第三章 未来都市の設計図 第三十六話 指導者学―統治の科学―
国家も企業も一族も、すべては「力学」で動く。ひずみ、ゆがみ、たわみ── 物理学の言葉は、組織の崩壊、腐敗、停滞を示す社会の兆候でもある。指導者は、この力学を読み解き、組織を破壊から守らなければならない。三界生成理論で見ると、指導者は、内界(心身の鍛錬) 境界(判断・調整) 外界(行動・統治) の三つを同時に扱う“多界の存在”である。指導者学とは、この三界を自在に操るための学問である。
第三十六話 指導者学―統治の科学―
指導者学とは、 内界(心身)、境界(判断)、外界(統治) の三界を統合する学問である。指導者は、生まれるのではなく「構築される」。人間の心身、国家の力学、社会の三界、そして情報・ヒト・モノ・カネの流れを読み解く者だけが、組織を導く資格を持つ。この章は、指導者が身につけるべき “統治の科学”を明らかにする。
義鷹は、凛、葵、桜に数学・物理・力学・心理学を統合した「統治の科学」の課題を与えた。職業訓練塾である黒田塾のプレジデントスクールでは、指導者候補生は、「指導者学」を独学方式で自分の好奇心や目標に沿って計画的に学ぶ。
彼らは、中学三年間で高校生までの文系理系の必修科目を学ぶことができる。高校生になると、指導者は、心身の自己管理能力が求められる。孤独に耐える精神力が必要になる。
個人や集団組織の目的や目標達成をするために、権力という影響力を用いて進むべき方向を示めす。他人の欲求を満足させ続けないといけない使命を持つ。
指導者候補生は、自然人と組織に関するあらゆる学問知識の応用方法する“利害関係力学”を学ぶ。権力者の立場で、国家への物理力学と化学熱力学の基礎部分の「応用技術」を学ぶ。
例えば、国民を分子と考え、固体、液体、気体に化学変化する時間と力との関係を知るとかだ。学習する目的は、複雑な物事のエネルギーと時間変化のメカニズムを知ることで、指導者として人間関係を長期間良好に維持できるようになることだ。
ゴルフと兵法と投資学を実戦で学ぶ者もいる。それは、自他の行動原理を知り、他力依存心を捨てて、「自由と責任の重さ」を学ぶためだ。特に男子の指導者候補生は、「自他の情報」、「情報・ヒト・モノ・カネの権力の使い方」と「成功と失敗」を学ぶために、株式投資とゴルフを行い、戦い方を学ぶ。
自分の情報の分析、判断、決断の発言と行動が、自分と関係者に利害をもたらす。それは、政治指導者ではなく、会社経営者を育成するためだった。
教授陣は、投資事業分野に強い黒田一族と政府組織や教育界に強い長門一族の長老(六十歳以上)で構成されていた。凛、桜、葵は、黒田義鷹大頭領の養女であり、その塾生だった。
テーマ1:国家力学を動かす三つのパワー
義鷹:「君たちは、物理の『力学三界』を国家力学に応用してみてくれる」
力学三界とは、ニュートンの運動の三法則の慣性の法則、運動の法則・運動方程式、作用・反作用の法則をいう。その力学を国家の力学として統合する遊びだ。そうすることで、様々な構造を学ぶ、義鷹が編み出した学習法だった。
凛:「国家力学とは、何のどの力のことをいうの?」
義鷹:「国家力学とは、外側と内側の二つの異なる方向、つまり、作用と反作用力があることを覚えてね」彼は、外側の力とは、国際的な力学:遠心力と求心力:隣国との同盟:敵国との軍拡競争:貿易摩擦など様々なものがあるとした。
国家力学の概念は、合成語を作り、論理の統合をする思考だとした。この場合は、他国とのパワーバランスの勢力均衡の中、自国が生存するための外的なメカニズムなどを物理力学で学ぶ手法だとした。
葵:「内側の力学とは?」
義鷹:「それは、国内的な力学、統治の力学をいう。政府と国民の信頼関係、社会の安定性に働く力だ。国家の意思決定や実行力を支える『組織統治ОS』がここに該当する」
桜:「そのОSが不具合を起こすと国家はどうなるの?」
義鷹:「国内のОSがバグを起こすと、ハードパワーの軍事経済力があっても、国家は弱体化する現象が起きるとする理論だ。現代の情報化された社会の戦争は、人間の脳が標的になっている認知戦模様になっている」
葵:「人間の脳が標的ですって・・・?」
義鷹:「これまでの歴史上の国家力学は、主に領土を巡る軍隊のぶつかり合いだった。現代の国家力学では、人の脳が戦場となり、攻略する標的になっている」彼は、これは、現代経済の相互依存体制により、大国同士が正面から武力衝突することが難しくなっている現象だといえると説明した。
凛:「二十一世紀の国際政治は、どういう動きをするの?」
義鷹:「今の世界の現状は、コメット、チュン、ロの三大国が地球の覇権争いをしている。地球の国家は、この三つの国に同調する国と敵対する国と日和見国の三界で構成されている」
凛:「パパ。EU界は、どういう動きをするの?」
義鷹:「EU界は、加盟国全員賛成でないと行動が取れない欠陥がある。実質的には、各国の場、会、社、個の四つの事情により界として様々な方向に力が働くようになる」
