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ウプランドの挑戦状


『これは宣戦布告であり、警告、命令だ。相馬ナイト、そう遠くない未来に俺はグラングニョルでこの街を破壊する。止める気があるなら追いかけろ!俺様を止められなければ、“ファントム”の名前は貰い受ける!』


 黒ずくめの言葉が脳裏でリフレインする。


 涼風ミウと出会う切欠を作った奴の言葉がこんなところで聞くとは思いもしなかった。


「おもしれぇ話をしてるじゃねぇか」


「安倍!?」


 部屋の窓が開いたと思うと安倍が姿を見せた。


「あら、無能の捜査官」


「ぐっ・・・・あ、あの時は油断しただけだ!今度は負けねぇからなぁ!相馬ナイトぉ」


「何のことだよ」


 言葉を詰まらせた安倍のことはわけがわからん。


 それよりも。


「ミミズクさん、どうして殺気を俺へ向けているんでしょうか?」


「胸に・・・・いや、前世から来世にいたるお前の罪を数えろ」


「いや、わけがわからん」


「そんなことはどうでもいい!」


 俺を突き飛ばしてミミズクさんは氷菓さんへ近づく。


「涼風ミウ」


「何かしら?」


「これにサインをください」


 ズザザザザッ!


 俺と安倍は地面へ突っ伏す。


「喜んで」


 氷菓さんはにこりと微笑むとペンを取り出す。


「お名前は?」


「その、岩清水実九と」


「オーケイよ、はい」


「ありがとうございます・・・・家宝にします!!」


「そこまで!?」


「ここにきて、この女の性格がわけわからなくなってきたぜぇ」


 驚く俺と呆れた声を漏らす安倍を横にしてミミズクさんは素敵な笑顔で色紙を抱きしめていた。


 うん、意外な一面を見た気がする。


「そろそろ話を進めてもらって良いか?」


「無能な捜査官さんがうるさいわね」


「ンダトォ!!」


「これ以上騒ぐなら出て行ってもらうよ?」


「んぐ!」


 おぉ、安倍が押し負けている。


 茶々入れるつもりは無いけれど、俺の部屋なんだけど、ここ。


「安倍、少し聞きたいことがあるんだけど、ファントムってなんだ?」


「・・・・あ?お前、本気でそんなこといってんのか」


 どういう意味だよ。


「この街が出来上がる切欠を作り出した最強の超越者のことだ」


 始まりの七元素ファースト・エレメンツ、箱庭、第三次世界大戦時に名を消された大国を滅ぼしたとされる最強の七人の事を指す、一説ではボックスシティ建設に関わっている。


 都市伝説レベルの眉唾物だ。


「なんだ、その超越者って?」


 その中で気になることがあった。


「能力と終焉具の二つを使いこなせた俺達とは別次元の存在だ。だから超越者だ。いっておくが能力者一人が国を滅ぼすなら、超越者は一人いるだけで惑星壊すとかいわれている・・・・まぁ、嘘だろうけどな」


「確証なさそうだしな」


 星一つ破壊って、どこで実験するんでしょうのレベルだ。


「しっかし、ブラックファントムが涼風ミウと狙うねぇ・・・・」


 安倍は顎に手を当てて思考に沈む。


 あの黒ずくめのこと、伝えておくか?


