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王国学院

今回から第二章へ突入。


学校生活の始まりはじまり。

 源管理官がキメラを連れてエリア・ゼロへ侵入しホワイト・セントラルの向こうへ侵入しようとした事件から、二週間と少し、俺は第六地区にある巨大な校門の前に立っていた。



 王国学院、別名キングダムとも呼ばれている学校はボックスシティが作られる前から存校で、進学校として名をはせており、創立は明治時代とかなり長い歴史を有している。


 設立者である王誠一郎は「国籍、性別関係なく学問を学べる場所」という理念を掲げて、多くの門下生を受け入れた。


 大戦時代においてその理念が問題となり、一時は閉鎖されたが、戦後、再び開校され多くの生徒を受け入れた。


 設立者の理念はボックスシティへ学園が移されても尚、受け継がれており、現在も多国籍の生徒が入校している。


 その学院へ俺は転校生として入ることとなった。


 はっきり言おう。かなり面倒だ。


 前にいた学校はどこにでもある普通の高校だった。


 制服も詰襟の制服で、目立つことも無い。


 だが、王国学院の制服は目立つ。


 青いブレザーに肩から袖口までに白い二本線が伸びている。さらに胸元には重ねるような二対の翼に剣が描かれている。


 このエンブレムは自由に羽ばたき、騎士のように強くなれという意味が込められているそうだ。


 自由には心惹かれる。だが、次の騎士道精神というのは興味ない。


 騎士みたいになりたくないし、自由に生きていられるならば、それに越したことは無い。何事も平凡が一番だ。


「それに・・・・なんで、お城なんだよ?」


 目の前に広がっている校門のさらに奥、広がっているのは広大な洋風のお城。映画やテレビなどでしかみない石造りの城が聳え立つ。


 いまどきの学校といえば、コンクリートで作られた四角い感じの建物だというのに目の前に広がっているのは中世に存在していたような城だ。


 来る所、間違えたか?と校門にかけられている看板を見る。


 

 『私立王国学院』と黒い文字で描かれていた。


 うん、間違いない。


「えらいところに来た気がするわ」


 聳え立つ城を見て、俺はため息を零しながらも学園へ入ろうと足を踏み出す。


「動くな!」


 入ろうとしたら喉へ槍先を突きつけられる。


 いきなり現れた槍をみて、突きつけている人物を見た。


「最近のセキュリティはすごいなぁ・・・・石造が動くなんて」


「身分の照会を行う。しばし、待たれよ」


 石造の両目が輝いて俺の体に照射される。


 どうやらスキャンされているみたいだ。


 頭から足先までスキャニングされて、しばらくすると光が消える。


「照合確認、転校生の相馬ナイト。入校を許可する。学園長室へ向かわれよ」


「どうも~」


 そういうと構えを説いて石造が動かなくなる。


 試しに近づいてみるが反応しない。


 スキャンを終えたら元に戻る仕組みなのか?


 この学院、少し物騒かも。


 学園長室へ向かうために城の入り口へ向かう。


 城の中は思った以上に広く、学校を連想させる造りになっている。


 高校と同じだというなら一階に学園長室があるはずだ。











「と思ったら最上階なんて、どんなイジメだよ」


「うふふふ、新入生や転校生の皆さんのほとんどが勘違いしますね」


 足を踏み入れてから一時間と少し、廊下を歩いていた生徒を捕まえて道を聞いて、ようやく俺は学園長室にたどり着いた。


 学園長室はかなり広く、執務机と応接用のソファーを除いても有り余る広さだ。


 目の前にいる学園長、幼い声、小柄な体躯をしている。


「この学園は海外の造りを真似ているところがあります。ですから、最上階に設置するという決まりがあるのです」


「勉強になりました」


「さて、挨拶はこれぐらいにして、自分が王国学院の長を勤めている長嶺サクヤといいます。よろしく、相馬ナイト君」


 見た目、十五歳くらいにしか見えない少女に挨拶された俺はとりあえず頭を下げる。


 くすくすと、長嶺学園長は笑う。


「ほとんどの人が私を見て学園長なのか?という視線を向けるのですが、キミはそういう視線を向けないのですね」


「まぁ・・・・見た目で人を判断してはいけないってあるから」


 実際、エイレーネの側近として働いているメイドさんなんて、見た目二十代前半にみえるけれど、彼女が物心着く前から傍にいるという話だ。


 見た目で人を判断してはいけない、これは生きていくうえで必要はスキルだと俺は思うのです。


「なるほど、過去の失敗を糧に成長しているというわけですか」


「そういうわけです・・・・あれ?」


 俺って、口に出していたか?