義鷹:「君たちは、世界各国の過去の文明圏と文化と歴史を調べて、現在の政軍宗経法社教の現状情報と現政権の行動から、問題課題ごとに赤、青、黄の“三色世界地図”を作ってみてね」
凛:「各国の情報を調べるポイントを教えて!」
義鷹:「その国の課題問題の『ひずみ』『ゆがみ』『たわみ』の状態を自己流で数値化して分析してみればよい」
義鷹:「『ひずみ』は、戦争状態になった時に、その国の敵国暴力に対抗する力を見る指標だ。対抗能力を持たない国は、侵略される候補国だとしてよい」彼は、『ひずみ』とは、外圧が加わったときに表れる国家内部の変形の度合だとした。政変を契機に小国が大国を隣国を飲み込んだ国家の歴史過程を用いて説明した。
凛:「ニッチ国の軍事力の『ひずみ』は、どうして見つけるとよいの?」
義鷹:「ニッチ国の政治家やメディア人が、『仮想敵国側の認知戦者』か、どうかの視点でみるとよい。彼らは、『戦争音痴時代』に育っているので洗脳買収されて、認知戦に参加していると気付かぬ者もいる。無意識な者は、発見が遅れて見つけにくい」
凛:「力学三界を検索して調べたら、パパの三界生成理論の三界とは違う別視点の説があったわよ」
義鷹:「どんな説だった?」彼は、似た理論があると言われても驚かない。
凛:「物理学のスケール別で三界に分けられていた。世界を三つで表すマクロ・ミクロ・メソの三界があった。つまり、対象とする素材のサイズによって、物理法則や扱い方が異なっていた。世界を三つに分ける考え方の共通点があった」彼女は、詳細を次のような趣旨で語った。
・マクロの世界(巨視的界)は、人間が見える大きさに関するニュートン力学や連続体力学が支配する世界。
・ミクロの世界(微視的界)は、原子や電子の大きさ(ナノメートル以下)。量子力学が支配する世界。
・メソの世界(中間的界)は、マクロとミクロの間の大きさ(数ナノ〜数百マイクロメートル)。両方の性質が混ざり合う複雑な支配領域。
義鷹:「あぁ、そうか。考え方は、自由だ。色々ある。例えば、力学三界とは、仏教における、衆生が輪廻転生する三つの領域の世界のことだ。欲界・色界・無色界の三界がある。国家力学の概念を調べたか?」
凛:「えぇ、調べました。国家力学の概念は、一般的でなかった。国際政治と地政学の視点では、国家間の力学と国内政治の二つに分けて語っていた。
国家論の視点では、国家内部の力学として捉えられていた。内と外。だけど、物理力学視点で統治の統合、権力構造を捉えているものは、なかった。
指導者の人格構造をすべて統合して統治ОSという言葉で国家力学を語るものもなかった。つまり、パパの統合学は、まだ学会では芽の状態だよ」
彼女は、国家の内部、あるいは国家間で機能する権力、経済力、軍事力、世論、外交などの様々な“力”が、相互にどのように影響し合い、変化する物理力学のメカニズムがあることは確かだとした。これは、どのように論理統一するかの言葉の問題でもあるとした。
義鷹:「凛は、国家力学をどのように定義したの?」
凛:「国家力学とは、国家が国内外で影響力と維持力を拡大し、生存していくために機能する力だ。つまり、権力、資源、制度、心理の作用反作用のバランスを分析する枠組みや理論を研究する学問と定義した」
彼女は、国家という巨大なシステムは、どのような力によって突き動かされ、どのような行動を取るのかを解き明かす国際政治学や地政学の概念だが、物理力学心理学の三統合で国家概念を強固にすることができるとした。
義鷹:「国家力学の人間、組織、戦いの三つの歯車をどのように考えたの?」
凛:「愚者・裏切り者・卑怯者=人間の脆弱性、組織統治OS=制度の健全性、認知戦=最新の攻撃手法は、すべて、この国家力学を構成する重要な歯車にした」
義鷹:「君は、力とその変化をどのような視点で調査したの?」
凛:「国家力学を理解するため三つの力と現代力学の変化を調べた。国家の力、すなわち国力は、主に三つの要素が複雑に絡み合って変化するのが解った」
彼女は、物理的な力を軍事力、経済力、人口、領土、資源だとした。いわば、これは、国家の“筋肉”で、他国を強制的に従わせる力なり得るとした。
国際政治のリーダーになるには、魅力ある国力が必要だとした。文化、政治的価値観、外交政策の正当性の認知が多数要る。他国から「あの国のようになりたい」と自発的に協力を引き出す力だとした。かつてコメット国は、その力を持っていた。
ところが、権力という魔物は、時間変化と共に国民性を分断して変えてしまった。傲慢な権力は、流転する。どこに移るのかを見極めることが国家力学を学ぶ者の任務だとした。
義鷹:「よく調べたね。凛、認知戦とは、どう定義したの?」
凛:「認知戦とは、昔ながらの他国による巧緻な力による侵略手段とした。旧秩序を破壊する闘争力の動きになる。今は、悪辣で巧妙な情報操作、サイバー攻撃、買収工作などによる他国の世論や政治の操作する行為は、普及すると当たり前のことになる」
義鷹:「凛の認知戦の力の視点は、どのような力と見ているの?」
凛:「認知戦は、シャープパワーの最たるものだとする」彼女は、次のように認知戦の力を説明した。
・現代の国家力学では、相手の国内力学である内界を崩壊させること。
