第56話 ふて寝していた俺は、またしても一人にさせてもらえない
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ダンジョンの防衛機構はヴァブとゲンガーに任せればどうにかなるということが分かった。
カイムさんが侵入してきてしまったのは俺たちがイベント事に気を取られていたせいだろう。 これからは六階層の闘技場で戦闘演習する際も、数名のゲマトリアはダンジョンの防衛に務めてもらうことにする。
後は戦闘演習自体を数日に分けて行い、拘束時間を短くすればどうにかなる。
となると次に取り掛からないといけないのは、質の悪い冒険者を集めて修行感覚でダンジョンに挑んでる猛者たちにストレスを与えることだ。
本当だったら冒険者をかき集める事自体が嫌だが、上昇志向の真面目くんたちはこのままだとどんどん強くなってしまう。
テオスたちも未だに諦めずダンジョンに挑んでくるし……
「やること多すぎだな」
久々に最終階層の自室でやるべき事をまとめながらぐーたらしている。
ダンジョンの防衛はゲンガーに丸投げしたから暇な時間が増えたのだ。 だって、この俺の侵入を四階層で留めた策士だらね、ゲンガーくんが防衛に従事した方がこのダンジョンは安心さ。
的なことを言ったら睨まれたけど、事実なのだから仕方がない。
僅かな罪悪感を感じながらも自室のベットに大の字で寝っ転がり、くそ暇と言う私服の時間を満喫していると……
「会長、問題が発生しました」
遠慮がちなノックの音と共に、悲報が襲来した。
「どのくらい面倒な問題?」
「……そうですね、聖マリヤム教の大司祭が三人揃ったといえば、どのくらい面倒ですか?」
聖マリヤム教の大司祭。 いわゆるクソ面倒なギミック満載の戦闘を強いられる三名の大司祭達だ。
この大司祭共は悪魔から力を借りているらしく、魔法を使える悪魔様はマリヤム様そのものだ! とか言う意味のわからない供述をしているクレイジーボーイたち。
こいつらが信仰してるのはマリヤムと言うよりも、魔法という高次元の力なのだろう。
まあ、そんなクレイジーボーイたちなため、やることがぶっ飛んでいる。
例えば、罪人を殺せば殺すほど魔導の道へ近づくのだ! なんて言って貴族の屋敷に突撃し、中にいた貴族だけでなく使用人たちすら皆殺しにしてしまったり。
他にもあげればキリがないが、絶対規制に引っかかるだろ、と言わんばかりのクレイジーっぷりなので割愛。
あえて言うならネクストティメルズヒント! ホルマリン漬けとさらってきた人間たち。
ジュムフーリヤ帝国の王城も襲われたことがある。 その時は俺がこっそり助けてやったのだが、あのクソ王族共は俺の活躍を全てテオスの手柄にしやがった。
思い出したらイライラしてきた。 もう余計なことを考えるのはやめて寝よう。
「あのー、会長? とりあえず詳しくご説明したいので、入ってもよろしいでしょうか?」
そうは問屋が卸さないとばかりに、ノックの音を激しくするヴァブ。
「いやだ! 聞きたくない!」
「何を言っているのです! 聖マリヤム教の大司祭たちが来たら報告しろと自分で言ったのでしょう?」
「ゲンガーがどうにかしてくれるはずだ! 俺はひきこもりたいんだ! 引きこもりは絶対ジャスティス!」
「意味のわからない事を言わないでください! ちょっと、扉を領域固定で閉じないで下さい! メイハオさん、ちょっとこの扉凍らせてくれません?」
「メイハオ、頑張る!」
「冗談じゃない! 扉壊すのは引きこもり相手に絶対やっちゃいけないやつだろ! せめてバットで窓破壊して入ってこい! ラフメーカーになってみせろよ!」
「この部屋に窓なんてないでしょうが! いいから早く出てきてください! シェンルゥさんも呼んじゃいますからね!」
こうして、俺のジャスティスタイムは終焉を迎えるのであった。
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シェンルゥとメイハオちゃん同伴で引きずり出された俺は、渋々九階層の食堂に腰を下ろしている。
