第89話 成り行きに身を任せていた俺は、手のひらの上で転がされていたと知る
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ペペとダレットが鮮やかな連携で、高難易度の魔獣を瞬殺してしまった。
今思ったのだが、記憶干渉構成式が使えるダレットに関しては、冷静に考えれば普通にめちゃくちゃ強いのかも知れない。
なんせそれでなくても構成式を完成させるのが早いゲマトリアが、並列思考と思考加速まで使えるのだ。 先程見ていた限り、思考加速を受けていたペペが魔術を構成する時間、ほとんど一秒に満たなかった。
あのレベルだとさすがの俺も対応できるか微妙なところだ。
「なんなのですかあなた達! とってもかっこよかったのです!」
「あのベヒモスをすぐに倒しちゃうだなんて、すごいのです!」
「あ、あなたは! みんな大変なのです! ゲンガーさんが帰ってきたのです!」
ベヒモスと戦っていた妖精たちが、ゲンガーを見た瞬間キャーキャー喜びだす。 ゲンガーはまんざらでもなさそうな顔で、騒いでいる妖精たちの元へと駆け寄っていった。
妖精たちは小学生くらいの身長しか無く、声も高くてなんとなく可愛らしい。 それに、動きもわんぱくなせいで子供にしか見えない。
とは言っても、妖精さん達はみんな年齢的には今の俺の六倍くらいだ。 つまり、みんなロリジジイでもありロリババアでもある。
そんなどうでもいいことを考えている間にも、ゲンガーはベヒモスと戦っていた三人の妖精たちと顔見知りだったようで、知らぬ間にどんどん話を進めていく。
「つまり、俺がいたときより魔獣が増えてると?」
「そうなのです! 最近は魔獣との戦いで多くのお友達が怪我をしちゃっているのです!」
「マジかよ、結構数減らしていけたと思ったのにな」
「ゲンガーさんがいなくなってから、魔物一体を倒すペースが遅くなっちゃったから、僕達は大変なのです」
「それは、悪かったな。 俺も帰らねーと行けなかったからな」
気まずそうな顔で俺の方を見てくるゲンガー。 なんか俺のほうが申し訳なくなるからやめて欲しい。
「そんな悲しそうな顔しないで欲しいのです!」
「ゲンガーさんはこうして心強い方々と一緒に戻ってきてくれたのです!」
「すぐに妖精王に会いに行って欲しいのです! 王もゲンガーさんが来たと聞けば大喜びなのです!」
ゲンガーの周りでぴょんぴょん飛び跳ねていた妖精さん達は、嬉しそうにゲンガーの腕を引いてせっせとどこかに向かってしまう。 ゲンガーはおどおどしながらも助けを求めるような視線を送ってくるが、なんだか子供にじゃれられてるみたいでウケる。
そんなわけで、放置。
「じゃああっちはゲンガーに任せて、俺らは観光楽しむか」
「おいこらオリジナル! テメーここまで知って知らんぷりするつもりか!」
そそくさとその場を去ろうとした俺の背中に、ゲンガーが慌てて声をかけてきたため逃げられなくなってしまうのだった。
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「よくぞ来てくれたんだぞ! またあえて嬉しいんだぞゲンガーちゃん!」
若草色の髪をボブカットにした美少年が、背中に生えている大きな羽をパタパタ羽ばたかせながらゲンガーの元へと駆け寄っていく。
童顔な顔ながらこちらの妖精さん、なんと年齢は五百歳を優に超えている。 よってこの世界の歴史に割と詳しかったりするのだ。
妖精王アウベル、この妖精の国を治める美少年風のショタジジイだ。
羽の大きさは妖精の強さには関係ないが、こいつの羽根は開くとかなりデカくその大きさはアキバとかにぶら下がってる巨大ポスター並。 なんか、たとえがオタクっぽくて申し訳ない気分になるな。
ともかく、妖精王は悪魔と遭遇したことがあるため、物語のキーマンとなるわけだ。
今はまだ妖精攫い達が動いていないが、俺の記憶によると妖精攫い達が動き出すのは二年後。 つまり、妖精攫い達が動き出してしまう原因が今まさに起きている。
