第三章 未来都市の設計図 第三十七話 三人娘の使命──新文明の巫女たち──
──使命は血統ではなく、選択と修練によって生まれる──
指導者は、与えられるのではなく「選び取る者」だけがなれる。 血統は起点にすぎず、使命は自らの内界で燃え上がる火である。 三人娘に与えられた使命は、黒田一族の未来ではなく、世界文明の方向そのものを変えるための試練だった。彼女たちが向き合うのは、国家でも企業でもない。 人間の欲望・利害・感情・技術・情報・権力が渦巻く三界そのもの。 その渦を読み、操り、未来を創造できる者だけが、 “指導者”と呼ばれる資格を持つ。
──三人娘の使命が始まる──
義鷹は、凛・桜・葵に、黒田一族の未来を託す決断をした。 長門政治と研究者たちを活用し、未来技術を事業化し、 十年以内に新文明の基盤を築く──それが三人娘の使命だった。この章は、三人娘が「指導者として歩き始める瞬間」を描く。
第三十七話 三人娘の使命──新文明の巫女たち──
未来文明は、三人の少女の判断から始まる。未来都市、核融合、量子技術、地下都市、海底都市。二十一世紀後半の文明を決める技術は、偶然ではなく、誰かの「判断」によって選ばれる。義鷹は、その判断を三人娘に託した。彼女たちの選択が、黒田一族の未来だけでなく、オウ国、ニッチ国、そして世界文明の方向を決める。
凛、葵、桜の三人娘の使命は、 内界(自分の成長)、 境界(調略と判断)、 外界(文明創造) の三界を統合することで達成される。
義鷹:「君たちに指導者になる使命を与える。長門政治と彼の仲間の研究者たちを利用して研究成果を事業化する使命だ」
凛:「えぇ、判っています。だけど、彼らは、自分で新技術を確立する可能性は、低いと思います。彼らは、プライドが高いので、開発できない場合を想定して、私たちは、開発できる技術者を見つければ良いのですね。彼らは、技術者を調略する囮なのですね」
長門政治は、投資工学を学ぶ大学生になる。彼の仲間たちは、AI利用技術、砂漠の資源化技術、防衛技術、海底都市技術、地下都市技術、量子技術、核融合技術、微生物利用技術、生態系循環形成技術、生命科学技術、宇宙工学を学び、開発した技術を事業化することになっている。それは、成功する確率的に低かった。
義鷹は、ネットワーク拡大の采配権を三人娘に与えていた。
義鷹:「君たちが指導者になるには、修練メモの意味を理解して、会社を創業して十年以内に株式公開して投資家の資金を十倍以上にするか、必要な上場企業買収をして五年以内に時価総額を三倍以上にすることだ。どのような道に進むかは、君たちの自由だ」
凛:「どの事業をすれば投資家の資産を十倍以上にすることができるの?」
義鷹:「核融合技術開発は、もしも、一兆円以内の投資金額では、数千倍以上になるとみている。他の量子技術などでも、数百倍以上になる。開発できる人物に当る確率は、数百万人分の一人くらいだ。彼らが天才でなければ、宝くじの一等賞の確率と同じだと思ったらよい」
凛:「パパ、この使命酷くない。ほとんど実現できそうもないじゃない」
義鷹:「あぁ、そうだよ。だから面白いのだ。できそうもできないことに挑戦することで新しい技術が生まれる。悪知恵の見せどころだ。要は、技術者を見つけて君たちの持つ力で調略すればよい。この作戦は、男性陣には無理だ」
凛:「分っている。簡単に達成できる目標では、面白くない」
桜:「ヒトの性質を知る方法は、どうするの?」
義鷹:「男女を六タイプ分類で性格の違いを知ることだ」
彼は、男性的男性、中間的男性、女性的男性、男性的女性、中間的女性、女性的女性の六分類で人間行動の方向とエネルギーを見ているとした。
桜:「政治君たちの行動も、性格の違いが出るのね」
義鷹:「男性は、性癖の強み弱みを持ち、行動には長所短所が出やすい」
君たちは、男性の女性の好みの弱点を見極めて、これまで学んできた演技の男性的女性と中間的女性と女性的女性の三タイプを演ずると良いとした。
義鷹:「男性指導者には、自分の弱点を補佐して味方してくれる女性が必要なタイプがいる。男性社会で戦う孤独な指導者ほど安らぎを与えてくれる有能な家裁が必要になる」
桜:「男性は、社会生活では、敵と味方に区別、差別する、そんなに厳しい戦いをいつもしているの?」
義鷹:「あぁ、そうだ。正確には、生存競争という戦争をしている。この事実を知ると良いことも悪いことも起きる。女性は、戦争の仕組みを知っていても、知らないふりをするほうが良いこともある」
葵:「情報統制された権威主義国では、国民は政治批判しないのは、権力の暴力を受けないためね。でも、権力が弱体化されると本音が出てきて、政権を倒す力が生まれるのね」
