第86話 迷いの森についた俺は、衝撃的なものを目撃する
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妖精の国、ティア・ナ・ノルド。 華ノ国の北東に位置するこの国は、ジュムフーリヤ帝国と隣接する小国でもあり、迷いの森と呼ばれる深い霧に包まれた森に囲まれているため妖精から招待された者でないと中には入れない。
しかしながら聖マリヤム教を倒した後、テオス達は悪魔の情報を集めるため、悪魔に詳しいと言われている妖精王アウベルに会いにいかなければならなくなる。
ならばどうやってこの国に入るのか、ゲームでは妖精攫いと呼ばれる組織に捕まったヴェルグという妖精を発見し、それを救出することで中に入れるようになるのだが……
「ヴェルグが捕まるのはたぶん二年後ぐらいだろ? ランダム転移で奇跡的にティア・ナ・ノルドに行けたお前ならまだしも、迷いの森からどうやって正攻法で入る気だ?」
隣を歩いていたゲンガーに、気になって声をかけてみる。
「あ? 俺なら通行証もらったから普通に入れるぞ?」
「なんと!」
ゲンガーがポケットにしまっていたであろう木札を見せびらかしながら得意げに答える。
宝州の街で馬車を手配してもらったものの、中は四人乗り。 御者役をカイムがやってくれているため、余った男二人は仲良く馬車を追うように歩いているのだ。
俺が記憶を書き込んだカイムは、ゲマトリア並みに従順。 今のところ俺の命令に従ってくれてはいるが、万が一のことを考えて側にはおくようにしている。
理由は簡単、悪魔であるカイムはもしかすると自分の脳を修復する魔法を産み出し、俺の書き込んだ記憶を上書きする可能性もある。
まあ、この話をシェンルゥにしたら「脳がショートしておる時点でそんな事できんじゃろ、心配しすぎじゃ」などと鼻で笑われた。
まあ俺は念には念をおく男のため、カイムからは目を離さないよう注意をしている。
ゲンガーと歩きながら今のティア・ナ・ノルドはどうなっているのかをゲンガーから聞いていると、馬車からおずおずと顔を出してくるぺぺ。
「あ、あの〜隊長? やはり小官が外を歩いたほうが……」
「俺も一応男だからな、女の子に歩かせるわけにはいかねーだろ」
「ひゅー、童かっくいーのう?」
「オメーは歩け」
「何で妾だけ扱いが雑なんじゃ!」
ガミガミ怒り始めるシェンルゥをシカトし、落ち着かない様子で俺の方をチラチラ見てくるペペに苦笑いを向ける。
「なんのためにお前を連れてきたと思ってんだ。 静養するためだからお前は仕事のこととか俺への気遣いとかなしに、休むことだけを考えろ」
「ですが……」
「じゃあこうしよう。 今回お前に与える仕事は、全力で静養することだ!」
俺がびしっとペペを指差すと、ハッとした顔で姿勢を正す。
「なるほど、静養することが小官の仕事……でしたら、全力で静養させていただきます!」
「ちょろ」
「おいゲンガー、余計なこと言うんじゃない」
真面目すぎるペペは一人で気合を入れたかと思うと、全力で休むためにと言う理由で背もたれによりかかり、座りながらも器用に眠り始めた。
やはりペペは愛すべき馬鹿なところがあるため、ギメルと違ってストレスはたまらないし、フェイトと違って扱いに困ることもない。
たまにせっかちすぎるところにはもの申したいところだが、基本的にペペはダンジョン内にいる時は仕事をするため右往左往している。 よっぽどの問題でもない限り、せっかちな性格に悩まされることもほぼほぼない。
まあペペやアレフが原因で、俺のダンジョンでは二十時以降は絶対に働いてはいけないという暗黙のルールが作られるハメになったのだが。
最近は働いて良い時間を明確に指示したほうがいいと思い直している。
「おっと、見えてきたぞオリジナル」
ゲンガーに促され、顎で示された方角に視線を送ると、鬱蒼とした森が視界に入る。
樹齢千年を超えているであろう大木がいくつも伸びており、天高々と伸びている木々を覆うように雲のようにくっきりと見える霧が森全体を覆っていた。
「竜の巣だ……」
「アホか。 今日火曜日だぞ。 それにここは陸だ、空じゃねえ」
俺のボケに対し、的確なツッコミを入れてくるゲンガーのせいで、思わず腹を抱えて笑ってしまうのであった。
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見るからに物騒な見た目の森に入るため、借りてきた馬車を近くの村に預け、俺達は巨人の腕のように太くて長い大木達を見上げながら間抜けに大口を開けていた。
「生で見るとすげーな」
「足元苔だらけだからこけんなよ」
「あぱー!」
