第93話 超大型魔獣を相手にした俺は、裏技を使ってドヤる
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マジフロ最強の攻撃魔術は888頁の乖離砲だ。 とは言っても、アダマンタートルは周囲の魔力、霊力、仙力をすべて吸収して自分の力に変えてしまう。
ならば物理でゴリ押せばいいかと言われると少し違う。 なんせ、アダマンタイトはとっても硬いからである。
甲羅部分はすべてアダマンタイトでできているアダマンタートルには、物理攻撃もクソほども効かないわけだ。
魔術もダメ、物理もダメ、となるとどうやって倒せばいいのかという話になってくるだろうが、なんとこのアダマンタートルを倒す方法は、時間はかかるが意外にもシンプル。
「妖精王、少し地形変わるけどいいか?」
「アダマンタートルを倒してくれるのなら願ってもないんだぞ!」
「だから、倒すとは言ってねーだろーが」
苦笑いを浮かべながら浮遊の魔術を使用し、アダマンタートルから離れた位置へと飛んでいく。
基本的にアダマンタートルは精霊術の効果範囲に入らなければ無闇矢鱈に攻撃してこない。 とは言っても図体が図体だ、歩くだけでもかなりの脅威だし、万が一ダナシィの街に進路を向けられたら歩いてきただけで街はなくなる。
「おら、こっちだ」
ひとまず、注意を惹くためだけに鉄杭の魔術を使用。 鉄杭は23ページの魔術だが、割と狙いやすいし飛距離もあるから牽制に便利なのだ。 魔力消費量も微々たるものだし、何より無駄がなくてコスパがいい。
俺の鉄杭を喰らったアダマンタートルはのっそりと動きながら俺の方を睨む。 早速とばかりに岩石砲をお見舞いしてくるが、あいにく先ほど寸止していた時空断絶はカイムを守るのに使ってしまったため防御魔術は使えない。
「魔術大全【第924頁】混合式:蒼炎一閃」
炎は炎色反応によって色が変わるというのは有名な話だが、色温度という色の変え方もある。 これは純粋に、炎の温度によって色が変わるという現象だ。
色温度の中でも最も高いのは青。 温度だけで青に変わった炎の温度は一万を超える。
つまりこの混合式、蒼炎一閃によって生まれた青い炎による一閃は、物質を切るのではなく溶かしているのだ。
涼しい顔で岩石砲を真っ二つにした俺を、遠目から見て驚愕する妖精王がちらついた。
「さて、亀さんの動き自体はトロいからどうにかなるけど、何分精霊術による反撃がかなり強烈だからな」
岩石砲の次は翔岩牙という、デカくて尖った岩が足元から隆起してくる技を使用してくる。 これに関しては岩石砲ほど早くはないので浮遊の魔術でひらひら避けることは可能。
とは言えだ、魔術はできるだけ少ない手数で使用するのが基本だというのが、ここ最近の戦いの中で分かってもらっただろう。 つまり浮遊を使わないと避けられないというのは、かなりジリ貧ということに他ならない。
反撃する手段も防ぐ手段もないから浮遊の魔術を使わざるを得ないと言っているようなものだからだ。
「さてさて、どの辺にしようか」
次々と隆起してくる岩石の牙をひらひらかわしながら、アダマンタートルに見失われないよう、かつ岩石砲を撃たれない間合いでひたすら逃げる。
ダナシィの街から引き剥がすように移動を続けること数分。 開けた平原を発見した俺は早速とばかりに地面に降りた。
地面に降りると同時に、アダマンタートルはしめたとばかりに翔岩牙を使用してくるが、浮遊している間にすんどめしていた魔術を使って気合で防御する。
「魔術大全【第658頁】混合式:超硬化!」
その名の通り、全身をものすごく固くすると言う防御魔術。 欠点は、動けなくなる上にダメージを完全に無効化出来ないからまあまあ痛いところ。
とは言っても此処から先は空を飛ぶわけにはいかない。
痛みに耐えながらもタイミングを見計らい、アダマンタートルの前足の動きに注目。
四本の足をのっそりのっそりと動かしながら俺の方へ近づいてくる。 俺が注視している右の足が地面につき、浮かせる瞬間を狙って魔術を構成。
