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バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
お隣さんが来訪したようです

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第75話 面倒な奴等と対談する俺は、自分の浅はかさに気づかされる

 ❖

 倒した聖マリヤム教構成員はすべて拘束して、ひとまず繭居迷宮に帰還した俺は、れっくんを引き連れ慌てて宝州に戻るハメになった。

 

 理由は言うまでもない。

 

「え、っと……ひさしぶりだね、ティメル君」

 

「なんでこんなことに……」

 

「兄貴、不貞腐れてないで返事してあげてくだせーよ」

 

 れっくんの事務所に呼びつけられた俺は、テーブルを挟んでテオスの正面に座っている。

 

 フカフカのソファーに体を投げ、肘掛けに体重を乗せて座っている俺の態度は非常に悪いだろう。

 

 それもそのはず、俺のことを追放に追いやった張本人とも言っていいテオス達が正面に座っているのだから。

 

「いや、いいんだよれっくんさん。 僕達はそれだけのことを彼にしたんだから」

 

「おっと? 急にどうした?」

 

「僕達は、君に謝罪しに来たんだよ。 いいや、謝罪をさせてもらいたいと思って、さっきれっくんさんに頼んだんだ」

 

 なんだか、今更気がついたがテオス達の様子がおかしい。

 

 いつもなら何かと事件が発生すると問答無用で俺のせいにしようとするし、違うと言う証拠を見せても絶対に信じようとしなかった。

 

 後半の方はコイツラマジで馬鹿なんじゃねーの? と思ったせいでまるで相手にする気すら無くなっていたが……

 

「君が聖マリヤム教と戦っているところを見て、仲間のために悪魔と戦っている姿を見て、僕は分からなくなってしまったんだ」

 

 テオス達の表情がどんよりしており、なんだか不貞腐れているこっちが悪者のように感じてしまう。

 

 俺は仕方がなく頭をガシガシ掻きながら座り直し、とりあえずといった感じで返事をしてみた。

 

「突然謝るとか言われたところで、今頃おせーと思うけど?」

 

「それは……うん、確かにそうだ。 僕達がしてしまったことは取り返しのつかない事だった」

 

「え? お前まじでテオス君だよね? 熱ある?」

 

「いいや! 今は頭がスッキリした気分なんだ! だからこそ、自分が今まで君にしてしまったことを、本当に愚かだったと思っている」

 

 手のひらを返したかのような心変わり。

 

 確かにこいつらは聖マリヤム教を倒すことを目標にしていたかも知れない。 だが、その組織と俺が戦っていたと言う事実を目にしただけで、ころっと考えが変わるものだろうか?

 

 今までこいつらにされてきた理不尽な言いがかりを思い出す限り、とてもではないがそれだけの理由でここまで心変わりするとは思えない。

 

 不自然すぎるのだ。 こいつらの今の態度。

 

 まるで、今までは何かに操られていたのではないかと思ったほうが、自然だと思えてしまうほどに。

 

「なあ、一つ質問していいか?」

 

「なんなりと聞いてくれ!」

 

「お前らが俺を疑う事になったきっかけはなんだ?」

 

 俺の質問に対し、気まずそうに顔を伏せる人物がいた。 俺はその不自然な挙動を見逃さない。

 

「そう言えば、はじめに俺に突っかかってきたのはラーニアさんだったよな?」

 

 ラーニアちゃんは子爵家の娘で、俺の愚父に領地を荒らされた事がある。 俺の愚父はバカじゃないため証拠は残さなかったはずなのだが、この子はシャプール家が黒幕だと初めから決めつけて、俺に突っかかってきていた。

 

 だから恐らく、俺が国外追放にされた理由も、テオス達の態度が突然変わった理由も、今ならなんとなく察しが付く。

 

「その、本当にごめんなさい。 ティメル……くん」

 

「きしょいからいつもみたいに偉そうな喋り方でいいぞ」

 

「き、きしょいとは失礼ね! せっかく反省しているっていうのに!」

 

「自分で反省してます宣言する当たりがポンなのよ、あなたは」

 

「何よ本当に! ムカつくわね!」

 

「ラーニア! 僕達はティメル君に文句を言う筋合いなんて無いよ!」

 

「いやいや、気にすんなってテオス君。 逆に喋りづらいからそこのポンニアさんはそのままの喋り方でいいわ」

 

「ポンニアって何よ! 私はラーニアよ!」

 

 ぷんすかし始めるラーニアちゃんを慌てて止めようとするテオス君。 しばらくして気が済んだのだろう、落ち着いたラーニアちゃんは俺達シャプール家が悪事を働いていたことを知った理由を話し始めた。

 

 聞くところによると、ラーニアちゃんは黒いマントを目深に被った少女にシャプール家の悪事を説明されたらしい。

 

