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神と悪魔へ

うーん、タイトルが思いつかない。


てなわけで、新しい話です。


 拝啓、神へ



 もし、この世界にあなたがいるのだとしたら、私は貴方にいいたいことがたくさんあります。


 どうして、能力者が生まれたのでしょうか?


 普通の人達だけでも争いを続けるというのに、能力者という普通の人が持たない力を使う連中が生まれたことで、世界は余計に争いが生まれました。


 第三次世界大戦、


 金十字教徒によるテロ活動。


 天岩戸事件、


 この事件のほとんどは能力者が関わっただけで世界を大きく揺るがしました。


 一人の能力者だけで、悪い方向に、良い方向へ変わっていく。平等という言葉がさらにこの世界から消え去ってしまいました。


 平等が消え去った世界の中で、私はなによりも怖いものがあります。


 それは、普通の人から能力者へ目覚める瞬間です。


 例えをあげるなら水道の蛇口を捻ったらあまりに水の勢いが強すぎて止めるのに遅れてしまうようなことが覚醒時に起こる。


 それがどれほど、怖いことか神や普通の人は想像できない事でしょう。私もそれが起こるまで理解することが出来ませんでした。


 起こった時に私はパニックに支配されました。


 どうして、


 どうして、私なのか?


 どうして、あの時のタイミングだったのか。


 どうして、神様は私へ能力なんて与えたのでしょう。


 年月が過ぎ去った今でも私は考えてしまいます。


 神様、もし、貴方がいるのだとしたら、教えてくれるのでしょうか?


 どうして、私に能力を与えたのですか?


 能力者なんて、なりたくなかったです。


 普通の人として生きていればと考えてしまうときがあります。能力者ではなく、無能力者として、今を生きていれば違う毎日が待っていたのでしょう。


 能力者となって、私は幸せとはいえない。


 どこか息苦しい世界の中で生きている。


 そんなことを毎日考えてしまう。


 この世界は私にとって――。

























 拝啓、悪魔。



 貴方へメッセージを送ることをするなんて、世界ひろしといえど、きっと私くらいのものでしょう。


 普通の人は願い事をする時は神様や仏様へ祈りを捧げるでしょう。ですが、私は貴方へ願い事をしようと思います。


 悪魔へ願うことは自分の命を捨てるということになるでしょう。


 ですが、何もしてくれない神様へ祈るよりは代償を与えることで叶えてくれる悪魔へ頼んだ方が叶いやすいと踏んだからです。


 能力者と無能力者、この二つが生まれたことで世界はとても酷いものになっています。


 能力を持っていることを隠しながら生きていくことは息苦しさを感じる。強大な力を持っていると知られるのが怖い。


 無能力者からどんな視線を向けられるのか怖い。


 力なんて欲しくなかった。


 普通の人でいたかった。


 こんな世界は嫌だとベッドで何度も嘆いた。


 能力者わたしにとってこの世界で生きるというのは苦しい。


 息が詰まって、苦しくて、涙があふれ続ける、私にとって生きている世界というのはそういうものだ。


 でも、



 もし、



 悪魔がいるのだとしたら、貴方へ願いたいことが一つ、たった一つだけあるのです。


 あの人に会いたい。


 能力に目覚めて自暴自棄になりかけた私へ手を伸ばしてくれた人がいます。


 この息苦しい世界の中でたった一人、私へ救いの手を差し伸べてくれた彼へ会いたい。


 もう、会えないと彼は言いました。


 どれだけ残酷なことなんでしょう。


 私が会いたいと望んでも彼は一度も現れない。


 あの時限りの出会いは私の中で色あせることなく、今でも鮮明に思い出せます。


 だからこそ、苦しい、辛い、会いたい、話をしたい。


 自分の中の苦悩を唯一理解してくれる彼と、私にとっての騎士様と話をしたいのです。


 そのためなら、私は。


























「個性的な生徒ばかりが集まっているみたいですね」


「褒め言葉として受け取っておくよ」


 王国学院の応接室、エイレーネ・K・パネトーネと長嶺サクヤは向かい合っていた。


 彼女達を知っている人が見れば、驚いて腰を抜かすかもしれない。


 長嶺サクヤ、王国学院の最年少の学院長、片や帝都治安維持局の曲者ぞろいの一級捜査官を束ねる一号管理官を最年少で取得したエイレーネ・K・パネトーネ、その二人が学院の一室でお茶会をしている。


「まさか、エレネが学院へやってくるとは驚いたよ。御蔭で、ちゃんとしたお菓子を用意することが出来なかった」


「あらあら、事前の連絡はちゃんとしておきましたよ?」


「おや、おかしいな。私はその連絡を受け取っていない」


「五十六、という教師でしょうか?ちゃんと伝えておくと仰っていましたよ」


「(あの爺め)食い違いのようなものがあったのだろう。次からはこんなことがないように徹底させよう」


 あの爺め、減給だ。長嶺は心の中で悪魔の笑みを浮かべながら紅茶を一口含む。


「学院の様子はどうですか?」


「はっきりいうと熱が冷め切っていないというところだな。世界レベルの指名手配者が学院を襲撃、カーニヴァルでこれまた世界大戦の負の遺産を再現したような怪物が襲来・・・・そのうち、ハルマゲドンやオートロボット襲来なんていうとんでもないことが起こりえるかも知れんな」