・敵国の組織統治ОSでは、民主主義などその国の信頼関係の隙間の拡大を狙うこと。
・認知戦を仕掛けは、SNSなどでデマや偏った情報を拡散的に仮想敵対国に流すこと。
・情報を鵜呑みにする愚者を増やして社会を分断させること。
・自己保身に走る卑怯者、つまり日和見主義者や、他国を利する裏切り者を政治やメディアの要職に浸透 させることだとした。
義鷹:「あれ・・・。随分と卑怯者や日和見主義者や裏切り者に厳しい言い方だな」
凛:「何か、私の定義・・・変?・・・パパ」彼女は、定義を誤ったのだと錯覚した。
義鷹:「なぜ、凛は、卑怯者、日和見主義者、裏切り者に厳しのだ」
凛:「だって、当然でしょ・・・」それは、彼女の性格の一面を覗かせたのだ。
義鷹:「特務員は、パパとの会話であっても本心が解る発言をしてはならない」
凛:「あっそうだった。油断した。ごめんなさい」好き嫌いが出たのだ。
義鷹:「現代戦は、敵国と戦争をすることなく、仮想敵国の国内力学を用いて崩壊や自滅させることだ。現代の国家力学において、一人の人間の脳・心理の愚かさや臆病さは、もはや個人の問題ではなく、国家の命運を左右する安全保障上の最大の脆弱性となっている」
テーマ2:人材活用ОSの開発
義鷹:「葵、君は、人材活用ОSを今、どのように構築しているの?」
葵:「賢者・勇者・凡人・愚者・裏切り者・卑怯者の人材六類型で国力を考えている」彼女は、義鷹にそのひな形の書面を渡した。そこには、次のように書かれていた。
・人材六類型(賢者・勇者・凡人・愚者・裏切り者・卑怯者)
■賢者: 広い視野で物事の本質を見抜く。経験が豊富で、的確な助言ができる。感情をコントロールし、常に冷静である。
■勇者:困難な状況に果敢に挑む人。一人でも立ち向かう人。恐れて誰もやらない正しい行動を、リスクを恐れずに行う人。
■凡人:優れた目立った才能がなく、目立つ性格欠点がなく、ごく普通の人と思われている人。平穏な日常を送る達人。多数派であり、社会の基盤を支える人々をいう。
■愚者:知恵が足らず正しい判断ができない人。物事の本質を見誤り、目先の欲や感情や価値観に溺れて失敗する人。五感:視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の処理脳力が低く、同じ失敗を繰り返す人。
■裏切り者:この概念は、人間界の悪役の物語だ。信頼や約束を破る人。味方を欺いて敵方に付く人。秘密を明かして不利益をもたらす人。その人物を用いる界の事情の違いにより、その言葉の意味が異なる表現になる。力学では、プラス人とマイナス人になる。認知戦業界では、裏切り者は、英雄にも、破壊者にもなることがある。
■卑怯者:この概念は、人間界の悪役の物語だ。正々堂々と戦うことをしない人。自分が不利になると逃亡する人。使用者側の責任になる人。一方、卑怯者は、強者に立ち向かう愚をしない賢さを持つ人。ルールや道徳を破って自分だけ得をしようとする人。判断が主な行動パターンになる人。正面から戦わず、不意打ち、だまし討ち、背後からの攻撃を好む人。責任転嫁基本として、強い者の後ろに隠れて威張る人。自分より弱い立場の人を攻撃する人。状況に応じて、強い側や得な側にすぐ寝返る人。
葵:「この人材六類型モデルは、数学、物理、力学、化学、心理学の界では、自然現象の視点で捉えて研究すると多分、人材活用モデルができるはず」
義鷹:「あぁ、そうだよ。葵は、桜と意見交換して新教育成長人事評価モデルを作ってくれ。あと、異端児の概念を作ってね。七タイプで物語を作る。これに、概念の擬人化を加えて、本質、性格、感情、欲、価値観の要素を加えると物語ОSが完成すると思う」
葵:「わかった。つくる。異端児とは、独自の価値観や行動パターンを持つ人。新しい価値観を生み出す人。革命家。新しい技術を生み出す人。これでどうか?」
義鷹:「あぁ、いい。これで、七人を揃えた。荒野七人の侍ができた。異端児は、変わり者とか、主流派に加わらない人。社会的な常識にとらわれずに行動できる人だ。」
葵:「それも加える。簡単だよ」
テーマ3:組織統治ОSの構築(戦略・戦術・作戦・兵站)
義鷹:「桜、組織統治ОSの構築は、進んでいるか」
桜:「いいえ、まだ、情報を仕入れて加工する前の初歩段階だよ。まず、一般的に使う組織統治ОSの概念を固めることから始めている」彼女は、組織統治ОSとは、事業・経営用語で使われているとした。パソコンの基本ソフトになぞらえて、組織を動かしている見えない共通の行動や思考原則のことだとした。国家統治ОSにする前に企業組織統治を確立することから行っていると説明した。
義鷹:「そうか。どんなに優れた経営戦略や最新のITツール、人事研修を導入しても、土台となる組織ОSが旧式になると、システムは正常に動かないからな。君は、その要素をどのように捉えているの」
桜:「意思決定、役割、評価、会話の四つよ。だけど、これで良いかまだ判断できない」
彼女は、四つを次のように説明した。
・意思決定のルール:トップダウン、合議制、現場の判断。