 その少女はシャプール家に捕まった奴隷を名乗っていたらしく、命からがら逃げてきたと説明していたようだ。 黒いマントは見るからに怪しいが、逃げているという前置きがあれば納得はするだろう。

 

 確かに、俺の愚父は魔獣の実験をしていて、実験に失敗した魔獣を力の弱い貴族の領地に放ち、我が物顔でそれを退治したりして英雄を気取っていた。 しかも、ドサクサに紛れて領民をさらって他国に奴隷として売りつけたり。

 

 ラーニアちゃんが会ったというその少女は、自分がそのさらわれた奴隷だと言っていたというわけだ。

 

 どうやら、ラーニアちゃんはその少女の言葉を疑わずに信じたらしい。 この時点で不自然極まりない。

 

「普通に考えれば怪しいと思わないか? あのバカ親父が、捕まえた奴隷をみすみす逃がすと思うか?」

 

「今思うと、普通におかしいとは思うわよ。 そりゃ」

 

「その黒マントの少女とは、ラーニアさん以外会ってる?」

 

「ええ、家で保護してたから、みんなに会わせたこともあるわ」

 

「もう完全に発覚ですわこりゃ。 その少女の語尾は〇〇なんだっちとかだろ?」

 

「え、ええ。 舌っ足らずな子だったわね」

 

 すべてが繋がった瞬間俺は目頭をつまみながら背もたれに体を投げる。

 

 俺も冷静ではなかったのだろう。 何度もマジフロをプレイしていたというのに、テオス達の行動が明らかに異常だと感じることが出来なかった。

 

 そもそも、証拠もない人間を理不尽に疑うような馬鹿が主人公のゲームなど、やっていて気持ちよくないし強いて言うなら明らかにクソゲー認定されるゲームだったろう。

 

 テオス君はイケメンだったから女性人気も高かったし、男性プレイヤーからも一生懸命で真っ直ぐな性格に惹かれるという話が多数上がっていた。

 

 純粋で真っ直ぐなイケメン主人公が、証拠もない俺を理不尽に疑うなんて明らかにおかしいし、ストーリー上ではティメル君が国外追放になる際、テオス君達は心を痛めていた。

 

 ゲーム時代のティメルは素行は悪かったが悪さはしてなかったし、魔術に対する向上心は他の誰よりも高かったことを知っていたからだ。

 

 つまり、俺がバットエンドを回避できなかった理由は他でもない。

 

「あのクソ悪魔さんのお陰で、俺は国外追放にされた上に暗殺者に狙われ続けたわけか」

 

 驚きの事実が明らかになったが、それはそれとして今までこいつらにされたことはそう簡単に許せないし、操られていたから仕方がないで済ませられるほど俺の心は広くない。

 

 今、目の前で申し訳無さそうに顔を伏せているテオス達は、洗脳が解けたおかげで今は俺を目の敵にしていないのだろう。

 

 なんなら、俺を討伐するよう命令してきた皇帝陛下に取り下げをお願いするとまで言ってくるほど反省しているようだ。

 

 どうしたものか、素直に許せたりは出来ないが……かと言って真相を知った今、こいつらを責め立てるのも少し違うと思う。

 

「許されることではないと思うのは分かってるつもりだ。 だから僕は、せめて自分がしてしまった行動に責任を持ち、君の無実を証明して見せたい。 それで許してくれってわけではないし、これから君の邪魔になるようなことは絶対にしないと誓う」

 

「……俺は面倒事が嫌いなんだ」

 

 考えた挙げ句、テオスの顔を見ていたらメイハオちゃんの顔がちらついてしまった。 メイハオちゃんはテオスの実の妹であり、記憶を無くしてしまったテオスと元の関係を取り戻したいと心の何処かでは思っているだろう。

 

 だから、別にこいつらを許すわけでは無いが、報復したりする気もない。 せいぜいメイハオちゃんを笑顔にするために、俺の思い通りに動いてくれればいい。

 

「とりあえず、さっきぶっ倒した聖マリヤム教はお前らに預ける。 お前らが倒したってことにして俺の存在は隠してくれ」

 

「そんな事はできない! 聖マリヤム教を倒したのはティメル君なんだ、君の活躍を僕達が横取りするなんて不名誉なこと……」

 

「ああそうかよ、俺のお願いを聞いてくれねーわけね? 俺の邪魔をしないと誓った直後だってのにさ」

 

「え、いや、これとそれは話が別で、ええっと……」

 

「面倒事は嫌いだから、聖マリヤム教を倒したのは俺じゃないってことにしてくれると助かるなー! あ、あと、繭居迷宮に置いておくのもやだから運んでくれるやつがいるとすっごく助かるなー」

 

「うぐ……じゃ、じゃあ僕達が聖マリヤム教をジュムフーリヤ帝国まで運んでくればいいかな?」

 

 俺のわざとらしい言葉に根負けしたのか、テオス君は浮かない顔ながらも俺のお願いを快く聞いてくれたのだった。

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