↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
お隣さんが来訪したようです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/87

第76話 ようやく帰ってきた俺は、何故か優しい家族たちに困惑する

 ❖

 捕まえた聖マリヤム教構成員は、俺が生成した檻につっこみ、宝州の街で巨大な檻を運搬するための馬車を用意した。

 

 テオスたちにその檻を半ば強引に預け、一件落着した俺は繭居迷宮へと戻っていく。

 

 すると、到着すると同時にメイハオちゃんがてくてく駆け寄ってきた。

 

 微笑ましいと思いながら手を振っていると、メイハオちゃんはそのまま俺の腰に飛び込んでくる。

 

 びっくりしつつもとりあえずと言った感じで頭を撫でてあげると、メイハオちゃんはお腹に顔を埋めたままボソボソ話し始めた。

 

「お兄ちゃん、おかえり」

 

「おおメイハオちゃん、いい子にしてたか?」

 

「メイハオ、常にいい子」

 

「あ、うん。 たしかにいつもいい子だな」

 

 苦笑いしながらも、早く自室に帰ってぐっすり休みたい俺は早く解放してくれと言う思いを込め、メイハオちゃんの肩を軽く押したのだが、くっつき虫になってしまっている。

 

「あの、メイハオちゃん? 俺早く部屋で休みたいんだけど?」

 

「メイハオ、とっても怖かった」

 

 いつもはあまり表情を変えないメイハオちゃんが、うるうると瞳に涙を蓄えながら呟く。

 

 色々ありすぎて忘れていたが、この子はさっきマグマに突き落とされかけてたわけだし、洗脳されてからずっとカイムに捕まっていたのだ。

 

 洗脳されても記憶は残るため、俺が助けに行くまでの間、ものすごく心細かったことだろう。

 

 そんな当たり前のことにも気が付かず、早く休みたいからという理由でメイハオちゃんを引き剥がそうとしていた自分に嫌気がさしてしまう。

 

 バットエンドを回避できなかったのはカイムのせいだと言うことに先程気づかされたが、実際問題こういうところで気を使えない人づきあいの下手くそさも少なからず原因になっているのだろう。

 

「助けに行くのが遅くてごめんなメイハオちゃん。 これからはメイハオちゃんには鬼蔵並に強力な護衛をつけないとな!」

 

「そういう問題じゃないじゃろ? このたわけが」

 

 いきなり現れたシェンルゥにツッコまれ、ムッとしながら振り返ると、シェンルゥだけではなくゲマトリア達も俺をむかえにきていることに気がついた。

 

「おお、みんな揃ってお出迎えしてくれるの? 何、今日はVIP対応なわけ?」

 

「そういうところじゃぞ童。 わざわざ理由を言うまでもなく察せないから友達が出来ないのじゃ」

 

「はぁ? 俺だって友達のひとりや二人……いると、思うもん!」

 

「微妙な反応するでない! 冗談に決まっておろうが、なんか可哀想な気持ちになるじゃろ? それに……お主には妾という相棒がおるではないか」

 

 モジモジしながら言ってくるシェンルゥ。 見えた、デレの糸!

 

「自分で言ってて照れてるとか、草生える」

 

「妾はお主を元気づけようとしてやったというのに! どうしてそうやって馬鹿にするのじゃ!」

 

「シェンルゥおねえさま。 多分お兄ちゃんはね、照れてるだけだと思うの」

 

「余計なこと言うなメイハオちゃん」

 

「ほほう、これはこれは悪いことをしてしまったのう、お主が素直じゃないことを忘れておったわ。 まったくのう、お可愛いことじゃな?」

 

「魔術大全【第427頁】空間創造構成式:遮音空間」

 

「ほーい残念じゃったなー、捕まらんぞー?」

 

 俺の遮音空間をひょいっとかわして勝ったような顔をするシェンルゥ。 イラっとしながらムキになって魔術大全をペラペラめくったタイミングで、ゲマトリアを代表してアレフがわざとらしい咳払いをしてきた。

 

「あの、よろしいでしょうか御主人様」

 

 申し訳無さそうな顔で声をかけてくるアレフ。 シェンルゥと取っ組み合いになりかけていた俺は、間抜けな体勢のまま固まって、きょとんとしてしまう。

 

「我々の力不足が原因で、お手数をおかけしてしまったことの謝罪に参りました」

 

 アレフが深々と頭を下げると、控えていたゲマトリア達もしゅんとした顔で頭を下げる。

 

