↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/10

第三章 未来都市の設計図 第三十八話 未来人育成計画──MLB文明から未来文明へ

 ─文明は、暴力の扱い方で未来が決まる─

 文明は、技術ではなく「暴力の扱い方」で成熟度が決まる。 暴力を制度化し、暴力を最小化し、暴力を創造性へ変換できる社会だけが、 未来文明の入口に立つことができる。

 三人娘が設計する三都市モデル── 未来人都市・現代人都市・近代人都市── それは、人類一万年の暴力文化を終わらせるための 文明の実験場であり、未来人育成の舞台である。この章は、暴力・競争・協働・包摂・制度・心理のすべてを統合し、 「未来人文明の設計図」を描く。

──未来人育成計画が始まる──

 義鷹は、三人娘に「未来人文明を設計する使命」を与えた。 砂漠特区を三つの都市に分け、 未来人・現代人・近代人の三階級文明を構築する── それが三人娘の新たな任務だった。

この章は、三人娘が未来文明の制度設計者として歩き始める物語である。


 第三十八話 未来人育成計画──MLB文明から未来文明へ


 文明は、制度によって暴力を超える。暴力は、人類の原初の力であり、 制度は、文明の最高の発明である。三人娘は、暴力を否定するのではなく、暴力を制度に変換し、制度を文明に昇華する方法を探し始めた。未来文明は、暴力を消すのではなく、暴力を“自然の暴力”に向け直すことで成立する。


 凛:「パパたちが議論していたニッチ国のプルトニウム保管政策転換、オウ国の資源偏重政策の転換、特区の政治構造、国際連合都市、技術覇権の未来の全ては、未知数じゃないの?」

 

 義鷹:「あぁ、そうだよ。未来人の君たち世代の指導者に課せられた問題でもある」

 

 凛:「パパの時代では、実現は無理なの?」

 

 義鷹:「あぁ、多分、現代人では、まだ無理だ。お前たちへの贈り物になる」


 凛:「先送り物でしょう?随分、厄介な『お荷物』ね」

 

 義鷹:「あぁ、そうだ。現代人は厄介な中途半端な動物だ。指導者になる道は、常に荷物を背負った状態なる。君たち未来人は、山登り文化と闘技場文化を文明に昇華させる方法を編み出してみたか」

 

 凛:「うん。考えた」出来栄えに満足している顔だ。娘たちじゃ、オウ国西部砂漠開発特区で、どんな新都市社会制度を導入するのかを企画することを求められていた。

 

 凛:「私たちは、シベリア開発や鉄道建設を参考に砂漠緑地化を考えた」

 

 義鷹:「ほう・・・」着眼点に驚き、つい、目を丸くした。


 凛:「私たちは、暴力三界生成理論を使った。未来人用、現代人用、近代人用の三タイプの新都市社会モデルを考えたの」


・未来人用:競争はあるが、強制のないガンジーの非暴力社会。

・現代人用:暴力と非暴力が混在する混合型社会。

・近代人用:暴力が支配する社会。

大人思考の柵を持たない娘たちは、現実社会では、実現できそうもないモデルを示した。

 

 義鷹:「随分、洗練された『進化した社会モデル』を考えたね」娘たちの社会モデルは、単なる理想論ではなく、人間本性の成熟段階を示す文化指標として扱える概念だった。

 

 桜:「これまでの政治指導者は、真面目に暴力社会問題の改善に取り組んでいないから、人類は一万年続く暴力文化モデルから脱出できないの」

 

 桜:「社会には、スポーツのように健全な競争が必要よ。ルールを守り他者を蹴落とすことではなく、互いを刺激し合う社会だよ」


 義鷹:「そうか。桜は、生態系モデルの『共進化』を勉強して考えたのね」

共進化とは、一つの種の進化が別の種の進化に影響する考え方だ。娘たちは、暴力社会を変えるには、砂漠経済特区方式が有効とした。


 桜:「えぇ、それで世界を近代人の暴力社会、現代人の暴力非暴力の中間社会、未来人の非暴力社会の三つの時代の界に分けた。株式運用経験から暴力運用に変えて新都市社会の在り方を考えたの」

 

 義鷹は、人が気付かないような物事についての自由に考える「啓発教育」をする。自由とその責任の重さを教える。現代の先進国人は、強制力や心理的手法を使って個人の考え方や信念を国用にする「洗脳教育」の状態にあると教える。そこに自由はない。

 

 義鷹:「君たちは、これまで学んだ学問知識を実戦に使えるレベルになったか。君たちは、その三つの社会をどのように運用するのか」


 凛:「私が、未来人用、桜が現代人用、葵が近代人用の新都市のボスになるの」


 義鷹:「ふーん。それで」


 凛:「私が、経済特区総督府の総督になり、桜と葵が副総督になる。契約したことを守ることで、経済特区の居住権と仕衣食住医教を保障する社会にするの」

 

