アーンストートの学び舎で 第十一話
アーンストート学園の近くの街から出ている魔導列車に乗り、一時間ほどシートに揺られているととある海辺の街に着く。
そこでバスに乗り換えてさらに海沿いの道を進むとドナシアンの住む老人ホームに着く。
高級なホームであり、フロア一つに一人が住んでいて、お手伝いさんが一人以上ついている。
ドナシアンはその最上階である三階に住んでいる。
ドナシアンは平日の午前中という普通なら学生も社会人も忙しいはずの時間に突然やってきたフェリシアンに何かを悟った。
どうしたのだ、と尋ねるのは間違いだということに気がつき「学校はどうだね?」と何気ない日常の会話の中でこれまで幾度となく繰り返されてきたことを尋ねた。
それにフェリシアンは「楽しいよ」と笑った。眼瞼は涙を押さえ込もうとしてたえず震えていて、誰が見てもそれが嘘だと言うのは分かる。
ドナシアンは「そうか。フォン・バイクから話はもう全て聞いているぞ」とやさしく声をかけた。
「お爺ちゃん、ごめんなさい」
「いや、フェル。なぜお前が謝るのだ」
フェリシアンは涙を堪えきれずに流し始め、それを隠すように目を擦り始めた。
ドナシアンは「おいで」とフェリシアンに向けて両手を開いた。すると導かれるようにフェリシアンはドナシアンの腕の中に入っていった。
老人はゆっくりと小さく縮んだ孫の頭を撫でながら囁いた。
「私はやはりコレットを甘やかしすぎたようだ。
自らワガママに育てておきながら、手が付けられないからといって放ったらかしにしていたが、さすがに息子の学業まで中断させるとは思わなかった。
私がまた授業料を出してやろう。それで通うかね?」
フェリシアンは正直なことを言えば、もうしばらくは学校に近づきたくもないと思っていた。
「いや、もういいよ、お爺ちゃん。これから僕はお爺ちゃんのところに週一回じゃなくてもう何日か顔を出すよ。それから少しずつ働いてお金を稼いで、自分のお金で学校に戻るよ」
祖父を安心させるためにそう言ったが、実際のところフェリシアンはもう学校には通えないだろうと思っていた。
仮にお金が稼げたとしても、それを知らないうちに使い込まれるので貯金は出来ないという現実が目に見えている。
学校に行ってもいじめられる。学校には通いたい、通っておいた方がいい、お爺ちゃんの名誉のためにも通わなければいけない、というのはフェリシアンも考えていた。
だが、いじめられるのであまり行きたくないから休学と言うことにしてしばらく近づかなくてもいいという逃げの選択肢をフォン・バイクに与えられ、それを選んだ。選ぼうとしていた。
フェリシアンにとって今というのは、未来という可能性と天秤にかけても釣り合わないほどに辛く、無期休暇など非現実的であることも分かってはいたが無視し続けていた。