「繭居迷宮の守護を任せられている身でありながら、たった数名相手に遅れを取ってしまう怠惰。 どうぞなんなりと罰をお与え下さい」

 

「いやいや、真面目か!」

 

 相手は悪魔だったし、聖マリヤム教の大司祭が二人もいたのだ。 声だけで洗脳してくるカイムの能力を前に、ゲマトリアとゲンガーだけで対応するのは非常に難しいに決まっている。

 

 それに、

 

「お前らが無事で何よりだ。 だから罰とか責任とか、そう言うのは考えなくていいぞ?」

 

 心からの本音を言い、頭を上げたアレフが泣きそうな顔をしていることで気まずくなる。

 

「なんと、なんと寛大なお言葉。 我々は、主様に産み出してもらった魔造人間。 はっきり言って人間以下の存在であり、あなた様の命にただ従うだけの……たかが使い捨ての駒でしか無いというのに」

 

「は、てめぇナメてんのかアレフ。 確かにお前らは俺が魔術大全の魔術を上手く組み合わせて作成した魔造人間だ。 つまり、俺が産み出したお前らは、俺にとって大切な家族だって事なんだぞ?」

 

 アレフの発言で頭に血が上ってしまったせいか、少々強い口調でアレフを睨んでしまう俺。 これだけは譲れないのだ、ゲマトリアは俺にとって大事な家族だという事実は。

 

 だから大人げないと言われようが、あの発言は流石にキレてしまう。

 

「二度と自分を……ゲマトリアを使い捨ての駒だとか言うんじゃねえ。 次はマジで許さねーからな」

 

「うぅ……ありゅじさまぁ」

 

「当方は……当方は魔造人間で生まれてよかったぁ」

 

 ユーティがすすり泣いたかと思えば、今度はフェイトが滝のように涙を流し始める。

 

「ひゅー、童め! かっくいぃーではないか!」

 

「なんだようるせーな」

 

 肘でぐりぐりしてくるシェンルゥに文句を言っていると、頭を下げ続けていたアレフはそのまま膝から崩れ落ちてしまった。

 

「も、申し訳ございません御主人様、わたくしはなんと浅はかなことを……」

 

「ちょ、おい! 大丈夫かよ? 悪かったなアレフ、ついカッとなって言い過ぎた。 すまん」

 

「謝ることでは、謝ることではないのです。 わたくしは、とても幸せな気持ちになりました。 本当に、本当にありがとうございます」

 

 アレフは膝から崩れ落ちたままうずくまり、だんご虫のようになってしまう。 罪悪感に駆られた俺は困り眉で背中を擦ってやるのだが……

 

「たいちょぉぉぉぉぉ! うわーん、たいちょぉぉぉぉぉ!」

 

「うわわ、なんだよぺぺ、お前も怖かったのか? おおよしよし」

 

 ぺぺが大泣きしながら飛び込んできたため、戸惑いながらも頭をぽんぽん撫でてやる。

 

「ママはとっても幸せ者だわ! 今日の晩御飯は腕によりをかけないと!」

 

「会長、自分はあなたの下で働けることを誇りに思います。 本当に、本当にありがとうございます」

 

「みんな揃ってどうしたんだよ? なんか今日は様子が変じゃね?」

 

 そこで俺は、まさかと思いすぐに魔術大全を開く。

 

「魔術大全【第138頁】意識干渉構成式:精神統一」

 

「お主、もしや素でやっておるのか?」

 

 様子がおかしいアレフに精神統一の魔術をかけてみるが、アレフは未だにうずくまったまま動かない。

 

 しかもシェンルゥがドン引いたような視線を向けてきている。 たぶん怒ったのが初めてだったため、アレフはショックを受けてしまったのかも知れない。

 

「悪かったってアレフ。 もう怒らねーから」

 

「惚惚《ふーふー》、ししょーはとっても男前! こっちはもうメロメロネ!」

 

「まろはお殿様に一生ついていくでござるよ! お殿様の侍として生まれたことは何よりの誉れでござる!」

 

 みんな揃って泣いていたり嬉しそうだったりでてんやわんやだが、このダンジョンに引きこもるようになってから毎日いい意味で騒がしい。 カイムを倒した以上、俺のバットエンドはほとんど回避できたも同然なのだから、この幸せをこれから続けていけるのだと考えると。

 

「幸せもんなのは俺の方だよ、この馬鹿野郎ども」

 

 素直な気持ちは言えないが、これから少しでも恩返ししていけたらな……と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。