 義鷹:「犯罪人は、どのような扱いをするの?」


 葵:「未来人用都市の犯罪人は、軽犯罪なら本国送還、中犯罪なら現代人用都市の刑務地砂漠送り、重犯罪なら近代人用都市の刑期地砂漠送りにするの」


 義鷹:「桜、随分、犯罪者に対して厳しいじゃないか」


 葵:「えぇ、そうよ。昔でいえば、『八丈島送り』よ。だけど、資金と資材を与えて、開発した土地の権利を与える。犯罪は、富への渇望から起きるので、自分で勝ち取った富を守らせる立場に変える」


 凛;「砂漠環境は、厳しい。私たちは、重犯罪者には助け合わないと、生れ残れない『チーム教育道徳』を罰とすることを考えたの」


 葵:「犯罪人は、暴力と非暴力が混在する現代人社会と近代人社会で住むことになる。犯罪人は、条件を満たさない限り、未来人社会に住めないようにする。住む都市は、暴力を基準に、未来、現代、近代の三階級都市制にする。


 義鷹:「それって、犯罪者虐めじゃないのか」


 葵:「いいえ。男性の暴力のエネルギーを自然環境の復元に使わせる工夫だよ。男性の野獣性を活用する。ソ連は、犯罪者や捕虜を農奴のように無報酬で使った。だけど、私たちの計画は、彼らに富を創造させて与えることで彼らの欲望を満足させるやり方だよ」

 

 義鷹;「ふーん。そうかな」娘たちの男女差別意識を少し感じた。

 

 葵:「非暴力社会とは、集団が山登りをする社会概念なの。体力のない人を初めから排除しない。全員で目標の山頂を目指す社会にする」


 凛:「私たちは、男性社会の暴力の価値観や考え方を初めから排除しない。私たちは、暴力好きの人間は、自然の暴力に対抗する力として使う」彼女は、非暴力都市では、勝者が敗者を踏みつける構造がないようにして、自分の好きな分野の仕事を見つけることができる社会環境にすると主張した。


 義鷹:「よく考えた。今は、理想論に過ぎないが、三界生成理論の有効性を証明できれがば、未来人社会の建設ができるかもしれない」

 

 桜:「えぇ、そうよ。現代人の少数者に富の配分が集中する今までの『逆ピラミッド富構造』では、永遠に紛争が絶えない社会になるの。税収配分で長方形構造にするとよい」


 凛:「私たちは、三つの時代分類の国民の視点で富の構造について考えてみた。近代、現代が不安定な社会構造になっているのに気付いた。富の分配が適切できる未来社会が完成すると“健全な社会”になる可能性に着目した。だけど、実験してみないと分らない」

 

 義鷹:「そうだな。全員で山を登る『包摂社会』は、沢山のメリットがある。だけど、その実現には、人間の社会的排除の価値観を変える必要がある」

 

 包摂社会とは、人々が排除されなく、社会の一員として扱わられてお互いに支え合う社会のことだ。

 社会的排除とは、生まれ持った家庭環境、貧困、失業、障害、疾病から社会や地域から排除されている状況をいう。


 桜:「私たちは、仕食住医教衣などが保証される包摂社会を考えてみた」彼女は、包摂社会の文明イメージを述べた。


・能力の差があっても参加できる。

・失敗しても再挑戦できる。

・社会的背景が足かせにならない。

・参加のコストが低い。

・参加すること自体が価値として認められる


 凛:「私たちは、指導者の立場で『包摂社会』を人間文明の成熟段階の到達点だと考えたら、統治するには社会制約が欠かせないと気付いたの」


 葵:「人類史の初期では、生存競争、暴力の独占、階層固定が起きた。中期になると、法と制度による秩序、競争の制度化が行われた。成熟期になると、競争は創造的、暴力は極大化と最小化する可能性となった」

 

 桜:「私たち未来人世代は、この砂漠地で競争を協働に変換して『共に文明の山に登る』形にするの」


 凛:「私たちは、パパたちの意思を引き継ぎ、現代人文明を成熟段階の上限から超成熟段階の入口に位置に到達したいの。これは、今まで誰も成し遂げられなかった偉業だよ」

 

 義鷹:「おう。随分、熱心に勉強したね。パパたちは、この砂漠地でこれまでの文明構造を変える仕事をしている」

 

 桜:「えぇ、勉強したわ。文明の山の勾配を緩やかに。ルートを複数に。山頂を多元化。裾野を広げる。落下リスクを減らす。私たちは、このような文明の山の形状をどう設計するか考えないといけない」

 

 義鷹:「ⅯLB制度を『包摂文明モデル』として工夫してみたか。世界中から人材を集め、競争制度によって文明が進化する仕組みを持っている」

 

 凛:「うん、研究した。『文明の山登りシステム』として構造化してみた」


 MLBは、世界中の野球選手にとって「山頂」だった。その地が、「野球人聖地」になっていた。その山の中腹には、マイナーリーグ、各国プロリーグがある。裾野には、草野球、学校野球、地域クラブ。この文明は 「多層構造山」といえる。


 葵:「MLB文明の良さは、山頂が明確に見えること。その地の価値観が認められ到達する人数は限られることがよい。世界中から野球人が集まる。ルートが整備されて、解放的な『単峰型文明』になっている」