「おそらく魔獣のパンデモニウムが原因でヴェルグが迷いの森に追いやられて、そこを妖精攫いにさらわれ、テオス達が助けると言う流れでマジフロ本編が進んでいくんだろうな」
「となると、俺達がするべきなのはイベントの発生条件を根本から断つことだな」
「おかしいな、俺旅行に来てるはずなんだけど?」
ものすごく自然な流れで面倒なことに巻き込まれた俺は思わず首を傾げてしまうのだが、そんな俺の後ろに隠れるように立っていたカイムの存在に気がついた妖精王は、眉間にシワを寄せながら俺に視線を釘付けにした。
「そこにいるのは悪魔なんだぞ? どうして人間と一緒にいるのかわからないんだぞ?」
「ああ、さすが妖精王だな。 これには深いわけがあってだな」
突然指を指されていたカイムがオドオドしてしまっていたが、俺の代わりにゲンガーが理由を話してくれた。
その話を聞いて驚いたように目を見開く妖精王。
「なるほど、ゲンガーちゃんから話は聞いていたんだけど、君は本当にすごい人間なんだぞ!」
「そりゃどーも!」
「ありがとうゲンガーちゃん! そんなすごい人を連れてきてくれたってことは、今ティア・ナ・ノルドで起きている問題を解決してくれると考えていいんだな?」
「え? それとこれとは話が別じゃ……」
「発言させてもらいますぞ妖精王殿!」
嬉しそうに目を輝かせていた妖精王に、臆する様子もなく声をかけていくペペ。 嫌な予感を察知した俺はすぐさまペペの背後に回り込んで後頚部に手刀をいれる。
「あぱー!」
「すいませんね妖精王。 こいつちょっと変わった子でね。 持病の癪で気絶したみたいだ」
「ええっと、君がバシッて首を撃ってたのが見えたんだぞ?」
「ああ、恐ろしく早い手刀だったな、俺達じゃないと見逃してた」
「ふざけてる場合じゃねえぞゲンガー。 このままだと俺はあのクソ面倒なダンジョンを攻略するハメになるじゃねえか」
むしろ、妖精王はそのためにゲンガーが戻ってきてると思い込んでいる始末。 いいやよく考えてみろ俺。
ここへの旅行を提案したのはゲンガーだ。 それに、先程からゲンガーが妖精さんたちと接する際の優しい態度や表情。
これは、間違いない。
「ゲンガー、おのれ俺をハメたな?」
「ふ、所詮この世は弱肉強食。 ハメられる方が悪いのさ」
清々しいほどに開き直っているゲンガー。 もはやそんなところに痺れる憧れる。
「おいまじかよ、どうするシェンルゥ?」
「なぜ妾に聞くのじゃ?」
「少年の命濁化は全然進んでないんだっち! なんだかんだで乗り気な気がするっち!」
「カイムちゃん、君はシャラップしよう」
「そう言うわけだアウベル。 俺達がパンデモニウムを起こしているダンジョンを攻略……いいや、そのダンジョンの機能をぶっ壊して廃ダンジョンにしてやる」
「ちょちょいちょいちょいちょっと待て、お前何言ってんのゲンガー?」
突然、想定を超えるほどに面倒なことを言い出したゲンガーに、思わず慌てふためいてしまう俺。
「なに、ただってわけじゃない。 アウベルにはそれ相応の報酬を用意してもらうさ!」
得意げな顔で鼻を鳴らずゲンガー。 何でそんな強気なんだお前は。
「俺達がグレイトブリテンを廃ダンジョンにしたら、そこを別荘……ならぬ別迷宮としてもらい受ける。 それプラス、ヴェルグっていう鍛冶妖精がいたよな? そいつを俺達のダンジョンに連れて行ってもいいか?」
マジフロのストーリーに深く関わってくる鍛冶妖精、ヴェルグ。 こいつは何を隠そう小人妖精と呼ばれる品種の妖精族で、オタク風にわかりやすく言うのならドワーフという分類。
「なあオリジナル。 冒険者を近づけないためのダンジョン作りなんて楽しくないだろ? お前はカイムを倒したおかげでバットエンドはほとんど回避できたも同然なんだ」
ゲンガーはやけに楽しそうな顔で俺の方へと歩み寄ってきて、真正面から俺の肩をがっしりと掴んでくる。
「せっかくマジフロの世界に来たんなら、一緒につくろうぜ! 面白いダンジョンを!」