「なぁ、あ」


 俺、安倍、ミミズクは同時に動く。


「相馬、涼風ミウを守れ!ミミズク!敵の位置を調べろ」


「え!?」


「氷菓さん、伏せて!」


「・・・・くるぞ」


 安倍が懐から拳銃を取り出す。


 いまさらだが、銃器の持ち込みは安倍が特別に認められているだけで、そんなもの持ち込んだら逮捕される。


「ほー、優秀な駒が揃っているようで」


「・・・・黒ずくめ」


 ショッピングモールハワイアンで俺の前へ姿を見せた奴が再び現れた。


「また会えたなァ、相馬ナイト」


「てめぇ、どうやってここへ侵入したぁ?」


 銃口を向けながら安倍が叫ぶ。


「きゃんきゃん吼えるなよ。飼い犬」


「ンだとぉ」


「俺は相馬ナイトと話をしているんだ」


 何が起きたのかわからなかった。


 銃を構えていた安倍が俺達の後ろ、部屋の壁に叩きつけられている。


「・・・・私の眼でも捉えきれなかった」


 ありえない速さだ。


 コイツ、能力者か何か。


「話してる途中に割り込むな、シットダウン!だ。飼い犬、さて、相馬ナイト」


 黒ずくめはにやりと笑っている。


 小バカにしている感じ。


「お前へ挑戦状を叩きつける」


「挑戦状・・・・だと?」


「俺様の標的は後ろにいる涼風ミウの命、勝負方法は簡単だ。そこにいる女を殺せば貴様の負け、殺害を阻止できれば勝利となる・・・・簡単だろ」


「ふざけるな」


 俺の声が低いものに変わる。


 怒りが湧き上がってきた。


「人の命を何だと思ってる」


「そう思うならこの挑戦、受けてもらえるよなぁ?」


 コイツ、


「最低だな」


「なんとでもいえよ。お前は挑戦を受ける、楽しみだぜぇ」


 そういうと奴は姿を消す。


『俺様の名前はウプランド、涼風ミウとファントムの名前は必ず貰い受ける』


「・・・・逃げたみたいだな」


「ミミズクさん、助けてくれても」


「私の能力ではあいつに勝てない。ならば、様子を伺うのがベストだろう」


 ごもっともです。


「さて、とりあえず」


「相馬さん!さっきの音は何ですか!?」


「おみゃー!速くココあけろ!楽しいことをしているとワッチの直感が告げとる!」


「相馬、せ、先輩・・・・」


 壊れた扉から顔を覗かせている彼女達へなんと事情を説明しよう。





















「おみゃー、こんな楽しいことをなんでワッチに黙っていた?」


 現在、俺は正座させられていた。


 目の前には両腕を組んで仁王立ちしている烏丸がいる。


 傍に砂原がいるけれど、助けてくれる様子は無い。どうやら彼女も少し怒っているようだ。


 二人へ事情を説明した俺達は学院から涼風ミウの利用しているホテルへ向かっていた。


「いや、楽しいことというか・・・・昨日知ったというか」


「だったら相談してくれてもいいじゃないんですか?私達は同じクラスで仲間です」


「そうだけど」


「とにかく、今度ワッチに黙って面白いことを隠していたら」


「・・・・ら?」


「切り落とす」


「「何を!?」」


「次は無いからな」


「「だから何を!?」」


「お前ら!うるさいぞ!ちったぁ静かにしろ!」


 安倍が怒鳴る。


 俺達は顔を合わせて。


「「「無能捜査官」」」


「ぐはぁ!」


 言葉というのは時に凶器へなる。


 真っ白に燃え尽きた安倍から視線を外す。


「あの、護衛というのはわかったんですけれど、どうしてこんな格好しないといけないんですか?」


「決まりだよ」


 俺達は学院の制服から真っ黒なスーツへと着替えている。


 これから涼風ミウの護衛として行動するということで安倍から支給されたスーツへ着替えた。


 烏丸や砂原さんはズボンをはいている。出来ればスカート姿が見てみたかったと思うのは思春期男子特有かな?


「随分と遅いご帰還ですね。安倍捜査官殿」


 ホテルの入り口で俺達と同じ黒いスーツの集団が現れる。


先頭にいるメガネをかけた男をみて、安倍は舌打ちする。


「元一級捜査官の方なら半日で見つけ出すと思ったのですが、まさか一日掛かってしまうとは驚きですねぇ」


「うるせぇな、何も出来なかったてめぇらと一緒にすんじゃねぇ」


「これは手厳しい、ところで後ろの方々はどちらですかな?」


「護衛対象からの依頼で増援として参加してもらう。いっておくが上からの許可はとっている」


 これ以上は会話したくないというように安倍は一方的に断ち切る。


 砂原さんが前へ出た。


「あの、砂原沙織といいます。二級捜査官ですが、精一杯護衛を努めます。よろしくお願いします!」


「これは礼儀正しいお嬢さんだ。私はここの責任者の仁科といいます。熱意があるのは立派ですが、ここではド素人なのですから足を引っ張らないようにしてくださいね」


「は、はい!」


 なにやら上から目線な物言いだが、これ以上余計な争いは嫌だから俺と烏丸は沈黙を貫く。


 いや、違う、烏丸は睨んでる?


 でも、


「そんで、相馬ナイトの喉へ刃を突きつけている奴はわっちらの味方か?」


「へぇ、気づいたんだ」


「なっ!?」


 いつの間に立っていたのだろう。


 俺の前へ一人の少年が立っていた。


 髪を染めて、耳元にピアスをつけた柄の悪い印象を与える少年、その手の中には黒いナイフが握られて、俺の喉仏へ突きつけられている。


「相良!何をやっている」


 事態に気づいた仁科さんが怒鳴る。


 相良と呼ばれた少年はつまらそうにナイフを手元で遊ばせる。


「増援と聞いたんでね。どれだけ強いのかみてみたくなったんです。でも、とんだ期待はずれですね」


「それを判断するのはキミではなく、私だ。命令あるまで自室で待機していろ」


「はいはーい」


 ナイフをくるくると回転させてホルダーに仕舞うと相良は俺から離れる。


「ま、死なないように頑張ってくださいねぇ~」


 ニコリと愛想笑いのようなものを浮かべ、相良はホテルの中へと向かう。


 場の空気が重たいものに包まれ始めたとき、タクシーから氷菓さん、涼風ミウが姿を見せた。


「それで、私はいつまで外にいればいいのかしら?」


「も、申し訳ありません。部屋にお連れしろ」


 頭を下げて仁科さんは部下へ指示を飛ばす。


「じゃ、また後でね」


 涼風ミウは俺の耳元で囁くと黒服の連中に囲まれてホテルの中へ消える。


「相馬さん」


「ん?」


「私、前途多難という言葉が頭に浮かんでいるんですけど」


「奇遇だな。俺もそう思う」


 なし崩し的とはいえ、厄介な挑戦されちまったなぁ。


 目の前にそびえるホテルを見て、ため息を零した。


 本当に厄介ごとのにおいしかしない。


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