「魔術大全【第740頁】混合式:地盤昇華!」
地盤を盛り上げるこの構成式の最大範囲は縦横50メートルの正方形。 しかし、それだけあればアダマンタートルの足一本くらいならすっぽり乗る。
足を浮かせた瞬間に合わせて地盤を一気に持ち上げてしまえば、アダマンタートルの重心的にいとも容易く上半身が浮き上がり……
「一丁上がりだぜ」
見事にひっくり返すことが可能。 甲羅部分だけがアダマンタイトで出来ているため、ひっくり返した際のお腹部分は比較的柔らかいし、攻撃も非常に通りやすいのだ。
それに、亀であるアダマンタートルは一度ひっくり返せば起き上がるのは至難。 大地の精霊術を使用して自分の体を持ち上げることに専念しようとする。
ここで、精霊術の弱点が浮き彫りになるわけだ。
「魔術大全【第899頁】混合式:大津波!」
自然の力を利用する精霊術は、その場にある物質の力しか借りられない。 つまり、足元に広がっている大地が大量の水を含み、泥だらけになってしまえば圧縮して岩の塊を作るのにかなりの霊力を使うことになる。
その上、アダマンタートルの体重は言うまでもなく非常に重い。 たとえ地面が濡れていなくても、精霊術だけで立ち上がるためには相当の霊力を使用することになるだろう。
普通はアダマンタートルを倒すのは雨の日を狙っておこなうか、非常に魔力消費が著しい混合式ばかり使用するため数人がかりで取り掛かるのだが、俺はこの世界に転生してからの二年間、毎日毎日気絶するまで魔力を使い果たしていたため魔力総量は非常に多いのだ。
最近は一日の内に魔力を使い果たすほうが難しくなってしまったため、三日に一回は魔力を使い果たして死んだように眠るよう日課付けている。 と言うか、一日中引きこもっているからこうでもしないと時間間隔が狂うのだ。
おかげさまで俺は、混合式を五回以上使用している今でもピンピンしている。 そうして、見事ひっくり返すことにも大地の精霊術妨害にも成功した俺は、早速とばかりにアダマンタートル撃破のための最終段階に取り掛かる。
「さて、その丸出しの腹に、使える限りの高火力魔術をしこたまぶち込んでやる」
アダマンタートルの倒し方。
①・まずは雨の日を狙って前足、または後ろ足のどちらかが地面から離れるタイミングと同時に地盤昇華を使用する。
②・これをするときれいにコテーンとアダマンタートルが転倒するため、露出した腹部にできる限り最高威力の攻撃を食らわせ続ける事が可能。
③・しばらくするとアダマンタートルが無理やり起き上がるため、①に戻ってアダマンタートルを転倒させる。
「さて、倒し方はわかったかな諸君?」
ひっくり返したアダマンタートルを背に、ものすごく離れた位置で待機していた妖精達に呼びかける。
「背中の甲羅は硬いし霊力や魔力を吸収するアダマンタイトだが、腹部は普通にタンパク質が凝縮したただの皮膚だ。 そこら辺の魔獣と比べればもちろんタフだが、ひっくり返っているアダマンタートルは起き上がるのに必死で精霊術をそちらに集中させている」
つまり、反撃などしてこないため無防備になっているのだ。
「さあ妖精さん達、狙うのは腹だ! 遠慮はいらねぇ! 全力でぶちかますぞ!」
俺の号令を聞いた妖精さん達が、各々精霊術を使って炎の玉やら水の弾丸、風の刃を飛ばしてアダマンタートルに総攻撃を仕掛ける。
下がらせていたメイハオちゃんやカイムもアダマンタートルをひっくり返したタイミングで妖精王が連れてきたため、二人も待ってましたとばかりに攻撃を始めた。
今までは当てるのが難しいという理由でさっぱり使っていなかったこのゲームの最強攻撃力の魔術、こういった無防備で動けない魔獣を相手にすると非常に強力なのだ。
「第一回目のメイハオちゃん戦以来ずっと眠っていたあの魔術、今まさに日の目を浴びる時が来たぞ!」
高まる気持ちを抑えながら魔術大全をペラペラめくり、久しぶりに開いたページを見て目を輝かせる俺。
「魔術大全【第888頁】混合式:乖離砲!」
何もかもを分解する不可避の殺戮光線が、アダマンタートルの腹に突き刺さった。