「えーっとですね、妖精小隊頭取、れっくんからの連絡によりますと、大司祭が宝州に入ったのは三時間前のことです」
このダンジョンの近くには、ヴァブが色々とやらかして商業都市として発展している宝州という街がある。 現在テオス達はその街に滞在し、この数ヶ月の間毎日のようにこのダンジョンに通って毎日のようにボコボコにされているわけなのだが、
「おそらく大司祭たちの狙いはテオスさん達だと予測できます。 テオスさんがこの街に滞在してからかなりの時間が経っていますので、聖マリヤム教が感づいてもおかしくはないでしょう」
「問題は、あの若人達が大司祭と対峙した際無事で住むかという問題じゃな?」
「ええ、会長の見立てが正しければ、おそらく今のテオスさんたちでは三人同時に相手は無理でしょう」
テオス達がどうなろうと関係はないのだが、問題はこのダンジョンにいるメイハオちゃんだ。
聖マリヤム教は、マリヤムと同じ氷色の髪、もしくは銀色の瞳をした人間を所構わずさらってしまう。
恐ろしいことに、さらう相手は髪の毛か瞳の色どちらかさえ合っていればいいらしく、両方マリヤムと同じ色をしている人は恐らくテオスくらいしかいなかっただろう。
にも関わらず今まで被害にあった人数は百を軽く超えている。
やつらがさらった人達は、マリヤムと同じ苦しみを味合わせるという名目のもと拷問まがいの仕打ちをしており。 残念なことに拷問のような事をしているのだがこれは拷問ではないため、謝ろうが貴重な情報を話そうが終わらない。
こいつらに捕まったら、何をどう頑張っても苦痛が終わらないという悲惨な目にあってしまう。
「テオスのトラウマバットエンドルートじゃないかこの展開」
「メイモンお兄ちゃん、大丈夫なの?」
膝の上を占領していたメイハオちゃんが、不安そうな表情で俺の顔を見上げてくる。 あれから何度もテオス達がボコボコにされてる風景をじーっと見ているメイハオちゃんだが、仙力を暴走させることはなくなっている。
とは言えやはり本物の兄に会えない上に、忘れられているのは寂しいのだろう。 その寂しさを紛らわすように俺にベタベタしているだけなのかも知れない。
え? もしかして俺って都合がいい男扱いされてる?
「のうヴァブ、大司祭とテオスとかいう若造はすでに接触しておるのか?」
「接触は恐らくまだかと、もし接触しそうになればれっくんたちに命じて時間稼ぎ程度なら叶うかと思いますが」
「いやいや、れっくん達が見つかったら俺らの存在がバレかねないから接触は無しの方向で行きたいな」
テオス達はどうなろうがどうでもいいが、あいつらがテオスに襲いかかるのがダンジョンの中という状況だけは絶対に阻止したい。
大司祭たちがテオスをさらうバットエンドの顛末を簡単に説明すると、物語を進めていくと大司祭と戦う場面が三回おとずれる。
そのすべてのタイミングで大司祭との戦いを拒否するルートが有るのだが、それを三回やってしまうと、ダンジョン探索中にランダムでポップする大司祭三人にはちあわせ、これに負けるとバットエンドルートとなる。
このダンジョン探索中というのが味噌で、この大司祭襲来は予測ができないのである。
そしてどこのダンジョンで出てくるかわからないことから、この大司祭たちはホラー扱いされることで有名。 追いかけてくるスピードも尋常じゃないからなお怖い。
なによりもこの大司祭三人を同時に相手をするのは無理ゲーだ。 どんなにプレイスキルが高いプレーヤーでも勝てるものじゃない。
実際、大司祭チャレンジという企画を動画サイトで見てみたが、めちゃめちゃうまいことで有名なプレーヤーですらクリアできなくてビービー泣いていたほどだ。
テオスのレベルとか時間軸とか諸々を考えると、そろそろそのバットエンドが発生する疑惑があるというか……
ここ最近テオス達ずっと宝州に滞在していたからな。 大司祭との戦いは強制キャンセルしていたと考えていい。
となるとダンジョン内でのランダムエンカウントという発生条件から推測するに、
「よし、テオス達がダンジョンに入ろうとしたら全力で拒否しよう」
ふと思った、なんで俺がテオスのバットエンド回避に奮戦しているのか?




