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バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
お隣さんが来訪したようです

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第70話 負の感情を刺激された俺は、徐々に悪魔に追い込まれる

 ❖

 俺の知識によると、ジュムフーリヤ帝国の魔術師たちには古カスディム人の血が流れている。 それのお陰で古カスディム人が伝えた魔術を使用することができ、ジュムフーリヤ帝国の貴族たちは古カスディム人の血を濃く受け継いでいる。

 

 マジフロの設定や、王宮の禁書庫にあった手記に書いてあった内容で、攻略サイトの掲示板などでも有名だった魔術の始祖達。

 

「悪魔の強さは魔力の多さに起因するっち。 よって、悪魔たちが力をつけるには大量の生命力、お前らが言うところの魔力が必要になるっちね」

 

 衝撃の事実を知った俺のことなどお構いなしに、ペラペラと言葉を並べていくカイム。

 

「そこで、悪魔たちは自らの魔力を増やして貴族としての位を上げるためどうするべきかを考えたっち」

 

 驚愕のあまり喉の奥で言葉が詰まっている俺に向け、愉悦に満ちた笑みを貼り付けながら歩み寄ってくるカイム。

 

「そこで最も効率のいい方法が発見されたんだっちね。 それが、自分たちが住む魔界とは別の世界、お前たちの住む世界に干渉する方法だっち」

 

 目の前で立ち止まったカイムは、俺の顔を覗き込むようにしながら事実を淡々と述べていく。

 

「我々動揺、他の世界の生き物も生命力を駆使して様々な術を使用していたっち、しかしその生命力は我々悪魔と比べると実に矮小なもので、お前たち人間から魔力を吸い取ったところで我々悪魔にとっては腹の足しにもなんにもならないレベルだったんだっち」

 

 以前のように、俺の周りをゆっくりと歩きながら嘲笑うような口調で説明を続けていく。

 

「だからとある悪魔公爵は考えたっち。 矮小な人間どもに知恵を与え、魔力を高めるため養殖してしまえばいいということを」

 

 大魔術を成功させ現実世界との干渉に成功した悪魔は人の皮を被り、降り立った国に魔術という便利な力を広めた。 やがて魔術という便利な力を使えるようになった人々は瞬く間に人口を増やしていき、国を創り出した。

 

 その国では魔術という独自の戦闘隊形が広まっていき、より効率的な魔術を使用するために高い魔力を持つ人間同士で血を繋げていき、後世に魔術という便利な力を伝承させていくことになった。

 

 自らの生命力を使用して便利な魔術を使えるようになったその国の人間たちは、自分たちの周囲にある力に頼らず自分たちの血に流れる潜在能力だけを使用するようになり、より便利で強い魔術を使用するためその力を高めていく努力をし始める。

 

「そこで、我々悪魔たちはお前たちの世界にダンジョンを作ることにしたっち」

 

 定期的に魔物がポップする上に、自分たちの生活を便利にする資源や、手に入れることで自らの力をより洗練させることができる付与武装。 他にも売ることで富を手にすることができる財宝、そう言ったものを大量に眠らせているダンジョンに潜ることで、人々は魔力を向上させるため努力をし続けていた。

 

「我々が作ったダンジョンは、ダンジョン内で使用された魔力を吸収する。 そして吸収された魔力はそれぞれの悪魔たちの資源として利用され、我々悪魔貴族たちの財産として使われることになったんだっち」

 

 始めは、ただただダンジョンに挑む魔術師達が強くなるよう単純な作りのダンジョンを作り続けていた。 しかし、ある時物好きな悪魔が魔術師たちへの嫌がらせを施したことが発端になり、とある事実が判明する。

 

「人間どもの感情に応じて、生命力は質を変えるっち」

 

 強いモンスターが現れるであろうダンジョン内での緊張感、嫌がらせのように入り組んだ地形にすることで湧き上がる焦燥感。 偽物の宝箱を用意することで起きる失望感。

 

 様々な悪感情がダンジョン内で生まれるようになり、その心境下で発生した魔力と、心にゆとりがある状態で発生した魔力の質に大きな違いがあることに悪魔達は気がついた。

 