・役割の定義:権力の範囲、職務の境界線、責任の所在の明確さ。
・評価の基準:成果主義、プロセス重視、年功序列。
・会話の前提:心理的安全性、対話の質、隠し事の有無。
義鷹:「分った。では、組織ОSの刷新が、なぜ、必要なのかを考えたか?」
桜:「もちろんよ。だけど、まだ、判断するには情報が足りない」彼女は、新戦略が機能不全を起こすのを、どう防ぐのかを考えている状況だと説明した。個人の学びやスキルの向上に直結させる方法。人材採用と研修方法の改善策。人事評価基準の見直し、偏向した価値観対策、属人性を排除などだ。
優れた組織ОSが機能すれば、管理者の性格や意志の強さの欠点を補い、誰がやっても自動的に成果や一定の統治が効くシステムを考えている、と述べた。
義鷹は、組織統治ОSの概念は、意思決定のルール、情報の流れ、透明性の確保、役割と権限の明確化、人事評価とその対話理解力を前提に成立していることを実務経験で学んでいた。国家組織も企業組織も、黒田一族の組織も、戦界においては、戦略・戦術・作戦・兵站の四つの不備で崩壊する構造で運営されていることを知っていた。
テーマ4:認知戦の構造
認知戦は、嘘のОSが国家規模で作動する現象である。
義鷹:「桜、組織統治ОSを構築するには、認知戦の概念を知ることが重要だ。調べたのか?」
桜:「いいえ、まだよ。教えて、パパ」義鷹の甘さに付け込み手抜きの桜に変身する。
義鷹:「現代戦は、二十世紀とは全く違う戦場があると思ったら良い。人間の脳の認識・思考・感情を主戦場とする世界が誕生している。二十世紀に教育を受けて二十一世紀の戦争情報を消化しきれない指導者は、戦争に敗れる時代になっている」
彼は、現代戦は、初期段階では従来の戦争のように領土や軍隊の物理的な破壊ではなく、情報やサイバー技術を駆使して、敵国の国民や指導者の見方や判断を狂わせ、自国に都合の良い行動をとらせる認知戦が戦争の前哨戦になっているとした。この戦争の作戦は、陸・海・空・宇宙・サイバーに続く、第六界、人間脳界の支配戦闘だと言えるとした。
義鷹:「認知戦の情報源は、サイバー技術、脳科学、SNSの行動履歴などビッグデータが生成したものがある。この行為は、ターゲットの脳の思考プロセスをハッキングして、脳界を作り変えることを目指す、より高度で科学的な洗脳アプローチだ」
桜:「えぇ、そうなの、私、現代の認知戦は、AIなどを使い、ターゲットの普段の関心事や好みの偏り、つまり、視野の狭さを活用することだと思っていた。AIは、本人が気づかないうちに、自分から進んでその嘘を信じ、自発的に社会を疑う愚者になるように脳の思考プロセスそのものをハッキングするやり方じゃないの?」
義鷹:「基本的な概念を理解している段階か。桜は、認知戦の戦略をどのように理解しているの?」
彼は、認知戦の戦略とは、一般的に、人間の脳や心理、思考プロセスを第六の戦闘領域と捉え、情報やIT技術を用いてターゲットの認識を歪め、意図する行動へと誘導する戦略だとした。
単に嘘の情報を流す情報戦とは異なり、人間の偏見や思い込みを突く。物事の解釈の枠組み、つまり、相手のレンズを自分の目的に添った自分のレンズに書き換える。相手に正しい判断をさせないようにする。つまり、方向感覚を失わせて操るのだ、と説明した。
桜:「ふーん、そうなの。随分と、手の込んだ戦略ね。それで、なぜ、操れるの?」彼女は、認知戦の戦略を飲み込めていない口調の顔になった。
桜:「パパ。もっと具体的に説明できない?」我が儘をいう。
義鷹:「桜には戦略目的や具体的な手法、展開のプロセスを説明したほうがよいのか」
桜:「えぇ、それで良いわ。パパ」いつの間にか親子関係の会話になっている。
義鷹:「孫氏の兵法を学びなさい。それと、清朝が明朝を引き継いだ経緯を調べなさい。そうすれば、戦わずして勝の意味が解る。大義名分法の法則を使う戦略だ」
義鷹は、認知戦の主な戦略目的は、相手国の世論や意思決定を自国に有利な方向へ誘導し、無力化することだとした。武力を行使する前の前哨戦の位置付けになると述べた。
桜:「認知戦は、結局、武力を行使する流れになるのね」
義鷹:「そうだよ。武力は、国家を統治する基礎力だ。現在、武力を持たない国家があるが、ほとんどの国は、武力を保持している。これは、国家が生き残る法則に近い」
桜:「分った。認知戦の具体的なやり方を教えて」桜は、戦いの女神の本性を表す。
義鷹:「いいよ。対象国の国内にある対立の火種を刺激し、国民同士を反目させる。そして、内政を麻痺させ社会の分断と弱体化させる。政府、メディア、司法、選挙制度などの公的機関に対する国民の信頼を失墜させ、体制基盤を揺るがす。不信感装置を配置して活用する」
桜:「不信感装置?」
義鷹:「そうだよ。認知戦は、AI、SNSなどのデジタル環境を巧妙に組み合わせて実行する。物語法を用いる。事実、虚偽、省略、誇張を組み合わせた論理一貫性のある物語を提示する。事実よりもその物語の方を信じ込ませる技を使う。不法移民、人権、経済不安などその国の有権者の関心を細分化して感情的になるコンテンツを配信する」
