第79話 絶賛ぼっちになってしまった俺は、学生時代のトラウマを思い出しかける
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完全にしくじった。
入学式を終えた俺は、自分のクラスに案内され礼儀正しく自分の席に座っている。 嘘ついた、学生時代に極めていた寝たふりをして現実逃避をしている。
そう、俺は入学早々ぼっち街道にアクセルベタ踏み状態。
寝たふりをしているのは、別に寝てるから誰も話しかけられないだけで、俺はぼっちじゃないんだよ〜、アピールするために寝たふりしているわけではない。
普通に周りからの敵対オーラが怖すぎるから寝たふりをして現実逃避しているのだ。 俺は決して、友だちが欲しい悲しい子ではない。
「おいみろよあれ、窓際で寝てるあいつ」
「随分と余裕そうだな、首席くんはよ」
「聞いた話によると、あの天才って言われているマフムード子爵の長女を瞬殺したらしいぞ」
教室の入口で噂話をしているモブ共の言う通り、俺はこの学年の首席としてスピーチさせられた。 スピーチの時点でみんな揃って敵意丸出しな視線を集中させてたため噛みまくった。
もう泣いていいかな。
「噂によると、既に何人か殺ってるらしいぜ?」
「王宮お抱えの暗殺者が得意とする魔術を使ってたらしいもんな」
「なるほどな、そりゃマフムード子爵の長女も勝てねーわけだ」
いやいやいや、一人も殺ったことないが?
どこからそんな噂が出回ったのだろうか? 確かに、相手を無力化してスパッと仕留める睡眠の魔術とか、対面した相手を無抵抗にするための摩擦軽減は暗殺者が使う魔術として有名。
とは言っても対人戦で当てるのは少しコツのいる魔術だ。 ああ、なるほどこういうプレイヤー特有の知識を用いたテクは、この世界では広まっていないのか。
もっと周りとのコミュニケーションを取っていれば、俺も入学式の立ち回りをもっと丁寧にできていたのかも知れない。
入学するまで毎日のように魔術の勉強をし続け、さらには毎晩毎晩ダンジョンでモンスターを狩りまくってたからな。 そりゃこの世界の常識に疎くてもしょうがないよ。
うっかり大騒ぎされてしまう魔術を使ってしまったのもそのせいだ!
あの二つの魔術は、ゲーム序盤で覚える魔術の中でも、後半まで使用頻度が高い魔術だったのだ。 ぱっと浮かんだ魔術があの二つだったのは本当に仕方がないと思う。
一人で反省会をしながら寝たふりをしていたら担任の魔術師が教室に入ってくる。 ちらりと起きてるのがバレないよう教室の様子を領域鑑定(魔術大全【第298頁】)を使って様子を見る。
すると二つ分席が空いていることに気がついた。 まあ、言うまでもなく分かるがこの二つの席は入学前に俺がけちょんけちょんにしばき倒したテオスくんとラーニアちゃんの席。
教師が入ってきたため体を起こし、ぼーっと窓の外の景色を眺めながら学園内の説明を聞いたふりする。
とは言っても、内容はゲームの取扱説明書にかいてあったようなことばかりだ。 取説の文章をゲーム用語を抜きにして説明しただけの話など、聞いているだけで眠くなってしまう。
食堂の場所とか移動教室の場所とかを聞いたほうがなんぼか楽しい。
卒業までのカリキュラムだとか、この学園内で禁止されている事項だとか、先生の監督なしに勝手に魔術を使ってはいけないだとか、ぶっちゃけどうでもいいのだ。
と思ってたそがれていたのだが、
「ちょっと、ティメル・シャプール君? 聞いているのですか?」
教師がぷんすこしながら俺を名指しで呼んでくる。
「はいなんでしょう」
「ちゃんと話を聞いているのですか?」
「聞いてますよ?」
「では、あなた達一年生が単位を獲得するために、この一年間で覚えないといけないのは魔術大全の何ページまでかはご存知です?」
「100ページの原子創作ですよね。 こんなの、創金覚えてれば応用次第ですぐ習得……んっん〜、頑張ってこの一年で100ページまでの魔術を習得してみせます!」
途中で口が滑りかけたためヤバいと思い、慌てて立ち上がりながら敬礼する俺。
