アーンストートの学び舎で 第十二話
フェリシアンは無期休学と聞かされたとき、一つの理想を描いていた。
もし通えるなら、もしお金を貯めることが出来て、再び通うことが出来るのであらば、それは何年もあとになるだろう。とても遅れてしまう。
しかし、それはむしろ彼にとって理想的なのだ。
アーンストート学園の授業料は高額だ。その金額を貯め込むにはそれ相応の時間がかかる。
学校というのは卒業という終わりがある。時間が経てば生徒たちは卒業していく。
今いる自分をいじめている学生たちが卒業してから復学できればいい、嵐が過ぎ去ってから学校に戻ればいいと理想を抱いていた。
「そうか」
だが、ドナシアンはフェリシアンの思い描く理想など知りはしない。
目の前で泣いているのは、生活のために学業を我慢しているだけの可哀想な若者としか見ていなかった。そして、幸運にも資産のある者によって救われた若者であるとも。
フェリシアンの選びたかった無期休学という言葉は、甘やかす祖父にとってはフェリシアンの可哀想な状況としか理解出来ず、それを選ばせないことが最善と思ったのだ。。
「なら、私の住み込みの世話係としてお前を雇おう。その給料から授業料を出して通いなさい。
だが、何もしない、仕事していることにするというのはダメだぞ。私の世話もしてもらう。
細かいことはアルフォードさんに聞きながらやっていきなさい。
私は若いつもりはないが、まだ動ける。勉学に影響が出るというほど大変と言うこともなかろう」
「ハハハ、ありがとう。お爺ちゃん」
フェリシアンの笑いは乾いていた。嫌だなどとわがままを言うわけにはいかないと、それを受け容れたのだ。
フェリシアンは実家に帰ることはなく海辺の街に小さな家を借りた。そこから学校へ通い、ドナシアンの老人ホームにも通った。
家具はベッドと簡単な机だけだ。派手なコレットやアーヤとは違い、服も最低限のものしか持っていない。大都市に出ずとも海辺の街で簡単に揃うもので充分だった。
フェリシアンはテキストなどの教材は学校に置きっぱなしにしていた。しばしばそれで怒られていたが、このときばかりはそれが功を奏した。
何故彼が学校に置きっぱなしにしていたかというと、名門校独自のテキストは人気であり、実家に置いておくとコレットやアーヤによって持ち出され転売されてしまうからだ。
入学直後に何度かそう言うことがあったので、彼は持ち帰るのをやめたのだ。