桜:「スマートフォンのあやしい動画、画像は、認知戦の現象なのね」
義鷹:「AIを用いて本物と見分けがつかない偽の動画、画像、SNSのアカウントを大量に生成し、人工的に世論のトレンドを作り出す。幻影が続々と生成され誕生している界だ」
桜:「今の幻影界は、どの領域まで侵略しているの?」
義鷹:「認知戦の概念侵略手口は、世論戦、心理戦、法律戦の領域が、脳界まで及んでいる
桜:「洗脳戦か・・・。具体的な認知戦の流れを教えて、パパ」
義鷹:「ああ、いいよ。戦いを始めるには、社会の不満や対立点の特定が行う。つまり、脆弱性の調査だ。次にSNSやメディアを通じた物語情報を流布して浸透させる。
怒りや恐怖、不信感を煽るのが基本だ。バイアスを強化させる。感情を増幅させる。
人々にデモを起こさせる。特定政治勢力を買収する。
彼らを社会機能を麻痺させる行動へ誘導する。まぁ、我々の投資界でいうと相場操縦の行為だ」
桜:「あぁ、判った。理解するのが簡単じゃない。認知戦界が相場界から社会界へ転移し始めたと考えれば良い」
義鷹:「あぁ、そうだ。AIの発展が、全ての概念の界、場、社、会、個の領域に影響を与えるという意味になる。そのように覚えなさい」
桜:「認知戦のディフェンスは、どうするの?」
義鷹:「認知戦の防御は、巷では軍事的なアプローチだけでは困難だ。社会全体の強靭性や認知安全保障の向上が不可欠と言われている。
具体的には、偽情報を事前に予測して警告するとか、国民の情報リテラシーの向上とか、政府やファクトチェック機関による迅速な情報開示 などを掲げるが、どれも、有効に機能しないだろう」
桜:「それは、どうしてなの?」
義鷹:「それは、あらゆる存在は、必要だから存在する。これが、宇宙の生成法則だからだ。桜は、情報戦と心理戦の理解は、終了したか」
桜:「まだだよ。教えて。調べるより、早い」桜は、手抜きするのが得意だ。信頼できる人の情報を受け入れて消化して自分の物とする技術を持っているからだ。
テーマ5:洗脳戦
義鷹:「君たちは、特務員教育の一貫としてスマートフォンを利用制限されているので、洗脳戦を理解できるが、一般人は、自分が洗脳されていることに気付かない人が多い」
凛:「それは、どうしてなの?」
義鷹:「大概の人は、教育される側に立っているからだ。教える側にいない。つまり、無知の知の世界を理解できないのだ」
義鷹は、洗脳戦である認知戦の状況を次のように説明した。SNSとスマートフォンによる常時接続: 誰もが常に情報に触れている→国家規模の洗脳や世論誘導が安価かつリアルタイムで行える→ディープフェイクの進化→本物と見分けがつかない偽の動画や画像の製造→音声が瞬時に大量生成できる→認知戦の破壊力が飛躍的に向上→洗脳戦が侵攻中だとした。
義鷹:「民主主義のリーダーであるコメット国の選挙においてですら、激しい認知戦が裏で展開されている。これは、国家という枠組みの崩壊現象の一つだ。
個々人の取引で政治取引が行われる現象が起きることを示唆している。
他国を侵略するには、政治家の買収作戦が行われるという意味だ。
権力がカネのなる木だからだ。凛も権力者の視点で見ると何がカネを生むか、もう勉強済みだ。カネが動くところに富が生まれるのだ」
凛:「あぁ、そうか。確かに国会やテレビなどで仮想敵国陣営にとって都合のよい発言をする者が大勢いるね。彼らは、買収されているの?」
義鷹:「そのように見てはいけない。あくまでも、我々は、彼らは自分の任務をしていると見るとよい。どのように行動するかは、自己責任だからだ。役者には、役割があるのだ」
凛:「相手の立場を非難するのではなく、味方に付ければよいのね」
義鷹:「あぁ、そうだ。ニッチ国は、発言の自由が憲法で保障されているので、今は、どのような発言をしても逮捕されることはない。これは、ニッチ国の政治がまだ健全だということだ」
凛:「パパ。チュン国経済を『ひずみ』『ゆがみ』『たわみ』の力学で説明できるの?」
義鷹:「できるよ。チュン国は、放蕩経済だよ」彼は、こう説明した。
「ひずみ」は、需給を無視した政権利己主義による無秩序生産が、原因だとした。「ゆがみ」は、「計画経済」が原因だとした。それが役人の汚職不正蓄財を蔓延化させて、政府組織の「放蕩経済体制」を生み出したと説明した。これは、数千年の歴史の流れだとした。「たわみ」は、国家体制の継続性や安全性や耐久性を無視した構造にあるとした。たわみ過ぎると、橋は崩壊する。
凛:「私たちは、国家エネルギーの『方向』を読み、国家体制の『強弱変化』を予測して、未来を先取りする事業を行えばよいのね」
義鷹:「あぁ、そうだ。あらゆる組織活動には、情報、ヒト、モノ、カネの四つの力学法則が適用できるはずだ」
葵:「パパの国家権力者の人事評価法を教えて」
義鷹:「国家権力は、本来、上層階級、中層階級、下層階級の利害調整をするためのものだ。
国家権力者が行う政治の三者の利害配分バランスの実績を見て、その未来にどのような変化がいつ起きるかを予測した行動をするとよい。
葵も過去の権力者の物語を活用すると、指導者の人事評価の基本ОSを作れるようになるよ」
