第85話 思い立ったらすぐ行動が主義な俺は、外出計画を立てる
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ぶっちゃけた話、俺は旅行に行きたいとは思わないタイプの人間だ。
だって、普段見ない景色を見に行ったところでどう反応すればいいのかわからない。 転生前も俺は外に出かけるより家の中でゲームやったりアニメしてるほうが楽しいと思っている人種だったし、学生時代の同級生が遊園地やおしゃれなカフェに行ったなんて事を言われても一切羨ましいと思えなかった。
別に俺は寂しい人間ってわけでは無いが、強いて言うなら旅行に行くなら聖地巡礼くらいしか興味がなかった根っからのオタクなわけだ。
そんな俺が、そんな俺の記憶を書き込んだはずのゲンガーが、なんと驚くことに旅行を進めてきたのだ。
初めは乗り気ではなかったのだが、どうしても気になってしまい眠れない。
マジフロのストーリーでも妖精の国ティア・ナ・ノルドに行くイベントはあったし、物語後半だったから結構内容も熱かった。
テオス達が初めてジュムフーリヤ帝国を裏切り、ティア・ナ・ノルドの妖精たちのために戦うストーリー展開が熱かった。
思い出したらなんだか、ちょっと聖地巡礼感覚で行ってみるのも悪くないかもとか思ってきた。 というか、今はゲンガーにダンジョンの防衛を任せているのだから行ってもいいのではないか?
いや、でもゲンガーは夕食の時、ティア・ナ・ノルドに戻りたそうな顔をしていた。 いつも頑張ってくれているわけだし、ダンジョンの防衛は他に任せてもいいのではないだろうか?
となると任せるのはヴァブだろう。 アレフも緊急時の避難要因として残っていてもらわないと困る。
戦力的に武闘派四天王も連れていけない。 となると手空きになるのは……
「よしよし、前回のような失態は絶対に侵さない。 俺の留守を狙ってどっかの馬鹿がこのダンジョンを狙ってくる可能性も視野に入れないといけないからな!」
旅行の日程を決めるため、俺は取り憑かれたように机に向かってノートになぐり書きを始める。
まずはティア・ナ・ノルドのどこへ向かうか、どこで何をするか、何を楽しみたいのかを書き綴っていく。
そうしていく内に、夢中になっていた俺は背後に近づいてくる影に気がつくのが遅れた。
「童、妾に内緒でなにか楽しそうなことしておらんか?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ! 急にでけー声を出すでないわっ!」
驚いた俺の声でさらに驚いているシェンルゥが、機嫌悪そうに耳をふさいでいる。
「だから勝手に入ってくるんじゃねーっての!」
「ノックしたではないか」
「……本当か?」
「う、うむ」
「嘘ついたら明日のお菓子抜きにするとヴェートに誓うか?」
「な、なぜそんなことを誓わんといけないのじゃ!」
「嘘なんじゃねーかこんちくしょう!」
思わず頭をひっぱたいてしまう俺。
「童が部屋に引きこもっとる時は、決まって面白そうなことを企んでおるから、ほうっておくと置いてけぼりにされてしまうじゃろ!」
「どんだけかまってほしいんだよ面倒くせーな」
「面倒くさいとかいうでないこのクソガキめ!」
その後、しばらく口喧嘩を続けたところでお互い息切れし始める。
肩で息をしながらお互い火花をちらして睨み合い、ようやく冷静に会話を始める事ができた。
「童は何をしようとしておるのじゃ?」
「ちょっとおでけけ」
「どこに行こうとしておるのじゃ?」
「ないしょー」
「なるほど、ティア・ナ・ノルドに行こうとしておるのじゃな?」
「まだ何も言ってねーぞ」
「ゲンガーに聞いたのじゃ」
「あやつ、もしやスパイか」
今回はシェンルゥをおいていくつもりだったのだが、この分だと駄々っ子が始まり余計に面倒なことになるだろう。
仕方がなく俺は、今回の旅行計画を話すことにするのだった。
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「そんなわけでヴァブ、アレフ。 お前ら二人にダンジョンの守りを任せてもいいか?」
「会長、自分を誰だと思っているのです? ゲンガーさんよりもより効率的に守ってみせましょう!」
「あの、隊長? なぜ将官は呼ばれたのでしょうか?」
