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バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
始めようダンジョンDIY

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第7話 なんやかんやあって落ち着いた俺は、新たな仲間と引きこもり生活を楽しむ

 ❖

「貴様、体が小さすぎるのう。 もしや貴様、まだ童なのではないか?」

 

「みりゃー分かるでしょ? 僕まだ十二ちゃい」

 

「十二でその魔術練達度だと? 末恐ろしいったらない」

 

 九回層に新たな拠点を作るため、変形の魔術や採掘の魔術を併用して横穴を掘り進めていると、麒麟さん改シェンルゥさんが感心したように声をかけてきた。

 

 最低限二人で窮屈にならないよう穴を掘り進め、そこに変形の魔術を駆使して作った粘土の机と椅子、気持ちとばかりにベットのフレームのようなものを作成。

 

 おふとんは流石にないが、地べたに寝るよりは見た目的にはいいだろう。

 

 それにしても、俺は一人でせっせと拠点作成をしているというのに、シェンルゥさんは後ろから眺めているだけでまったく手伝ってくれない。

 

 なんでこんな優しくない魔獣を召喚してしまったのだろうか?

 

 今回俺は、魔術陣を作って複製するためとはいえ、魔術大全の文字をなぞらずに魔術陣を作った。

 

 長々と複雑な文字を模写し続けている間に似ている文字を間違えてしまったらしい。 シェンルゥさんいわく、転移の魔術陣は召喚の魔術陣と間違えやすい構成になっているらしく、俺は今回まんまとその間違いをしでかしてしまったようだ。

 

 とは言っても、麒麟さんは魔獣のレベル的には最上位に分類される幻獣種だ。 説明するまでもなくくっそ強いし、倒すためには推奨レベル90を余裕で超えてくるクオリティ。

 

「一撃で麒麟を召喚できるとか、俺って運がいいんじゃない?」

 

「たわけ、召喚できるのは設定した魔力に応じた魔獣、または魔力を設定していない状態なら召喚者の魔力総量に左右されるからに決まっておろう」

 

「ただ発動しただけだったから、後者の条件が適応されたってことです?」

 

「おそらくな。 まったく……齢《よわい》十二にして妾を呼ぶなど、規格外にもほどがあるであろう」

 

 そっぽを向きながらため息を付くシェンルゥさん。

 

「そんなことより童(わっぱ)、はよう妾に食事を用意せよ。 言っておくが、妾は肉類は食さん。 まあ乳製品なら百歩譲って許してやるが、出すなら穀物や野菜類だけにせよ」

 

 偉そうに好き嫌いを淡々と告げ、当たり前のように俺に食事を用意させようとする使い魔。

 

 契約したため立場的には俺のほうが上のはずなのだが、なぜシェンルゥさんはこんなにも偉そうなのだろうか?

 

 脳内で文句をたれながらも、せっせと食事の用意をしてしまっている俺が一番悪いのだろうが、文句を言っても面倒なことになりそうなためここは我慢だ。

 

「言っておくが、今はきのこしか持ってないぞ?」

 

「きのこか、ふむ。 良かろう、はよう調理せよ」

 

 鉄を創造して変形させ、鍋を作って火を起こす。 魔術があればサバイバル生活も快適だ。

 

 最悪の場合、創水の魔法で水さえ大量に精製できればしばらくは生きながらえることもできるし、鉄杭の魔術を応用すれば鉄も無限に量産できる。

 

 ゲーム時代は戦うことしか考えていなかったが、こうして魔術をサバイバルに活かすすべを研究するのも面白いのかも知れない。

 

 今後の引きこもり生活にワクワクしながらも、鍋の中でグツグツ煮込んでいるきのこの様子をうかがっていると、無言に耐えかねたのだろうか?

 

 さっきからちらちら俺の横顔を伺っていたシェンルゥは、おずおずと口を開いた。

 

「して、貴様はこのような場所で何をしておるのだ? ここは確か、すでに攻略されたダンジョンであるはずだったが?」

 

「ああそのことですか。 まあ、シェンルゥさんには詳しい事情を話してもいいんですかね」

 

「なるほど。 おぬしズバリ、ワケありであるな?」

 

 遠慮がちにコクリと頷くと、何故か嬉しそうにカッカと笑い出すシェンルゥさん。

 

「実に愉快であるな! 許す、話してみよ! どんな滑稽な思いをしたのか妾が聞いてやろうではないか」

 

 なんだか嫌な予感がするのだが、俺は渋々シェンルゥにここまでの経緯を話すことにした。

 

 ❖

「カッカッカッカッカ! 実に愉快な三文劇であろうて! 異世界から死の未来が確定した姿に転生し、そしてその運命を変えることができずに諦め、この廃れたダンジョンに逃げてきたと? カッカッカッカッカ!」

 

「ちょ、笑うなよ。 普通ここは慰めてくれるんじゃないの?」

 

「妾が貴様のような愚か者を慰めるとでも? 一昨日来るがいいたわけが!」

 

 涙を浮かべるほど笑い出すシェンルゥにムッとしていると、笑い疲れたシェンルゥがお腹を擦りながらこちらに視線をよこす。

 

「これぞ、俗世で言うところの腹筋大崩壊であろうな」

 

「え? なんでそんな単語知ってるの?」

 

「ふむ、俗世ではすでにこの言葉を使わなくなったのか?」

 

 異世界だから現代的な言葉など使われないと思っていたが、俺の耳が都合よく翻訳してくれているのか、それともこの世界を設定したのが日本のゲーム会社だったからなのか。

 

 よく分からないが、ともかく俺がよく使ってた現代日本の言葉もある程度は通じてくれることにホッとするべきなのだろう。

 

 いや待てよ? じゃあなんでパンナコッタで笑わなかったんだ?