葵:「分った。ところで、私たちは、自分の利益を得る技術よりも、配下の利益感覚を監視する技術を学ばないといけないの?」
義鷹;「この訓練は、君たちが指導者になった場合、自分に対する仲間たちの不満の変化を読むための技術になるはずだ。部下の裏切りを未然に防ぐためだ。監視技術は、忍者の基本中の基本だ」
葵:「自分自身と他人の二つの心を観測できるようにならないといけないのね」
義鷹:「君たちは、世界各国の職務の上層階級力の下層階級への『ゆがみ』『たわみ』『ひずみ』を必ず分析して。次に、実質的な国家権力を誰が握っているかの視点でも国家構造の権力集中と分散を判断しないといけなくなる。
国家の評価は、政治家、高級官僚、将軍、企業家、メディア人の文明と文化に関する知識の量と質をチェックしてみてね。そうすると、その政権や体制の寿命が解るようになる」
葵:「分った。勉強してみる。ところで、メディア権力の力学の動きを知る方法は、どうすれば良いの?」
義鷹:「君たちは、今世紀末人口半減時代を想定して、この問題の報道をチェックしてみて。新生児の誕生数は、報道されても、この問題の解決策は、まだ報道されていない。どのような対策が具体化されるかで、ニッチ国人の未来開発の脳力が分るはずだ。ニッチ国では、メディア人は、特権階級扱いされている。この文化がマイナス力として働くかどうか見るとよい」
葵:「報道機関の報道の裏側を覗くと、現実社会が見えてくるのね」
義鷹:「ニッチ国の政軍経社教の動きを予想して見るとよい。そうすれば、ニッチ国の未来とオウ国西部の砂漠地の価値と自分の役割が見えてくるはずだ」
義鷹は、世界覇権を競う大国は、相互に情報活動により、二十一世紀以降、相手国の社会分断や国民の不信感を煽り、内部崩壊させる“認知戦”を行っているとした。自分で、情報の事実、真実、嘘の「報道の偏り」で認知戦の有無を推測する訓練をしてみることを勧めた。
メディア業界を政権側、反政権側、中道側と三分割して、情報源の肩入れ比率で見るとよいとした。三大軍事大国のニッチ国での情報活動の手先の言動からも裏読みできるとした。
葵:「ニッチ国は、認知戦に弱い国なの?」
認知戦とは、軍事力ではなく情報を用いて、相手の判断を誤らせ、自分に有利な状況を作ることだ。内部の混乱や崩壊させるのが目的だ。自分の親派を作る運動だ。
義鷹:「残念だが、大人も子供たちも、『フェイク情報氾濫による認知戦場リスク』に晒されている。幻影時代の変化に教育プログラムが追い付いていない」は、SNS、ネット動画、ディープフェイクなどのデジタル技術を使い、短時間に強い影響力を持つ偽情報を拡散する『騙すが勝ちの無秩序な暴力時代』になっているとした。
葵:「コメット国、チュン国、ロ国、ニッチ国のメディアは、どういう権力構造で動いているの? 教えてくれる」
義鷹:「どの国でもメディアは、体制派と反体制派と中間派の三派に分かれるようになる。三派の比率を見ると、どうなるか未来がある程度読める」彼は、コメット国のメディアは、資本家に支配されているとした。チュン国とロ国のメディアは、政府支配下にある。ニッチ国の情報機関力は、他国の情報収集能力が低いので、これから強化する動きにある。黒田一族の特務機関が活躍する時代が来たともいえる。
義鷹:「君たちが理解できている範囲でよいから、情報戦と心理戦の概念の捉え方を言葉で表してくれるか。君たちのこの課題の現況を知りたい」
テーマ6:情報戦・心理戦
葵:「私は、情報戦の動きは、メディア人の三派比率で分るとは思いませんでした。
二十世紀までの情報戦・心理戦は、メディアなどを通じて相手を騙す、不安にさせるという情報発信側の攻防だった。どちらも武力を使わずに、情報を使って戦いを有利に進める戦術だった。
ところが、スマートフォン普及と世界の情報通信網の整備とAI技術の進展で、情報戦・心理戦・認知戦の三統合作戦が行えるようになったとみています」
凛:「これまでの情報戦は、客観的な事実を巡る攻防であり、心理戦は主観的な心を揺さぶる攻防の区分けがあった。客観的な情報は、通信、データをコントロールすることで、敵の行動を制限し、味方の行動を有利にする戦いだった。その目的は、敵より早く正確な情報を掴み、敵には正しい情報を与えない目と耳を塞ぐというごく基本的な五感作戦だった」
彼女は、従来の情報収集の花形は、スパイ活動にあったとした。通信傍受、偵察衛星などによる秘密の入手。妨害・破壊: 敵のレーダーを妨害。通信回線を切断する。偽情報の流布をする。敵に嘘の作戦計画を掴ませる。部隊を誤った場所に誘導するとした。
ところが、現代の情報戦は、サイバー戦、軍のシステムへのハッキングや情報インフラ破壊も情報戦の重要な一部となり、悪化の方向にエネルギーが膨張していると述べた。
義鷹:「凛は、随分と研究が進んでいるな。心理戦は、どのように見ているの?」
凛:「心理戦とは、情報戦などによって得た情報や捏造した情報を用いて、敵の兵士や国民の精神、士気、感情に働きかけ、戦意を喪失させる戦いです。また、戦う前から戦意を喪失させる手段です。自軍の優位を誇張して、あなたの国の政府は無能とかいう、昔ながらの下手なプロパガンダを相変わらず流す国もあります」
