第83話 新しい施設で遊ぼうとした俺は、余計にストレスを抱える
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麻雀で楽しく遊んだ後は、スロットやらルーレットやらで楽しんだ。 ちなみに、ギメルにはディーラーと言うサブ職もあるのだが、
「オーナー、次はポーカーで遊ぶんですか? メルちゃんはちゃんとリフルシャッフルも覚えたんですよ!」
「お前さ、意外とシャッフルそのものではミスしないけど、そもそもカードが少なかったりジョーカー入れてなかったりするじゃん」
「ちゃんと入れますもん! メルちゃんとも遊んでくださいよぅ!」
「だってよシェンルゥ」
「なんで妾になすりつけるのじゃ」
とまあ、ディーラーとしてのサブ職が仕事をしているおかげでシャッフルそのものはミスらない。 イメージ的にカードをぶちまける未来を想像してしまいそうだが、本当に一回もそう言うミスをしたことはないのだ。
「そうだオーナー! お飲み物を持ってきますか? メルちゃん特性のカクテルをつくったんですぅ!」
「運んでる最中にコケて、俺の頭にグラスごとメテオするだろう? シェンルゥ、変わりに持ってきてくれ」
「だからなんで妾になすりつけるのじゃ」
今まで幾度となくスロット中とかにギメルがジュースを持ってきてくれたが、三回に一回のペースでひっくり返されてしまう。 今まではああまたコケたのね、はいはいと思いながら見ていたが、つい最近は頭からビシャーっと飲み物を被せられたこともあり、それ以来ギメルに飲み物を運ばせるのは禁止になったのだ。
そんなわけで俺達は、八階層の天井に映し出された漆黒の空の下でギンギラに輝くカジノ街を歩く。 これから向かうのはカジノ街という設定にも関わらず、俺の要望で作成した新エリア。
ぺぺさんはギメルと同じくポンコツの分類なのだが、幻影創造魔術によって作り出す実像幻影の精密さにはずば抜けたものがある。
「フッハッハッハッハ! ようやく完成したようだな! ゲームセンターが!」
カジノ街の真横に併設した新エリアの正体は、ゲームセンターである。 プリクラ以外は大体揃っているこのゲームセンターは、みんな大好きアーケードゲームやUFOキャッチャーに至るまで、様々なものを取り揃えている。
まず遊ぶのはティメルカートレーシングと命名したアーケードレースゲーム。
液晶画面に映っているのは記憶干渉構成式によって映し出されたゲーム画面。 これは生前の俺がゲーセンに通っていた頃に見ていた景色を投影しつつ、細々とした調整を加えることで直感的なプレーができるようになっているアーケードレースゲームなのだ。
アーケード台は四台あるため、俺に続いてメイハオちゃん、カイム、シェンルゥの順番で座るのだが、
「ふぇ〜ん、メルちゃんだけ仲間外れにしないでくださいよぉ」
「仕方がないのう、妾と一回交代で変わってやるから泣くでない」
「ありがとうございますぅ〜。 最近オーナーと違ってルゥ様がとっても優しいですぅ」
「そりゃあのう、この前おぬしが童の頭に酒をぶっかけて以来、異常にあたりがきついではないか。 流石に可哀想に思えてな」
シェンルゥが苦笑いしながら俺の様子を横目に見てくるが、ノーコメント。 ちなみに俺の体は十二才、でも心は二十歳を超えているので酒は嗜むから、未成年なんじゃないかと聞かれてもノーコメント!
