第8話 手が足りないことに嘆いた俺は、最高の対応策を思いつく
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あれから数日がたった。
「のう童、そろそろきのこは飽きたのだが?」
「うるせーよ、肉焼いてやったのに食わなかったのはお前だろ」
俺は、鉄板の上できのこを焼きながら苛立ち混じりに返答する。
「植物と種を持ってきたの良いが、栽培するのも大変なのだな。 魔術でチョチョイとどうにかできんのか?」
「できないことはないけど、毎回毎回魔術使ってたら効率悪いでしょうが。 それでなくても連日暗殺者共がこの洞窟に乗り込んでくるのによ」
俺達は今、深刻な問題にひんしている。
毎日のきのこスープにうんざりした俺は、ちゃちゃっと変形の魔術で鉄板を作り、きのこをスープにするのではなく焼くことにしたのだ。
だが、あまり味は変わらなかった。
それはなぜか、調味料がないからである。
では調味料になりそうなものを採取しに行けばいい、普通ならそう思うだろう。
もちろん行ったさ、そして採集に行ったタイミングで遭遇してしまったのだ。
刺客さん達の第二陣に。
「おい童、どうやらまた来たようだぞ? 今回の襲撃者は前回の二倍はおるな」
「関所はなにしてんだよ! もう小規模な軍隊レベルの人数じゃねえか! 華ノ国が戦争を仕掛けられると勘違いしたらどうするつもりなんだ?」
最初にやり過ごした暗殺者達は、まんまと分身体の首を持って帰った。 だがそれを国に差し出した結果、即効で偽物だとバレてしまったらしい。
さすがは魔術大国ジュムフーリヤだ。 初めから時間稼ぎ程度にしか考えてはいなかったので予想はしていたが……
まさかこんなにも早く次の暗殺者たちがこの付近に放たれ、調味料を探していた俺と鉢合わせることになるとは。
とまあこんな感じで俺が廃ダンジョンをアジトにしていることがバレてしまったという流れだ。
そのせいで連日暗殺者の襲撃に悩まされている。 おかげさまで作物の栽培に手が回らない。
もちろん調味料を取りに行く暇もない。 拠点を安定させたいのにやることが多すぎて手が回らない。
なんだかサンドボックスゲームの序盤みたいな忙しさである。 木材とか土のブロックを集めろとでも言うのだろうか?
なんて現実逃避をしていると、シェンルゥがふむふむと唸りだす。
「第一層の罠は軽々と解除されておるようだな」
「解説してる暇があったら迎撃してくれない?」
「嫌に決まっておろう。 そうこう言っている間に第二層も突破されておるぞ」
「勘弁してくれよまじで」
この廃ダンジョンは全部で十層まである。 水抜きを済ませたから俺たちがくつろいでいるここは最終階層だ。
暗殺者の襲撃に備えてそれぞれの階層に罠魔術を仕掛けていたのだが、まあ相手も素人じゃないし普通に罠を解除してくるだろう。
皆殺しにしてしまえば暫くの間は楽できるかもしれないが、なにぶん人を殺す勇気はない。
「ったく、今回もちょちょいっと追い返して、記憶を改ざんしてくるか」
致命的なダメージで気絶させ、記憶干渉魔術で記憶変換の魔術をかけて戻ってもらうしか無いのだ。 根本的な解決にはならないのだが、いい案が浮かばないのだから仕方がない。
シェンルゥが手伝ってくれればいいのだが、こいつは基本的に動いてくれないから当てにならない。
もっと俺のために働いてくれる献身的な相棒が欲しいのだが……
「いや、待てよ?」
シェンルゥが使い物にならなすぎるおかげで、名案を思いついてしまった。
「とりあえず、できるだけ魔力消費を押さえて暗殺者たちを迎撃しないとな」
「童、何を一人でニヤニヤしておる? 率直に言ってキモいぞ?」
「オメーはいつも一言余計なんだよ!」
チャチャをいれてくるシェンルゥに文句を言って、俺はこの苛立ちをぶつけるために暗殺者達の迎撃に向かうのだった。
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「いっちょ上がりっと!」
無事暗殺者たちを迎撃した俺は、ひと仕事終えた達成感を感じながらアジトへと戻って来る。 まあ、アジトとかっこよく言ってはみたものの、一度水没したせいでただの壁に囲まれた空間だ。
拠点作成を進展させようとしてもシェンルゥがチャチャを入れてきて集中できないし、シカトして作業に没頭しようとしても暗殺者たちが来てしまう。
お陰で植物の栽培もこのダンジョンの防衛機構も手がつけられず、このままでは俺が過労でくたばってしまうときた。
「そこで、この前覚えたばかりの混合構成式を使おうではないか!」
「そういえば童、先日妾との戦いに勝ったおかげか魔術のレベルが上ったなどと言っておったな」
そう、シェンルゥとの戦いに勝利した俺は、必要経験値を獲得したらしく魔術大全の九百ページ台をとうとう習得したのだ。
そうして俺は、気を紛らわすために覚えたばかりの魔術がどんなものか確認しようと思いつつ、魔術大全をペラペラめくってた時に便利そうな魔術を発見した!
