アーンストートの学び舎で 第七話
「いえ、様子を見ましょう。彼に関しては仕方ないですよ。どうも、あの英雄一族は家庭環境に大きな問題があるようですからね。
フェリシアンくんの成績は少し芳しくないですが、どちらかと言えば普通な方で目立たない。
勇者の孫と言うことで他の生徒から最初は距離を置かれていましたが、今では倦厭されています。
孫のクセに、と成績が普通なことを咎める者もいます。悲しいことに、そのほとんどが彼よりも成績が悪い者で、辛うじて学校にいられるような程度の者ばかりです。ほとんどいじめのような状態です。
でも、彼は孤独だというのに学校は休んでいない。下位の者ほどよくサボるというのに。
これから未来は長いというのに、彼も可哀想ですね……」
「先ほどまで一緒にいたアルノリトくんはフェリシアンくんをいじめているようにも見えますが。彼は成績はかなり良いですね」
「あれは違うのですよ。最近は些かエスカレートしているので止めていますが、いじめではない。幼馴染みの複雑なことがあるのですよ」
「そうですか。思春期の学生というのは複雑なものなのですね」と秘書はフェリシアンが消えて行った廊下の先を見つめた。しかし、咳払いをして気を取り直した。
「ところで、本校への入学試験で便宜を図るようにと卒業生保護者会から贈収賄を受けて解雇された元教員五名が、集団でアーンストート学園の学習指導執行部を不当解雇で訴えていますが。
如何なさいましょうか?」
「誰がいるのですか、その集団には?」
「こちらです」と秘書は紙を渡した。そこに不当解雇を訴えた者たちの名前が載っていた。
内容を確認したあと頷くと「事故というのは怖いものですね。自分から防ぎようがないという場合もあるというのが、実に怖い」と書類を秘書に返した。
「かしこまりました」
――翌日の地方紙朝刊の片隅の小さな枠に悲しいニュースが掲載された。
バイク・エアラインの小型機が山に墜落し乗員乗客あわせて七名が亡くなった。
回収された機体を捜査した結果、チャーター便に使われた小型機に予期せぬ故障が発生していたことが確認された。
フライトレコーダーによると、高高度飛行中に圧力隔壁が破損し、乗員乗客が発生した霧でパニックを起こしてコントロールをなくし、そのまま山中に墜落したそうだ。
乗客名簿によると、不当解雇を訴えていた元教員たち五名が乗客として乗っており、機長および副機長は卒業生保護者会の会員であったそうだ。
不当解雇の訴訟は原告側が全員不在のまま裁判は進み、不当解雇ではないと言う結論が出された。
学園の学習指導執行部が逆に入学試験の際の便宜について不平等であると訴えることも出来たが、何かをする必要もなく終わった。