「いいえ、キミは口に出してないですよ?」


「ということは・・・・」


「はい、自分の能力です。こうみえて、能力者なんですよ」


「へぇ・・・・」


 俺の態度が意外だったのか長嶺学園長は不思議な顔をする。


「もう少し、驚くかと思いましたけれど」


「まぁ、能力者は隣にいると思えとか、習いましたし」


「なるほど、流石は一級捜査官という経歴を持つだけはありますね」


「いやー、照れますねぇ」


「そんな人物が再びこの教育機関へ来るなんて何をしたのかしら~」


 さらっと呟いた言葉が俺の心臓に突き刺さる。


 意外と、毒舌なのかもしれない。


「ふざけるのはさておいて、自分が能力者であるように、この学院にも能力者が存在しています。おそらく、普通の生徒を数える方が少ないかもしれないでしょう。それほどまでに能力の開眼が多くなっています」


「でしょうね」


 一説では能力者は新人類の可能性ともいわれている。


 能力者である俺としては下らないの一言に尽きる。人類は人類だ。新しいも古いもない。


「ですが、能力者の力は危険なものです。使い方を誤れば世界を転覆させることの可能、それを阻止するため、正しい方向へ導くべく、能力者要請施設としての顔が此処にあります」


 王国学院、表は進学校としての顔のほかにもう一つ、本局に所属していない能力者を養成する施設としての顔を持っている。


 首輪をつける施設というわけか。


「誤解のないように言っておきますが、あくまで能力を使いこなすまでの指導を此処では行います。能力を使いこなせることができた生徒の人生はその人のものです。私達がとやかく決めることはいたしません・・・・砂原沙織さんの将来も同様です」


「彼女の名前を出すとはどういう意味と捉えたらいいんでしょうか?」


「キミよりも早く入学した彼女の過去を知っている者はこの学院では私と信頼できる者だけです」


「だから?」


「全てが敵というわけではないということです」


 段々と苛立ちを感じている俺へ長嶺学園長は告げる。


 砂原沙織はボックスシティを脅かす金十字鷹虎の娘だ。名前と経歴を偽って生活しているが、金十字鷹虎を信望している連中に狙われる可能性があった。


 だから、いきなり、砂原沙織の名前を出した学園長へ俺は疑惑の視線を向ける。


「あくまで、彼女へは一学生として接します。親の仕出かしたことなど、興味は無い、ということですよ」


「その言葉、信じても?」


「教師は生徒を守るためにいます。少なくとも自分はそのつもりです」


 ニコリ、と彼女は微笑む。


 信じるか、疑うべきか?


 そんなことを考えていると長嶺学園長は俺の前へ手帳のようなものを置く。


「これは?」


「王国学院の生徒手帳です。見た目は手帳ですが、学食や寮入室において必要となるものですので、無くさないようにしてください」


「・・・・デバイスにインストールするわけではないんですね」


「昔からの決まりです。学園の生徒という意識を持ってもらう必要もあります。近年はデバイスにインストールすれば問題なしといって、偽学生も現れる世の中ですし、これぐらいは必要ということです」


「なるほど」


 デバイスは日常生活で必要な道具として存在しているが同時に犯罪に最も使用されやすい道具となっている。


 学校の生徒手帳などのデータは全てデバイスにインストールされるものがほとんどだ。能力を開眼する者は学生が多い。デバイスに学校の情報をインストールして、標的を確保するなどは常套手段の一つ。


 それの対策もあるのだろう。


「さて、相馬さんのクラスへ案内するわけですが・・・・遅いですね。担当の教師がそろそろ」


 コンコン、


 壁にかけられている時計へ視線を向けていたら扉をノックする音が響く。


「どうぞ」


「失礼します、遅くなりました」


 扉を開けて入ってきたのは白髪の男性、年齢は五十代前半といった感じだろうか?


