ・ガリバルディが営んでいるバイク・スチールのグループ会社で業界第二位の金属加工業であるガリバルディ・メタル・インダストリーに就職させたのだ。
ガリバルディ・メタル・インダストリーは、ガリバルディが勇者の仲間の頃から得意だった武器の精錬技術を生かして起こした会社である。
戦いの時代が終わりを告げて社会が発展していく過程で、金属は戦場以上に必要とされたことで大きく成長していった。
今では金属加工だけに留まらず原料の鉱山の管理・採掘から製品の販売までのほとんどを取り扱っている大企業だ。
金などの希少金属も扱うためガリバルディ・トータルセキュアという警備会社も営んでいる。
職の幅も広く上から下まで縦にも広いので給料に差が出るのは必然だが、発展のために景気はよくどのような職に就いたとしても、ガリバルディ・メタル・インダストリーで働いていると言えば一定の尊敬を集めるほどだ。
フェリシアンは身体が頑丈で、体力もある。安全管理体制が徹底されている職場だが金属加工の仕事は熱に当たる機会が多い。
彼にとってはそのようなものは熱くも何ともない。熱にめげることなく、黙々と仕事をしていた。フェリシアン自身、これは自分に向いているのではないかと思い始め、仕事にかなり身が入っていた。
それから就職して四年。フェリシアンは金属加工に専念していた。
車や作業機械の免許を取得し、出来ることを少しずつ増やし、日々仕事に打ち込んでいた。
目立った業績は上げなかったが、彼はあえてそうしていたのだ。しかし、普通だがしっかりとした働きぶりは評価されていた。
そうしているうちにいつの間にか後輩たちも出来、あまり話はしないが仕事を教えてくれる優しいセンパイとして、人気と言うほどではないが人望を集めていた。
そんなある日のことだ。フェリシアンは社長のフェルディナディ・ガリバルディに呼び出された。