義鷹:「そうだ。非権威主義国でも、SNSによる監視が行われている。君たちは、自分の名で安易に自分の本性が分る情報を検索してはいけない」
葵:「えぇ、私たちは、SNSを使う時、端末は本名と偽名を使い分けているので大丈夫よ」
義鷹は、2025年四月一日、この三人娘を黒田一族の同世代のリーダーに据えて、未来都市社会の研究会を発足させた。
葵:「どうして大人の世界は、複雑な社会になるの?」
義鷹は、この質問を聞くと、一瞬、六歳、七歳の頃に見た大人世界の二つの現象に興味を持った時代を思い出した。一つは、1954年のコメット国委任統治下のビキ環礁の水爆実験で“死の灰”によるニッチ国漁船の船員の被害と水爆威力の凄まじさだった。
当時、義鷹は、強い者に憧れて、強者になることに夢みていた。原爆は、正に“強さ象徴”に見えた。ビキ環礁核実験情報では、二十数回説がある。
もう一つは、コメット国人が作った「砂漠は生きている」というコメット国砂漠の生物の環境適応能力を見せる映画だった。この国の指導者は、一方ではネバ砂漠を核実験場として何度も生態系を破壊する実験を繰り返していた。ネバ砂漠核実験情報では、四十年で約九百回説がある。「生きる」と「破壊」の問題について、祖父の光政に聞いてみた。
光政:「『生きる』は、『誕生』と『生』と『死』の三界の問題だ。『破壊』とは、新しいものを『誕生』させる力と生態系に『死』を与える行為だ。権力者は、国家という制度を作り、自分の権限でその国の歴史を『創造・維持・破壊』をしてきたともいえる」
義鷹:「パパの後を継いだら、お爺様は、僕がどんな権力者になればいいと思っているの?」
光政:「ヨシ坊は、未来を予測して、情報を使える指導者になりなさい。どうするかは、自分で考えてみてね」
光政は、ヨシ坊に使命の参考例を示した。特務員たちを育てることだった。その結果、今では、様々な組織に創造者、変革者、維持者、破壊者の特務員を配置している。
義鷹は、光政から学んだのは、社会問題を解決する知能を身に付け、問題を解決することだった。光政は、曾祖父の興吉大頭領が養子に迎えられた満州鉄道特務員だった。二十世紀第一四半世紀にチュン国内で“清心会”という骨とう品の商売をする特務員組織を作った。
義鷹は、この特務員組織の取引関係を維持している。義鷹は、2008年に第十四代大頭領に六十歳で就任した年に、三大軍事国は、大国の持つ広大な「三大砂漠地」の新たな創造者になることに感心がないことに気が付いた。
ニッチ国は、砂漠を緑地化できる未来都市建設技術を持っていた。だが、ニッチ国の指導者たちは、この事業にそれほど熱心でなかった。義鷹は、砂漠を富の大地に変える仲間を募った。
海から近いオウ国の砂漠地に核兵器対応の未来都市文明を創造して、核戦争回避地となれる自給自足できる資源を再生産して、砂漠地に未来都市文化を世界文明にすることを考えた。
義鷹には、この世界計画の実現には、太陽神、皇祖神、巫女の三つの機能を持つ天照大神のような女性事業承継者が必要だった。彼は、ベスをオウ国の大頭領に据えて、異母妹四人をオウ国事業の配下に置く人事を行った。
さらに、オウ国では自分が育てた養女たちを四十年後の大頭領にする人事計画を推進していた。自分とベスとの実子のジェイソンとナタリーは、黒田一族の大頭領候補者にしない積りだった。オウ国でニッチ国の新文明を築くことを念願していた。
葵:「世の中の見方をもっと単純化できないの?」
義鷹:「人間行動学を学ぶと複雑な社会の単純化できるよ。大人世界では、ほとんどの場合、感情と利害が絡む。この構造を勉強してね」
葵:「わかった。AIを使って勉強してみる」
義鷹:「君たち、指導者として、大学時代に感情と利害が複雑に絡む人間界の問題を扱うことになる」
葵:「私たちが立ち向かわねばならない指導者には、どんなタイプがいるの?」
義鷹:「権力を私物化する人たちだ」
葵:「どんなやり方で悪さをするの?」
義鷹:「彼らは、自分の利益を得るために、他人を利用すると考えるとよい。彼らの動きを知るには、価値観が何かを知ることだ」
葵:「具体的には、彼らは、人間のどんな感情を悪用するの?」
義鷹:「人間の区別や差別意識などを悪用する。情報を操作して対立させ戦わせるように誘導する。メディアは、この任務を受け易い人材で構成される。右翼、左翼などと言われている」
葵:「相手を弱らせるいじわるをするね」
義鷹:「君たちは、相手を困らせるいたずらをするときは、上手にしてね。相手が君たちの罠に嵌っていることに気が付かないようにしてね。相手が、自分で間違っていたことに気付くようにする」
桜:「意識は、どのように活用すればよいの?」