「なるほど、既に学園内の情報を熟知していたのですね」
「……え?」
感心したように目を見開く教師を見て、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「おいおい、まだ単位の話なんかされてなかったよな?」
「あいつ何で知ってんだ?」
「どうせ裏ルートとかで先輩たちから情報買ってたんだろ?」
どうしてこうなってしまうのだろうか。 いつも予想していたこととは別のことでモブ達に驚かれてしまう。
その後、今回の教訓を活かした俺は教師の話もしっかりと聞くように心がけ、今からでも遅くないと信じて真面目な学生を演じるのであった。
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今日は午前中で学園一日目が終了した。 俺は学園内に寮を借りているため、同じ寮にいるであろうクラスメイトが誰なのかを密かに確認する。
この学園は基本的に貴族しかいないため、大体の学生たちは実家から通う生徒が多いのだが、位の低い貴族の家系からこの学園に来ている学生や、唯一の平民であるテオスみたいな学生は無料で学園内の寮を借りることができる。
俺みたいに侯爵家の息子が寮を借りているのは珍しいケースだ。
案の定、同じ寮の中にはテオスくん含め、ゲームでとてもお世話になるタンク役の、エラムくんもいる。
エラムくんは伯爵家のため位が低いわけでは無いが、少々わけありなので寮生活をしているのだ。
もしかしたら、テオスくんと仲良くなっていないであろうエラムくんと早々に仲良くなって、そこからテオスくんとの仲を取り持ってもらうのもありかも知れない。
今後のことも考えてここらへんの人物と仲良くなっていき、我が愚父や愚兄の愚行を俺主導で止めれば見事バットエンドルートを回避できるだろう。 これこそ愚がみっつで、3G作戦と名付けた作戦。
俺の見立てでは抜かりなく成功する……はずだったのだが、
「ちょっとティメル君、君に話がある!」
もらった教材をカバンに詰めていた俺は、保健室から帰って全身包帯まみれになっているテオスくんに呼び止められる。 テオスくんの後ろでは腕を組んでふんぞり返っているラーニアちゃん。
どうやら二人共目を覚ましたらしい。
話があるなら早めに済ませてもらいたい、そそくさと帰っていったエラムくんを追いかけなければいけないからな。
「な、なんでしょうか」
「なんでしょうかですって? よくもそんなことが言えるわね!」
「僕は君たちシャプール家が、どんな悪事を働いているのかをラーニアちゃんに聞いた!」
おそらく保健室で目を覚ました後、二人で色々話をしていたのだろう。
たった数分で女の子と仲良くなっているだけでなく、固い絆を結んで俺に反旗を翻そうとしているあたり、さすが主人公くんだと褒め称えてやりたい。 別に羨ましいだなんて思っていないけどね?
とは言え、これはチャンスなのではないだろうか? ここでこいつらに『俺も我が愚父の悪事を阻止したいんだ! この機会だから協力しよう!」とでも言えば、3G作戦もうまくいくのだろうか?
そう思った俺は、エラムくんを追いかけるのは後回し。 意を決して敵意丸出しで睨んでくる二人に向き合う。
「なるほど、僕も父上達の悪事には心を痛めるところがあったのです。 良ければ協力しましょう!」
最大限の笑顔で手を差し出すと、テオスくんは俺が差し出した手をパッチーンと叩いて拒否してくる。
「騙されるものか! そうやって僕達を罠に貶める気だろう!」
「いったい何を企んでるのよこの男!」
二人揃って余計に俺への警戒心を強めてくる。 どうしてだろう、真摯に対応しようとしていただけなのに。 後で鏡みながら笑顔の練習だな。
こうして、結局テオスくんたちには信用すらしてもらえないどころか、余計に警戒心を高める結果になってしまった俺は、ひとりトボトボ寮に帰るハメになったのだった。
とりあえず、帰ったら領域鑑定でエラムくんを探すか……