彼女は、核兵器使用の恐怖を植え付ける国、敵のリーダーと部下の信頼関係を壊し、仲間割れや裏切りを誘発する古典的な離間工作から現代の境界のない認知戦への進化は、国家力学の恐ろしさが見えてきます、と述べた。
桜:「従来型の情報戦・心理戦は、テレビ、ラジオ、新聞、ビラなどを使い、外側から嘘の情報や恐怖のメッセージを届ける幼稚なスタイルで、人々は、これまでは敵のプロパガンダだとし警戒することができた。だけど、現在型は、人間味のない戦いになっている」
彼女は、国家力学の視点で見ると、新型の情報戦や心理戦は、敵の組織統治ОSである社会の信頼関係や決断力にウイルスを仕込む悪質な技になっているとした。卑怯者や裏切り者を意図的に作り出すことで、自国民は血を流すことなく、相手の国力を内側から削ぎ落としていく自己崩壊のシステムだとした。
テーマ7:指導者になる修練項目
葵:「国民のエネルギーは、人体の素粒子構造の細胞の動きだというパパの説は本当に正しいの?」前回の授業で与えた研究課題の疑問について質問した。
義鷹の考え方は、単純だ。人間の身体も国家も、素粒子を使った細胞の集合体で出来ているとする。粒子は、全ての「物質の根源」だと仮定する。
素粒子は、超高温から低温変化で原子、分子に変化した。我々の住む宇宙は、外界にいる創造主の素粒子で物事を組み立てる実験室だとした。
正しいか間違っているかは、知らない。前提は、物事を考える応用力の修練になるとした。もっともらしい素粒子側から見た適当な説だ。
義鷹:「あぁ。エネルギー量は、素粒子の運動を温度の変化で表現したものだ」彼は、創造主の設計理念を説明した。人間の体温は、摂氏三十六度から三十七度が適温だ。体温がこの範囲を超える低温になっても高温になっても人間は、長時間生きられない構造になっていると述べた。
理論上、熱エネルギーは、絶対零度からプランク温度の範囲内ある。プランク温度は、新たな物理法則を生み出す重要な概念になっている。宇宙創造には、いずれか温度が物事の生成に必要になる。素粒子の衝突を加速する実験では、人類は五兆度台まで成功したと述べた。
国民の衝突による新体制を予測する場合には、過去の事例から国民が革命活動する温度
と運動エネルギーの因縁果を知ることが重要だとした。
桜:「政治エネルギーの流れは、政治指導者の心や性格の『ゆがみ』から組織の『たわみ』や『ひずみ』へと動いて行くのね」
義鷹:「あぁ、そうだ。君たちは、学んだ物理学や化学の知識を自分の配下の統治に応用して欲しい。どのような方向に黒田一族を導くかは、君たち次第になる部分がある。その資質がないなら指導者の権利は、消滅する」
桜:「えぇ、分っている」桜は、権力への拘りを見せていない。それは、自分の心を悟らせない技術を学んでいる学生だからだ。
義鷹:「君たちは、現在の指導者と歴史的人物と自分の三者を比較して共通点や違う点を探して、自分を見る遊びをするのだ」
桜:「私たちは、政治指導者の情報データから、指導者としての長所短所を見つけてその人物の人事評価をすればよいのね」
義鷹:「あぁ、そうだ。現在の指導者の動きは、国別に歴史的人物の成功失敗行動から学ぶとよい。同じタイプなら結果は、全てではないが、愚者ならば、ほぼ同じ失敗行動が想像できる。
賢者ならば、別の行動を選択する確率が高い」
桜:「選択した行動からその人物の意図と能力を予測するのね。ところで自分が指導者として劣っている分野は、どうすればよいの?」
義鷹:「自分が組織の『ゆがみ』『たわみ『ひずみ』を修正できない場合は、有能な人材に任せることだ。その人材を自在に使えるようになることだ。信頼関係を結び、信用してよいが、自分は、相手を信頼してはならない」
桜:「どうして信頼してはならないの?」
義鷹:「人間は、忠誠心を持っていても、状況によって裏切るからだ。人間は、誰でも短所を持っている。短所を攻められると弱い。人間の弱さを知り、君たちは、相手に悟られないように人間の上手な使い手になって欲しい」
桜:「どうすれば、その使い手になれるの?」
義鷹:「君たちは、まず、天然の『男たらし』になることだ」
桜:「えぇ、男の人を騙すの?」
義鷹:「悪くいうとそうだ。上手にいうと、人を惹きつける魅力を持ち、人から好かれる指導者になることだ。
義鷹:「さりげない気配りで、人の心を掴むことができるようになることだ。男性は、自分が愛する女性を守る習性がある。勇者タイプには、この習性を利用する。裏切り者や卑怯者に犠牲を強いるのは、間違いだ。
裏切り者は、重要な情報を漏らして裏切りするように仕向ける。それを逆手に取る作戦をすればよい」
葵:「卑怯者や凡人は、どうするの?」
義鷹:「卑怯者は、囮に使う。戦いに弱ければ、直ぐに逃げる。有利と見て追撃してきた相手を、勇者で撃滅する。凡人は、賢者に率いらせて見せかけに使う。勝勢になると戦闘意欲が増すが、劣勢になると心が揺らぐ。敗勢になると現場を放棄する」