義鷹:「人間は、自分の都合のよい言葉で解釈をする癖がある。人間の意識に刷り込まれた価値観言葉を用いて分らないように悪用する」
桜:「どんな言葉?」
義鷹:「自分または相手に都合のよい二界で操るようにする。プラスとマイナス、利益と損失、敵と味方、善と悪、賢者と愚者、良い子と悪い子など、いくらでも操る言葉がある。普通の人間は、攻撃や批判されることに馴れていない」
桜:「私たちがセコイヤリストの指導者になるのはどうしたらいいの?」
義鷹:「社会の構造と仕組みを知り、操られない人物になることだ」
凛:「現代社会は、情報機関を活用して様々な手法で人間行動を操ることで成立しているって本当?」
義鷹:「幻影力を発揮する情報データを集積して人間を制御する。人間行動をデータ化して収益に変える。聞き手に意味が明確ならないように表現するなどの技術が使われる」
葵:「ヒトの命を奪う言葉には、どんなものがあるの?」
義鷹:「人民の敵、文化大革命などだ。多くの曖昧な言葉が使われる。自分に責任が及ばないように自分の主張が認められるために、裏腹の様々な嘘の言葉が発明される」
凛:「桜、言葉は、ヒトを欺くためと信じ込ませるためにあるのよ。だって、嘘の言葉より行動でその人の真実が分るもの」
桜:「姉さん。どうして人をそんなに悪くいうの?」
凛:「だから、桜は、お人好し、と言われるの。そんなことでは、指導者になれないよ」
桜は、姉に叱られて黙った。
義鷹は、秘密結婚をしたオウ国人のエリザベス・洋子・キンブルを買収した投資会社の社長に据えて、キンブル家に財産を築かせた。そして投資家を募り、無価値と信じられているオウ国西部砂漠十万平方キロの借地権を取得させた。
義鷹の恐妻家の顔は、一面ではベスを利用するための手段だった。秘密結婚も目的と目標を達成するための作戦の一部だった。
葵:「パパ。人間の地界、海界、空界の地理三界の動きは、国家・企業・個人の未来を決める要因になるの?」葵は、四人の会談を別の視点で分析していた。
義鷹:「あぁ、そうだ。君たちは、セコイヤリスト憲章案を考えてみたか?」
葵:「えぇ、作った。これだよ!」義鷹に資料を見せた。
***セコイヤリスト憲章案***
セコイヤリスト憲章は、 地界・海界・空界の三界を調和させ、 人間の内界・境界・外界を統合する新文明の基礎となる。
前文
私は、地界・海界・空界の三界を共に生きるセコイヤリストとして、以下の環境の循環・調和・慎用の掟を守り、持続可能な文明を築くことを誓う。
第一章 地界の掟
・土地と資源を持続的に利用する義務
・森林、水、土壌の循環を保つ責任
・共同体の調和を維持する義務
第二章 海界の掟
・海洋資源を公平に利用する義務
・航路と境界を尊重する責任
・海洋環境を保護し、未来世代に継承する義務
第三章 空界の掟
・技術を慎重に用いる義務
・大気と宇宙を乱さない責任
・空界の利用は平和維持目的に限る義務
第四章 共通原則
・内界境界外界の三界の適切な循環機能を守ること
・戦う能力を持っていても、防衛以外の争いを避けること
・技術と資源の利用は慎用を基本とすること
第五章 実効性の仕組み
・国際的な監視機関を設置し、掟の遵守を確認すること
・違反に対しては制裁ではなく修復を優先すること
・教育を通じて三界の掟を普及させること
葵は、学問好きな性格を持つ。凛は、自信家で、桜はおっとりしている。
葵:「物事の三界構造は、精神界でも通用するの?」
義鷹:「精神界で三界構造があてはまるかまだ分らない。だけど、物質界では三つの要素で整理すると宇宙学、物理学、力学、化学、数学では物事の仕組みが理解しやすくなる」
使命は、才能ではなく、構造を理解する者に宿る。三人娘は、まだ若い。だが、彼女たちは既に「人材六類型」「性別六類型」「三界生成理論」「統治OS」「認知戦」 を理解し始めている。使命とは、才能ではなく、世界の構造を読み解く者に宿る。この章は、三人娘がその構造を理解し、 未来文明の担い手として歩き始める物語である。
(第三十八話 未来人育成計画──MLB文明から未来文明へ続く)
──三人娘は、未来文明の触媒となる──
義鷹の決断により、三人娘は未来都市文明の創造者となる道を歩き始めた。彼女たちの判断、調略、分析、行動が、オウ国西部砂漠の価値を変え、 新文明の基盤を築く。
──文明は、選ばれた者ではなく、選んだ者によって創られる──
文明は、血統ではなく、選択によって創られる。 三人娘は、黒田一族の血を継いだ者ではなく、 黒田一族の使命を選んだ者である。彼女たちが選ぶ技術、選ぶ人材、選ぶ戦略、選ぶ未来── そのすべてが、 「ハーモナイ文明」の胎動となる。未来は、彼女たちの内界・境界・外界の三界から始まる。