「魔術大全【第九百五頁】混合構成式:魔造人間!」
この混合構成式は、魂魄創造構成式、意識干渉構成式、各種物質創造構成式などを織り交ぜたかなり複雑な魔術となっており、その魔術の効果は名前の通りである。
「なっ! その齢にして魔造人間を習得したのかお主!」
魔術大全のページから真っ白な塊が飛び出すと、俺の眼の前で粘土のようにうねうね動いて形を形成していき、やがて人型に姿を変える。
「うひゃひゃひゃひゃっ! 大成功だ!」
紺色のドレスに真っ白でフリル付きのエプロンを装着し、頭にもフリル付きのカチューシャを装着した、萌メイドのような体躯をした少女が光の中から姿を表す。
少女はスカートの裾をちょんと持ち上げ、深々と頭を下げた状態で静止していた。
「お初にお目にかかります御主人様」
「うわっ! 喋った!」
「言葉を話す魔造人間など聞いたこと無いぞ! 童、お主何をしたのだ!?」
「なんもしてねーよ、ただ魔造人間の構成式にちょっと概念干渉構成式を織り交ぜたと言うかなんというか……」
概念干渉構成式は、本来なら二百ページ台の魔術だ。 常人ならたどり着けないであろう概念干渉構成式を、ただただ萌え要素という概念を加えるために織り込んだのだが……
「自らの意思で不要な魔術を組み込んだのか? それはもはや、固有魔術の領域であろうて!」
シェンルゥさんは目をまんまるに開きながら驚いている。 ちなみに、まさか魔造人間が喋るだなんて思っていなかった俺も顎が外れんばかりに大口を開けている。
「御主人様の仰せのままに、なんなりとご命令を」
俺が召喚した魔造人間ちゃんは、お辞儀した体勢のまま硬直している。 おそらく俺の命令を待っているのだろう。
とは言っても、試しに魔術を発動してみただけだったので、何を命令するかなどを明確に決めてはいない。
どうしたもんかと視線を彷徨わせ、とある区画に目が留まる。
「あ、じゃああの花壇で栽培してる作物の世話をお願いしていいかな?」
いつの間にか雑草だらけになっている花壇を指差し、魔造人間ちゃんをチラチラみてみると、魔造人間ちゃんは花壇を一瞥してもう一度礼をした。
「御主人様の仰せのままに」
そう言うと、言うが早いか魔造人間ちゃんはスタスタと花壇の元へと歩いていき、せっせと雑草を抜き始めてしまった。
「まじか、どっかの誰かと違って献身的に働いてくれるんだな」
「おい童、そのどっかの誰かというのは妾のことではあるまいな?」
「おめー以外誰がいるってんだよ」
「よーし、しばらく体を動かしていなかったからなまっていたところだ。 ちょうどよいから表に出い」
「俺今の魔術で枯渇寸前だからお断りさせてもらいますー」
「お? もしかしてひよっちゃったのかえ? 妾にボコボコにされるのが怖くてひよっちゃったのかえ?」
ひっぱたきたくなるような顔で煽ってくるシェンルゥだが。 俺はその程度の挑発に乗るほどおこちゃまじゃないんだな。
「お前ごとき、総魔力量の三割もあれば十分だ」
「上等ではないか童! とっとと表に出んかい!」
こうして、畑の世話は魔造人間ちゃんに丸投げし、俺とシェンルゥは廃ダンジョンの外で喧嘩、もといじゃれ合うことになった。
ちなみに、魔造人間ちゃんは一度作ったら内蔵魔力が枯渇するまで機能停止しないため、ちょくちょく魔力補充すればこれから先も末永くお世話になることであろうことを想定し、名前をつけることになったわけだが……
魔造人間ちゃんのスペックは非常に優秀だということが分かったため、量産するであろうことが推測できる。
そのため、ひとまず自家栽培用の花壇の世話をしてくれる魔造人間ちゃんには、アレフと言う名をつけることにしたのだった。