 桜:「働くためのドラフト制度、契約制度、年俸調停、労使協定などが明確で、恣意性が少なく、透明なルールがあることが素晴らしい」

 

 凛:「競争が制度化されている。成績による評価、統計の透明性、契約の市場原理が機能している。競争が暴力ではなく制度で管理されている。国家制度より優れている」

 

 葵:「MLB文明は、強制暴力の最小化されて、強制暴力のない競争も部分的に存在していた」

 

 義鷹:「そうか。それは、どんな分野か説明できるか?」

 

 葵;「えぇ、出来る」義鷹は、娘たちの調査研究のレベルを確認した。葵は、身体的暴力の排除、危険行為の制限、安全装備、最低年俸保証、労働組合、契約透明性、文化的暴力抑制、多国籍選手の受け入れ、差別禁止規定、通訳制度を上げた。


 葵:「MLB文明は、競争を維持しながら暴力を最小化する制度文明として機能していました」自信を持って断言した。

 

 義鷹:「MlB文明の参加者の『心理の構造と質』を説明できるか」


 葵:「もちろんできます」彼女は、競争は激しいが、評価基準が透明で、競技者成績が全てだとした。明確で不透明を排除している文化が素晴らしいと述べた。


 葵は、失敗する恐怖はあるが、最低年棒、労働組合、再挑戦の機会の提供などの制度で不安の緩和をしているとした。統計の可視化、成績が直接報酬に反映され、キャリアの階段が明確なので成長の実感が得られる構造になっているとした。

 

 桜:「私は、 心理的に『登りやすい山』になっていると思います。MLB文明は『世界文明の縮図』になりうるし、『砂漠の緑地化文明の縮図』にもなると感じました」

 

 凛:「MLB文明は、競争を制度化し、暴力を最小化し、世界中から参加者を集める文明だと思います。健全な競争があり、全員が登れる文明のプロトタイプです」


 桜:「この文明は、『単峰山』から『多峰化』することで、世界文明の包摂性を最大化できる可能性があります」


 葵:「MLB文明の強みは『透明なルール』と『多様なルート』があることです。私たちは、これを世界文明に適用してみます」

 

 凛:「オウ国西部に科学、芸術、技術、地域貢献、ケア、哲学などにMLB山頂を作るのです。成功の定義を多元化すると、競争が破壊的でなく創造的になるはずです。どのルートも、現在、無数に存在します。全人類が参加可能にすることで、この砂漠地は、新人類の私たちの聖地になるのです」 


 葵:「世界文明にするには、参加者恐怖心理の最小化と成長の最大化が基本です。MLB文明は、激しい競争があっても、心理的安全性が一定レベルで保たれています。


 凛:「これを世界文明に適用すると、恐怖の最小化ができます。失敗しても再挑戦できる。社会的落下が致命的でない。他者の成功が脅威にならない、の三つの基盤が必要です。

 

 桜:「成長の最大化は、自分のペースで登れる、多様な山頂がある、成長が可視化で担保します。これにより心理的暴力が減り、創造性が増える文明になるはずです」

 

 凛:「世界文明の要点は、国家、経済、文化の三界暴力を最小化することです」


 国家暴力は、権力透明化、独立監査機関、公正な司法で担保、経済暴力は、最低限生活保障、公平市場アクセス、独占抑制で担保。文化暴力は、多文化共生、差別撤廃情報アクセスの平等で担保するとした。


 義鷹:「新文明の自己修復機能は、どうするの?」

 

 凛:「不平等が生まれたら修正、新しい価値観が出たら制度を更新、参加ルートが塞がれたら別の参加ルートを新設する」


 凛は、新文明が静的ではなく、動的に進化し続けるには、技術革新に合わせて文明の山の形を変える、新しい価値観が作る、参加者が新文明を共同で作るようにするとした。


 義鷹:「新文明は、競争を制度化し、暴力を最小化し、多様なルートを提供し世界中から参加者を集め、透明性を保ち、自己更新することだな」


──未来人文明は、競争を協働へ変換する──

 MLB文明は、暴力を制度化し、競争を創造性へ変換する「文明の縮図」だった。三人娘は、この構造を砂漠特区に適用し、未来人文明のプロトタイプを設計する。未来人文明とは、恐怖を最小化し、成長を最大化し、全員が山を登れる「包摂文明」である。


(第三十九話 世界覇権の行方─核三大国と第四国連合─へ続く)



 ──三人娘は、未来文明の制度設計者となる──

 未来人都市、現代人都市、近代人都市── 三人娘が設計した三階級文明は、 砂漠特区を世界文明の実験場へと変える。彼女たちの制度設計は、 暴力を最小化し、競争を創造性へ変換し、 未来人文明の基盤を築く。

 ──文明は、静的ではなく、動的に進化する──

 文明は完成しない。 文明は常に更新され、修復され、再設計される。三人娘が設計する未来文明は、 制度が自己修復し、価値観が進化し、 参加者が文明そのものを共同で創造する 動的文明である。未来人育成計画とは、 未来人を育てる計画ではなく、 未来文明そのものを育てる計画である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。