葵:「私たちは、部下のタイプを見極めて、適材適所に配置して問題や課題を解決できる指導者になればよいのね」
義鷹:「あぁ、そうだ。六タイプの人事配置で戦況は、変化する。君たちは、自分の能力、実行力を身に付けて理想的な人物像を作り上げることだ、そうすれば、他人の使い方も理解できるようになる」彼は、三人娘に人たらしの指導者になるために習得しなければならない修練項目のメモを渡した。
■人物像:自分を知り、自分を改造して、自分に必要な人物像を作り上げる
・人格:自分に他人が感じる取れる特性を見つける
・人柄:自分に他人が自然に感じ取れる性質や品格を見つける
・品格:自分に他人が感じられる気高さや上品さを見つける
・品性:道徳基準からみた自分と他人の性質の違いを見つける
・品行:自分と他人との比較で自分のふだんの身持ちの良さを見つける
・定性:自分の性質が一定である部分を見つける
・特性:自分に特別に備わっている性質を見つける
・性質:自分に生まれつき備わっている気質を見つける
・性格:自分が持っている固有の感情や意思を見つける
・気質:自分の言動に表れる、自分に染みついている性質を見つける
・習性:習慣によって自分に身についた性質を見つける
■闘力
・指導力:組織人を目標達成に導き、行動を促す能力
・総合力:達成すべき計画を全体的に運営する能力
・情報力:各種の情報を正確に判断し、組織人を動かす能力
・知力:物事の知識を利用して問題や課題を解決する能力
・客観力:状況を第三者視点でみる能力
・視点力:自他の全体力を様々な角度から長所短所を見抜く能力
・まとめ力:多様な人々の力を目的や目標に集結できる能力
・分析力:物事を正確に理解して人々に伝える能力
・判断力:物事を正確に理解して人々を指導する能力
・決断力:瞬時に物事を理解して、意思決定できる能力
・行動力:決断したことを迷わず実行できる能力
・耐久力:長期間のストレスに耐えられる能力
・信頼力:相手との人間関係を円滑にする能力
・会話力:相手を納得させる交渉能力
・時間管理力:限られた時間内で効率的に任務遂行できる能力
・計画力:目標達成の手順を明確にして、実行可能な方法を提供する能力
・実行力:計画を立てて、行動を起こし、成果を出せる能力
■目的:まず成し遂げしようとする事柄を決める:例:社会貢献
・幸福の追求
・社会・他者貢献
・自己成長・探求
■目標:例:未来都市の建設
人生の目標を定めるメリット
・時間に節約になる
・何をするか明確になるので戦略が立てやすくなる
・決断に迷わなくなる
・困難を乗り越える力になる
■戦域:例:戦う場所と兵站の必要量と損耗量を決める
■防衛インフラ整備:例:地下都市、地下鉄道、地下道路、地下工場、地下倉庫、無人輸送機
■都市防衛体制整備:例:電磁兵器、電磁バリア兵器、通信機能破壊誤作動機器など
■兵站:例:作戦に必要な情報、人材の質量、物資の製造補給体制を決める
■戦略:例:目標達成するための行動の準備、戦力の運用計画を決める
■戦術:例:決めた目標を達成するための手段や方法を選択する
■作戦:例医:どの相手がいつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにするかを予測して、勝利する作戦を実行する。いつ:戦時、境界時、平和時、創業期、成長期、低迷期、衰退期などの時期と環境を見極めて作戦を立てる。
・どこで:戦いが起きる場所を予測して作戦を練る
・誰が:自他の人材と戦力の優劣を考慮して 対抗できる有能な人材を配置する
・何を:他者側の狙いを特定して自者側の戦局を有利に展開させる
・なぜ:相手の欲求を知り、その弱点を突き、自者側の作戦を有利に導く
・どのようにするか:兵站、時間、局面、流れ、方向、戦力。
〇兵站:戦場の後方の安全地帯にあって、作戦に必要な物資の輸送、補給、整備、連絡など。
〇時間:短期、中期、長期、超長期の期間の違いを理解して味方を増やす作戦を立てる
〇局面:戦いの状況を踏まえて、兵站に適合する作戦を立てる
〇流れ:戦いの上げ潮・引き潮・凪ぎ潮期の三つの総合作戦を準備する
〇方向:個別戦の上昇・下降・横ばいの三つの傾向を見極めて作戦変更する
〇戦力:情報、ヒト、モノ、カネの量質を比較して勝利作戦を実行する
指導者学とは、他者を支配する技術ではなく、自分の内界を鍛え、境界で判断し、外界を動かすための“文明のОS”である。指導者を志す者は、 自分自身を改造し、 他者を正しく使い、 組織を未来へ導く力を身につけなければならない。
(第三十七話 三人娘の使命―新文明の巫女たちーへ続く)
三人の反応は、指導者の内界がどのように形成されるかを示す鏡である。指導者は、欲界の揺れを抑え、色界の判断を磨き、無色界の静寂に近づくことで、組織の未来を読み解く力を得る。指導者学は、国家の力学、組織の構造、社会の三界、そして人材の六類型を統合する“文明の技術体系”である。指導者は、ひずみ・ゆがみ・たわみを読み、認知戦を見抜き、人材を適材適所に配置し、新文明「ハーモナイ文明」を築く存在である。