「さすがヴァブだ。 お前がいてくれれば俺は安心して旅行を楽しむことができる!」
「御主人様、持ち物はしっかり持ちましたでしょうか?」
「もちろんだぞアレフ、そもそも俺には異空間収納の魔術があるから、特段必要なものはない」
「すみません隊長、無視しないでいただきたいのですが?」
「出過ぎたことを聞いてしまいました、お許しください」
「気にするんじゃないアレフ。 むしろ心配してくれてありがとな?」
「もしもーし、たいちょー? 将官はダンジョンの整備が途中なので早く作業に戻りたいのですが?」
旅行に行くメンバーが揃ったことで、繭居迷宮の入口でゲマトリアを代表し、アレフとヴァブにお見送りをされている俺達。
そんな俺達の中には、首を傾げながらソワソワしているゲマトリアが一名混ざっている。
「隊長、もしや将官に意地悪をしているのですね! でしたら将官は、ダンジョンの整備があるのですぐに戻らさせていただきます!」
「魔術大全【第79頁】物質創造構成式:蔓縛」
「うわぁあぁぁぁ! 何をするのですか隊長!」
ダンジョンの中へ戻っていこうとするぺぺを、何も言わずに捕獲する俺。
今回の旅行は、七人で行くことにした。
本当ならシェンルゥにメイハオちゃんを預けて五人で行きたかったのだが、シェンルゥのいやいやが始まったため断念したのだ。
三百才超えのババアのくせに、言っても聞かないおこちゃまだから困ってしまう。
「童、お主今失礼なことを考えておらんかったか?」
「そう言うわけだからアレフにヴァブ、ゲマトリアの中から二人借りていくことになっちまうけど、なんかあったらアレフが転移で俺のもとに来るか、れっくんたちに頼んで通信してくれよ?」
「何も起きることはないと思いますが、念には念を置いておいたほうがいいでしょう。 宝州の街だけでなく、ダンジョン周辺でも些細なことがあればすぐにお伝えしましょう」
「間違っても、俺の指示を仰がず勝手に問題を解決しようだなんて思うなよ?」
「も、もちろんですとも」
「アレフ、監視は任せるからな!」
「おおせのままに」
「会長、なぜ自分をそんなにも疑うのです?」
「もちろん、君はやらかした回数がギメルに次ぐトラブルメーカーだからだよ」
「ひ、ひどいです会長」
ガチで落ち込んでいるヴァブに冗談だと笑いながら応じていると、今回連れて行くことになったゲマトリアの二人目、ダレットが困り眉で俺の背中をつんつんつついてきた。
「あの、教皇様? 発言をお許し下さい」
「どうしたダレット?」
「ぺぺ様は普段から献身的に働いていらっしゃるため、静養なさるべく旅行にお連れするのは分かります。 ですが、拙はぺぺ様のように献身的に働いているわけでもなければ、ヴァブ様のように皆をまとめることも出来ません。 どうして拙をこの旅行にお連れしてくださるのです?」
「それはもちろん、ダレットの力が必要だからだろ!」
今回ティア・ナ・ノルドに行くのは、旅行がてら少し試してみたいこともあるからだ。
「ま、まあ! 教皇様が、拙を必要としてくださっている?」
「変なふうに捉えないように。 あくまでティア・ナ・ノルド編の序盤から出てくる妖精さんの中に、ちょっと厄介な問題を抱えているやつがいるから、そいつを助けがてらスカウトしようとしてるだけだからな?」
「そのような重要な任務に、拙をお連れしてくださるのですね?」
「お、おう。 まあそうなるな」
「ああ、主よ。 毎日の祈りが貴方様に届いたのでしょう。 拙は今、身に余るほどの幸福を味わうことが出来ています。 感謝の祈りを、ここに!」
ダレットが恍惚とした表情でお祈りを初めてしまった。 苦笑いを浮かべながら、遠足メンバーに改めて向かい合う。
「そーゆー理由で、みんなで楽しむことが目的なので、くれぐれも面倒事には首を突っ込まないように!」
俺の声掛けに、やる気なさげに答えるゲンガーや、遠足用のでっかいリュックを背負ってウキウキしているメイハオちゃんとカイム。 今にも飛び跳ねそうなほどにごきげんなシェンルゥと、仕事が終わってないから行きたくないと騒いでいるぺぺ。
そして、ほろりと涙をこぼしながら太陽に向かって祈っているダレット。
「メンバーが濃すぎるんだよな」
命濁化防止、兼ぺぺの静養のため半ば無理やり立てた旅行計画だが、いざ出発する前から面倒になりそうな予感がするのは……気のせいだと思いたい。