「ぺぺ、大丈夫?」
「大変なんだっち、メイハオちゃんも転ばないように気をつけるんだっち!」
期待を裏切らない女、ぺぺがゲンガーに忠告された瞬間芸術的なコケ方をしている。 近くにいたメイハオちゃんとカイムが心配そうな顔でペペの腰をスリスリしてあげていた、優しい。
「大丈夫ですかペペ様、今治癒の奇跡を行使いたしますね!」
痛そうに顔をしかめていたぺぺへ駆け寄り、慌てて治癒の魔術をかけてあげるダレット。
言っておくがダレットを呼んだのはこのためではない。
「さて、この通行証があればティア・ナ・ノルドまでの道は示してくれるらしいんだが……」
ゲンガーがポケットの中に入れていた木札を取り出し、眉間にシワを寄せる。
「どうだ? 行けそうか?」
「どうなってんだこれ、よく使い方がわからな……ああなるほど、そう言うことか」
一人でぶつぶつ言っていたゲンガーがポンと手をうち、ちらりと森の奥に視線を向ける。
俺は何をするのかを興味深げに見守っていたのだが、腰を治癒してもらったペペがスタスタと俺の方へ駆け寄ってくる。
「隊長! 無礼を承知でお願いがあります!」
「おおなんだ? 言ってみろ」
「将官は静養するためにこの旅に同行しておりますが、この森は苔のせいで足元が滑りやすく、歩くのはかなりの重労働かと思います」
「確かに、この森は視界も悪いしジメジメしててちょっと気持ち悪いよな」
「なので、将官は隊長におんぶしてもらうことを所望します!」
何言ってんだこいつ。
「あ、じゃあ妾も」
「はっ倒すぞお前ら。 おんぶしてやったとしてもメイハオちゃん以外拒否する」
「メイハオ、嬉しい」
「どうしてメイハオちゃんはいいのに、カイムはダメなんだっち?」
「ですが隊長、将官が静養するためにはおんぶは必須かと思われます!」
どうやらペペは、言い渡された命令を最優先で実行するために、頭の悪そうな発言を恥ずかしげもなくしてしまうらしい。
「さあ早く! おんぶして下さい隊長! さあさあ!」
「だってよゲンガー」
「ちょ、うるせーお前ら。 俺は今忙しいんだ」
ペペが「さあさあ早く!」と言いながら迫ってくるため、おでこを鷲掴みして真顔でせき止めていると、ゲンガーは目を閉じながら木札を両手で握り、祈るように握った両手を額に付けた。
するとゲンガー、ふっと顔を上げてゆっくり目を開けたかと思えば、うるうるっとした瞳で虚空を見上げる。
「お願い! 精霊さん! 僕をティア・ナ・ノルドまで連れてって!」
え? 突然どうしたゲンガー。
「ぶわっはっはっはっはっは! なんじゃおぬし、突然……ぐふふふふ、ギャッはっはっはっハッハッハ!」
「ゲンガーさん、なにかに取り憑かれたんだっちか?」
「ちょ、俺の顔でキモいこと言うのやめてもろーて」
ゲンガーが突然乙女チックな顔で精霊さん達にお願いをし始めたせいで、シェンルゥが腹を抱えて笑い転げてしまう。
俺も思わず顔を引き攣らせながら、突然可愛子ぶっているゲンガーにドン引きしてしまった。
「やかましい、精霊術を使えるやつしかこの木札を使えねーんだよ」
「ああ、そう言うこと? でもちょっと、精霊術使うたびそれされるのは、ちょっと」
「あんだよ、その目をやめろ」
「いや、なんていうか。 率直に言ってキモいからやめて欲しい」
「ぎゃはは! ドストレートすぎるじゃろ童、腹痛いから笑わせるのやめい」
「お前らなー、連れてってやんねーからな!」
「メイハオ、可愛い顔の偽物お兄ちゃんもいいと思う」
「やめてあげてメイハオちゃん、いたたまれなくなっちゃうだろ」
「あー、もう知らねー!」
顔を真赤にして、恥ずかしそうに怒り始めるゲンガーを見た瞬間、俺やシェンルゥだけじゃなくダレットやメイハオちゃんまで笑い始めてしまうのだった。
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皆さんここまでご拝読ありがとうございます、星願大聖です。
先日いただいた応援コメントにて、とんでもない事実を知ってしまいました!!!
いわゆる闇堕ち的なワードに使用していた言葉が、あまりよろしくないものだと指摘していただいたので……
現在慌ててすり替えているところです。
ご指摘いただいたこと、本当にありがとうございます。 感謝してもしきれないのと同時に、自分の無知さがものすごく恥ずかしくなってしまいました……///
もう恥ずかしくてお嫁に行けない……トホホ///
そんなわけで闇堕ち的なワードは命濁化に変更です。
命が濁ると言う意味を込めてのこの命名です。 これはよろしくないワードじゃない事を信じて、慌てて変更中ですのでよろしくお願いいたします。