 その人物の右目をみて、俺は息を呑む。


 顔の右半分に走る大きな一本傷。


「遅いですよ。五十六先生」


「どうも~。Fクラスの担任を務めている五十六三舟といいます。よろしくなぁ」


 バンバン、と五十六先生は笑いながら近づいて、俺の背中を叩く。


 痛い。かなり、痛い。


 叩かれた威力に俺は前のめりになりそうになった。


「では、相馬君。頑張ってください」


 学園長の言葉、この意味を本当の意味で俺が理解するのはすぐだった。












「王国学院にはA~Fの六クラスが在る。各クラスの生徒数はクラスごとにばらばらになっている。キミが在籍することとなるFクラスは転校生などの生徒を受け入れるために生徒数がかなり少ない・・・・という建前になっている」


「はい?」


「まぁ、行けばわかるってことだな」


「いや、建前とかいいましたけど、一体」


 わかる、わかる、と五十六先生は言うだけで教えてくれない。


 意図的に話題へ出さないようにしているような気がした。


「お前、学園長の話によると一級捜査官だったらしいな」


「えっと・・・・まぁ」


「つまり、前の大戦も経験してるのか?」


「いいえ」


「そうか、まぁ、それなら一安心といったところか」


「安心?」


「お前は知っているか知らないが、一級捜査官の中に大戦を経験している者がいる。あの地獄を経験した奴らのほとんどが精神病棟送りか、犯罪者になり身を落としたやつらが大半だ」


「は、はぁ」


「すまんな。どうしても一級捜査官と聞いて確かめておきたかったのさ。あの地獄を潜り抜けたのか・・・・な」


 第三次世界大戦、はじめて、能力者の存在が明るみに出たことで有名だ。


 教科書の歴史の中に書き加えられるだろう。


 でも、今の話し具合だと。


「先生は、戦争に?」


「ん?軍人として参加していた」


 鼻をぽりぽりと触りながら五十六先生は話す。


「といっても、前線でドンパチはあまりなかったさ。どちらかといえば、物資支給で奮闘していたおっさんだよ」


「・・・・そうなんですか」


「すまんな!経験しても無いヤツに話しても理解しずらい話だな」


 豪快に笑い出す五十六先生だが、その目は何かを思い返しているような雰囲気だった。


 不思議と、先生が“何”を思っているのか、俺はどこかで悟っていた。


 歩いていると、Fと書かれている白いプレートが見えてくる。


 Fクラス、俺が卒業するまで在籍することになるクラスか。


「おし、ついたぞ。ここがお前の、伏せろ!」


「へ!?先生」


 急に五十六先生が地面へ伏せる。


 突然のことに俺は呆然としていて、反応が遅れた。


「死ね!この野郎」


 突如、教室の窓ガラスが割れる。


 破片が地面へ落下する中、四角いものが俺の視界を覆い尽くした。


 それが机であるということを、わからなかった。


「ぐべ!?」


 正面衝突してから俺は理解することとなった。


 視界が暗転して、俺は意識を失う。













「手遅れだったか」


 地面へ伏せた五十六は体を起こして後ろを見る。


 机を正面から受けて足が痙攣している哀れな生徒の姿がそこにあった。


「初日からこれたぁ、ついてないな」


 ため息を零して五十六はFと書かれている教室の扉を開ける。


 扉の向こうは荒れに荒れていた。


 五つしかない机は空を飛び、窓ガラスの一部は大きく割れ、後ろの黒板には椅子がめり込む始末、幸いにも天井の蛍光灯はまだ無事だ。


 教室の中央、砂原沙織ともう一人がお互いを睨んでいる。


「危ないじゃないですか!」


「うるせぇ、ここで会ったが百年目だ!」


「そんな長生きできません」


 わーわーぎゃーぎゃー、まるで猫同士の喧嘩のように騒ぐ女子二人を見て、五十六は小さくため息を零す。


 周りの生徒達は喧嘩を気にせず、というか我関せず。止めようなんて気を起こしたら片方の標的がソイツへ移るからだろう。


 ため息を零しながらポケットから閃光弾とサングラス、耳栓を取り出した。


 それらを装着し、閃光弾の安全ピンを外して叩きつける。


 まばゆい光と音が教室内に響き渡った。


 数分ほど、時間が経過して、煙と光が消える。


 教室にいた生徒達は全員、地面へ突っ伏していた。


 騒ぎの元凶である二人も大の字で地面へたれている。一人は制服が乱れて臍が見えていたり、人様にみせられない格好になっていた。


 といっても、五十六は子どもの裸に興味は無い。


「裸なら嫁さんので十分だ」


 ボロボロの黒板に欠けたチョークで器用に「自習!」と書いて、気を失っている二人を担ぐ。


 担いで外に出ると、未だ廊下で痙攣している相馬ナイトの足を掴む。


 ずるずると相馬を引きずり五十六は医務室へ向かう。


「教師は大変だーい」



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