「カイムの予想だと、命濁化が進んでいるのが原因だと思うっち!」
「つまりギメルのせいで童の命濁化が進んでおるのか?」
「うーん、それはまあ、なんと言うか……違うと思うっちよ」
「カイムちゃん、目が泳いでますよぅ!」
あからさまにそっぽを向いていたカイムにすがりつくギメル。 なるほど、最近俺がカッカしやすいのは命濁化が原因になっているわけか。
となると尚更楽しい思いをしなければならないだろう。 そう思った俺は、ゲーセンで思う存分遊んでやるぞと心に近い、気合を入れてハンドルを握るのであった。
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数分間アーケードレースゲーム、ティメルカートレーシングで遊んだ結果。
「クソったれ! もう一回だもう一回!」
「えぇ〜? しょうがないですね〜、あといっかいだけですよ、オーナー?」
「後もう一回が五回連続で続いておるのう」
「落ち着くんだっち少年、もうこれ以上メルっちに負けたら命濁化してしまうっち!」
このゲームセンターはここ一ヶ月で完成させた新しい施設だ。 だと言うのに、何故かギメルが運転クソ上手いのがムカつく。
「赤瓶投げんじゃねぇ!」
「アイテム交換がしたかったのでぇ、仕方がなかったんですよぅ」
「なんじゃ今のショトカ! 始めてみたぞ?」
「これはぁ、NISCって言うテクニックでしてぇ、アイテムを使わないでダート道をニュートラルドリフトで強行突破する技なんですぅ」
「畜生! 俺の書き込んだ記憶がここでも悪さしてやがる!」
昔からゲーム実況動画を見たりするのが好きで、俺はレーシングゲームをやり込んだわけではなかったが見るのは大好きだったのだ。
だから上手い人の実況動画を見ながらすごいすごいとべた褒めすることしか出来なかった。
その時見ていた記憶が、娯楽施設の八階層を担当しているギメルを覚醒させてしまったらしい。
もはやギメルや俺が専門用語を連発していたせいで、シェンルゥまでショトカとかいう略称を覚えてしまうほどにはプレイし続けている。
勝つまでやめたくない症候群の俺は、レース序盤にギメルを追い越し一位をキープしたままゴール直前まで迫っている。 これで長い長い戦いに終止符を打てる!
この時は、そう思っていた。
「ぬあぁぁぁぁぁ! っここでデスコン?」※デスコン、防ぎようのない理不尽なコンボのこと
「お兄ちゃん、台パンしたら壊れちゃうよ?」※台パン、ムカついて台を叩いてしまうことを差す。
「前張りするならぁ、アイテムの対策はしないとダメですからねぇ」※前張り、レース序盤から一位を取り続けて逃げる戦法を差す。
ゴール直前でギメルの巧みなアイテムさばきに屈した俺は、見事にまた敗北を刻むのだった。
「はーい、これでメルちゃんの十五勝二分け零敗ですよぉ? オーナー、褒めてくださーい!」
可愛らしくウインクしながら俺の方を見てくるギメル。 こんなに何回もプレイしているのに、一回も勝てなくて草。
「ちっくしょうがぁぁぁぁぁ!」
「きゃー痛い痛い! 痛いですぅ!」
とうとう癇癪を起こした俺は、ギメルのこめかみに拳をグリグリめり込ませるハメになった。 何故かギメルは嬉しそうに悲鳴を上げている。
こうして八階層での娯楽チャレンジは終了し、俺達は夕食を食べるために九階層へ降りてくる。
「大変なんだっち、少年のストレスはさらに上がっただけなんだっち」
「勝ち負けの区別がついてしまう勝負事で、ストレスを解消しようと考えるのがダメだったのう」
「メイハオ、楽しかった」
「そうかそうか、メイハオちゃんが楽しそうならそれで良かった」
ストレスを解消しようとして八階層での娯楽を楽しもうとしたのだが、逆効果だったようだ。
むしろメイハオちゃんに構ってる時の方がストレスがないのだから。
「メルちゃんがオーナーのストレスを解消しようとしてたんですけどねぇ。 やっぱりポーカーとかブラックジャックで遊んでくれたほうが良かったんですよぅ」
「どっちにしろ勝てねーからやだ」
「そんなぁ……」
ギメルはディーラーとしてこういったカード勝負をする際、恐ろしく強いのだ。 彼女は魂魄創造構成式を得意としているゲマトリアで、等価交換と言う魔術を得意としている。
この魔術は賭け事が題材になっている八階層の階層主にふさわしい魔術で、魔力や体力などを代償にして自身を超強化する魔術が多い。 魂魄創造構成式は魂を作り出したりする魔術のため、このようにして自身の魂や作成した魂を代償にして、博打に近い技を使用するケースが非常に多い。
ギメルは魂魄創造構成式を駆使して息をするようにイカサマをするが、俺達プレイヤーはそのイカサマに全く気がつけない。 と言うか、魂魄創造構成式を駆使してどうやったらイカサマができるのか、仕組みすらわからない。
魔術だけでなく手品も得意なギメルは手先も器用だったりするのだ。 だが、ポンコツなのと手先が器用なのは、不思議なことに矛盾しない。
「うわぁ!」
そんなことを思っている最中に階段を踏み外して下り階段を転がっていくギメルを、俺は冷めた目で見送るのであった。
「ちょ! ギメル、おぬしまた階段で転びおったな! ったく世話の焼けるゲマトリアじゃのう」
俺の代わりにシェンルゥがギメルを助けに行ってあげたからまあいいだろう。