「我々悪魔は、お前ら人間たちの悪感情によって変質した生命力、悪感情によって濁った魔力との親和性が高いということが判明したんだっち」

 

 通常の魔力よりも、悪感情によって濁った魔力のほうが燃費が良く、悪魔たちの体質にも親和性が高いことが知れ渡っていき、悪魔たちのダンジョン制作活動は変革を迎える。

 

「ダンジョンに挑む人間どもにより良質な悪感情を与えるため、期待と不満を絶妙な配合で散りばめること、これが新鮮な悪感情を接種するための効率的手段だということが分かったんだっち」

 

 ダンジョン作りのスペシャリストであるカイムから、ペラペラと裏話を聞き続けて心の整理が間に合わなそうになる。

 

「つまりお前ら人間は、我々悪魔にいいように飼いならされている家畜も同然だった、ということだっちね」

 

 魔術が楽しくて学んできた数年間の努力も、ダンジョンに挑むことで自らの魔術が洗練されていく喜びも、全てはこいつら悪魔を養うためだけに仕組まれた事だったというわけだ。

 

「いい具合に濁ってきてるっちね。 さすがティメル・シャプールだっち。 カイムが長い間時間を費やして育成してきた甲斐があるっちよ」

 

 ケタケタと笑い出すカイムを睨み、魔術大全を開くが、

 

「おおっと、忘れないで欲しいんだっちが、あれをよくみるっち?」

 

 そんな俺を横目に、カイムは余裕綽々とした態度で玉座の方を指差す。 玉座と同じ段に並んでいる透明な箱の中には、眠ったように直立しているメイハオちゃんやゲマトリア達が捕まっている。

 

「余計なことをするなよティメル・シャプール。 いい子に大人しく話を聞いていれば、お前にひどいことはしないっち。 だからその物騒なものは下ろすんだっちよ、カイムのお気に入りな家畜君?」

 

 言外に、余計なことをすれば仲間がひどい目に会うと言いたいらしい。 ここで怒れば相手の思うつぼだと分かっているが、この状況下で冷静でいられるほど俺はできた人間ではない。

 

 そんな俺を見て、カイムは心底嬉しそうに笑い出す。

 

「最高だっちねー、最高だっちねー。 我々悪魔の中にも、気に入っている家畜がいるんだっち。 カイムで言うお前とか、バエルで言うテオス・メルレインとかだっちね?」

 

 バエルとは、このゲームのラスボスとして登場する悪魔。 俺の父であるクバート・シャプールや、その他物語に登場する様々な人物をそそのかし、国中を絶望の渦に貶めた悪魔王。

 

「基本的に、我々悪魔にも親和性の高い悪感情を抱く人間が稀に現れる。 その人間が現れた時、我々悪魔はその縁を手繰り寄せることでこの世界に降り立ち、その人間を直々にいたぶることができるようになるんだっち」

 

 長い前置きは俺の苛立ちを最高潮にするため、事実を明らかにするのは俺の失望感を煽るため。 人の嫌がることを誰よりも知っているこの悪魔は、これから俺が絶望するために必要な行為を喜んで行うのだろう。

 

「さてティメル・シャプール。 カイムの可愛い可愛いペットよ。 カイムはお前に簡単な要求をするっち」

 

 優雅な足取りで玉座へと戻っていったカイムは、堪えられないとばかりにニタニタと笑みを浮かべながら、ゲマトリア達が入っていた透明な箱に手を添える。

 

「なぁ〜に怖がる必要はないっちよ? カイムの要求はとても簡単だっち。 これから投げかけるカイムの質問に、正直に答えること。 まずはそうだっちね……」

 

 カイムの視線は、眠ったまま直立していたメイハオちゃんと、初めて作成した魔造人間であるアレフを交互に確認する。

 

 そして頬を裂くようないびつな笑みを浮かべながら俺へ鋭い視線を向け、こう問いかけてくる。

 

「このガキと、このメイド。 もしカイムが片方だけ生かしてやると言った場合、お前はどっちを選ぶ?」

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