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九月の舟  作者: すのへ
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たくらみ

 翌日からさっそく本格的な組立てがはじまった。参加メンバーもいつもの顔ぶれに加え、流動的ではあるが常時七八名が作業に当たり、資材調達に出かける別働隊も組織された。穂坂さんと由倉さんは毎日顔を出すようになった。

 ぼくは富士谷からあずかった手紙をもてあましていた。沖野さんに渡すべきだろうか。それとも事情を話して富士谷からその先輩に返すべきだろうか。由倉さんが言った沖野さんと文次先生との関係はあくまでうわさにすぎないのだ。しかし、組み合わせがあまりに不似合いなのでかえって真実味を帯びる。

 新聞部の部室には毎日顔を出したが、そのたび委員長の本原君が必ずいて、沖野さんに手紙を渡せるような機会はなかった。

 そんなある日、ぼくは中島と資材調達に出かけた。めずらしく中島が自分で行くと言いだしたのだ。現場で陣頭指揮をとる者がいないと困りゃしないか。

「気分転換さ。まだ骨組だけだけど、ひと段落ついたからね。さあ行こう」

 由倉さんと穂坂さんがついてきた。笹安が替わりに現場に残った。ぼくと中島でリヤカーを引っぱり、女子ふたりはうしろから押す、といってもかたちだけで、なにやら熱心におしゃべりをしている。住宅地から田んぼへと風景は変わり、小さな集落に差しかかる。ときおり、まだツクツクボウシの鳴き声が聞こえた。 

 集落に入っても中島は材料になりそうなものを探すでもなく、のんびりと前を向いたまま歩いていた。これ見よがしに廃材などが庭先に出してあっても目もくれない。夏の名残りを楽しむかのように汗をぬぐうのも忘れて歩いている。うーん、なにか雰囲気がおかしい。

「ちょっと鵜飼くん。穂坂さんと替わって」

 そう由倉さんに言われてぼくはリヤカーの後部にまわる。穂坂さんは少しもじもじしていたが、由倉さんが強引に背を押して前へ行かせた。中島と穂坂さんが肩をならべてリヤカーを引く格好になった。

「ねえねえ鵜飼くん、どう、あのふたり。いい感じでしょ」

「え」

 これはひょっとするとこの調達行は、中島と穂坂さんを接近させるために由倉さんが仕組んだのではないか。ぼくがそう言うと由倉さんは破顔一笑、うれしそうにパンパンとぼくの肩を叩くのだった。

「なに気をまわしてんの。そんなことわたしがすると思う」

「思う」

「あーはっはっは。さすが新聞部。いい記事書けるよ。あ、カメラ貸して」

 由倉さんはカメラをひったくるように持っていったかと思うと、リヤカーの前に回ってふざけながらふたりの写真を撮った。中島と穂坂さんはあまり言葉を交わしてはいないが、たがいに寄り添って仲むつまじく見えた。こうなるように決まっていたかのように。

「なるほど中島が資材には目もくれないはずだ」

「こまかいことは言いっこなし。あのふたりのためよ」

「ぼくはカモフラージュに使われたのか」

「ほんとにそう思う?」

 由倉さんは下からのぞきこむようにぼくの顔を見た。その意外にも真剣な眼差しに息を呑む。一瞬にすぎなかったけど視線がからまり合った。返事に窮していると由倉さんはぷいと横を向いてしまった。

「ふん。鈍いんだから」

「え」

「鵜飼くん。その『え』ていう顔やめたほうがいいかも」

「え」

「すーごい間抜けに見える」

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