「随分と楽しく話しますね。保護者がきいたら苦情が殺到しますよ」


「聞かれなければそれでいいんだ。教師だって人間だ。ストレスは発散しないといけない。お前もストレスが溜まっているんだろう?」


「あら、わかります」


「何年、お前の親友をやっていると思う・・・・ストレスの原因はなんだ?」


「はっきりいうとこの学院です」


「直球だな。前回の事件の後処理か?」


「それもありますが“プリンス”のことです」


 紅茶を飲む手を止める。


「アイツか・・・・確か、本局の警護科に出向しているんだったな」


 手元に現れた書類を一瞥しつつ、長嶺は呟いた。


「これはこれは・・・・とんでもないことをしているな」


「本人は一級捜査官を目指しているという話ですが・・・・このままだと要注意人物としてマークされる可能性が」


 長嶺の手の中にある書類には一人の生徒の情報が記載されている。


 個人的なものから現在、本局へ出向している間に起こした問題の数々だ。


「敵対する者を容赦なく切り伏せる、か」


「一部の心ない者からはプリンスザリッパーと呼ばれています」


「切り裂きプリンスか・・・・切り裂きジャックじゃあるまいし、本人は?」


「気にしていません・・・・というよりも、喜んでいます」


「喜ぶ?」


「最後の方に理由が書いてありますよ」


 エイレーネの指摘に長嶺はなるほど、と呟いた。


「アレに近づける・・・・ねぇ」


「何人もの癖がある能力者を見てきましたが、彼は危険です」


「お前がストレートに言うなら相当のレベルだな。全く、担当の教師は何の指導をしてきたのだろうか・・・・少し、躾が必要だな」


「・・・・ブラック企業ならぬ、ブラック学院ですね。ここは」


「気のせいだ」


 クッキーを味わいながら、長嶺は呟いた。


「まぁ、貴方の指導ですから信頼はしていますよ」


「・・・・そのために、あの二人をここへ連れてきたのか?」


「想像に任せます」


「一つ、気になったんだが・・・・どうして、あの二人でバディを組ませているんだ?」


「理由はありませんよ」


「嘘だな」


「即答します?親友の言葉を信じてくれても良いではありませんか」


「普通なら信じてやりたいが経歴を見て、理由なしというのは些か無理がある。わかっているだろう、相馬ナイトと砂原沙織、この二人を組ませるのはとても危険だということは」


「・・・・ですから、組ませるのです」


 相馬ナイト、本局の一級捜査官であり、数多くの事件を解決してきた、しかし、本人の希望でその事実は隠蔽されている。現在は長嶺の学院で生活を送っている。


 砂原沙織、本名、金十字三夜。金十字の唯一の生き残りであり、多くの金十字信者からその身を狙われている。本局の中に紛れ込んでいた信者に拉致されたことは記憶に新しい。


「はっきりいって、最強の戦力と最大の脅威の二つが一緒に揃っているのは普通の人からすればとても恐ろしいものだ」


「サクヤは抗いたいと思ったことはありますか?」


「この世の波と常に抗っているよ」


「・・・・私も抗いたいのです。この最悪な流れから少しでも脱出できるのなら、どんな手段でも使います。彼らから恨まれたとしてもです」


「・・・・苦労が絶えないな。互いに」


「そうですね」


 二人は苦笑する。


「友人として、貴方へ忠告しておきますけど客人にローズヒップティーをだすことはお勧めできません」


「そうか?まぁ、もらい物を出している時点で、かなり失礼なところは認めよう」


「・・・・敵を作らないか心配ですよ」


「安心しろ、敵は全て蹴散らしている」


「作っているわけですね」


 長嶺サクヤの性格は他人に受け入れがたい。


 学院長としての仕事は優秀だが、突然の企画立ち上げ、変更など下の教師達にかかる負担が大きすぎることから好意的な者は少なかった。


 友人として、彼女のことを心配したのだが馬の耳に念仏のようだ。


 呆れているエイレーネへ長嶺は笑いながら紅茶を飲む。


「酸味があって、おいしいのだがなぁ・・・・まぁ、私の好みが他と違うということで納得するか」


 エイレーネは空になったカップを置いて席を立つ。


「もういくのか?」


「これでも管理官の仕事は多いですから、警備体制の確認などやることが多いんです」


「噂のアイドル訪問か」


「もう耳に入っていたんですか?」


 友人の情報収集能力の高さにエイレーネは驚きを隠せない。


 長嶺サクヤが本気を出せばこのシティで赤裸々にできない秘密などなし。

そういわせるほど、彼女の能力は高い。


「国民的アイドルの来訪は面白い娯楽になる。さらにいうと荒んだ生徒の心を癒してもらおうというたくらみがある」


「別の言い方しましょうよ」


「私が楽しめないと意味が無い。故にたくらみだ」


 長嶺は素敵な笑顔を浮かべながら一枚の資料を取り出した。






















『涼風ミウの王国学院体験入学について』




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