 

「……それはそうと、最終階層に溢れた水をどうにかしないとなぁ」

 

「別に誰もこぬのだから放置でよかろう?」

 

「そうも言ってられないんだよね。 これからこの廃ダンジョンに外敵が入らないよう整備したり、俺専用の移動通路を確保したりしないといけないから、できれば最終階層に住処を置きたいわけよ」

 

「なるほどのう。 言っておくが、妾は手伝わぬぞ?」

 

 堂々とぐーたら宣言をしてくるシェンルゥに、思わず細目を向けてしまう俺。

 

「だったらお前は飯抜きだ」

 

「別に構わんもーん。 最悪の場合はみずから取りに行けるしー」

 

「契約した意味ないじゃん」

 

「妾が貴様を襲わないという明確なメリットがあるであろうて」

 

「ああ言えばこう言う、こいつチェンジできないかな〜」

 

 手のひらを返しながらそんな事を言ってみると、シェンルゥはムスッとしながら胸を反らせた。

 

「貴様、妾の偉大さを分かっておらんようだな!」

 

「偉大なことをしてくれたわけじゃないからね」

 

 慣れてきたせいだろうか、口を開けば喧嘩になってしまう俺とシェンルゥだが、先程までずっと一人でぶつくさぶつくさ呟いていた時よりは、なんとなく楽しいと感じてしまう気がしたのは気の所為だったのだろうか?

 

 人間たちに疎まれ、拒否され、疎外感を感じながら生きてきた今までの人生と違い、同じ目線で喧嘩してくれる相手がいるというのは、割と居心地がいいのかもしれない。

 

 ❖

 翌日、水没した最終階層の水抜きに関しては、転移魔術を駆使してランダムテレポートさせることに成功。 その後は麒麟さんとの戦いで使用した横穴を整備して、外まで出れるよう仮通路を作成した。

 

 これであとは転移陣を作って、最奥部と入口を行き来しやすくすれば交通の便は問題なくなるだろう。

 

 とは言っても、昨日からずっときのことレーションしか食べていない。 今日は転移陣の構成は後回しにして食料調達のため周辺を探索したいところ。

 

 幸いこの辺りは草木が鬱蒼と生い茂る林の中だ。 自生してる植物の中に、食べられるものが一つや二つはあるだろう。

 

 採集ポイントを探すために浮遊の魔術で上空に上がり、念の為分身の魔術で作成した分身体に地上を歩かせる。

 

 あとは水滴や風の流れを操って自分を見えないようカモフラージュすれば、完全警戒型シフトが完成するのだが……

 

「童、何を警戒しておるのだ? 随分厳重な防備体制であるな」

 

「その防備体勢を何食わぬ顔で看破するんじゃねーよ」

 

「あの程度のハリボテで、妾を騙せると思うたら大間違いであろうて」

 

 人型になっているシェンルゥも雲を召喚して浮遊できるらしい。 採集ポイントを探す俺につきまとってくるため、隣を飛ばれるとわざわざ姿見えづらくしている意味がなくなってしまう。

 

「ちょっと、せっかく透明化してるのにあんたがついてきたら下から丸見えじゃないの」

 

「妾も透明化させればよいであろう」

 

「魔力もったいねーわ。 帰れって言ってんの!」

 

「一人でいても暇であるからのう」

 

 なんてことを言いながらしれっとついてくるシェンルゥ。 こいつはもしかしなくてもかまってちゃんだ。

 

 仕方がなく俺は透明化の魔術をやめ、浮遊も解除して地面に降り立った。

 

「なぜ魔術を解いたのだ?」

 

「あんたがついてきてたら意味ないと思ったからでしょうが!」

 

「ほほう、別に妾が発見されたとしても、童も見つかりはしないであろうて」

 

「そうは言ってもね、雲に乗って空をプカプカ飛んでる美少女がいたら騒ぎになっちまうでしょうが!」

 

「なになに? よく聞こえなんだ。 ちょっともう一度、”プカプカ飛んでる”の辺りから言い直してみよ」

 

「プカプカ飛んでるロリババアがいたら騒ぎになっちゃうでしょー」

 

「貴様っ! 妾はまだピッチピチの三百二十二歳であるぞ」

 

「ババアじゃん」

 

「ムッキーーー! そこに直れ童! 頭をかっくらしてやろうぞ!」

 

「かっくらすって何だよ? これだから年寄りの言うことは分からなくて困るね」

 

 ガミガミ怒りながら追いかけ回してくるシェンルゥさんから逃げること数分。 俺は気がついてしまった。

 

 遊んでたら日が暮れてしまっており、食料調達をするために外に出たという当初の目的はまったく進歩がなかったことに。


※

 ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

 僭越ながら、少しでも面白いなとか、続きが気になると感じてくださった方は、ぜひブクマや☆、♡をよろしくお願いいたします!

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

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