第53話 破竹の勢いで攻略していく俺は、複製体の企みを察知する
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管制室は深刻な空気で満たされていた。
「これは、やばいぞ」
「さすが会長です、ゲマトリアでは手も足も出ませんね」
ユーティが倒される光景を見ていた管制室のメンバーは言葉を失ってしまっていた。
テオスを余裕で倒してしまうユーティですら、遊ばれるように倒されてしまう。 こんな光景を見てしまっては、他のゲマトリア達は及び腰になってしまう。
五階層までティメルが攻めてきた場合、対応するのはヴァブだ。 ゲマトリアの力関係は番号や階層に左右されないため、はっきり言って戦闘特化に設定されていないヴァブはユーティよりも不甲斐ない結果を見せてしまう可能性がある。
モニターを眺めながら冷や汗をびっしりかいているゲンガーとヴァブ。 そんな二人はとある作戦に出ていた。
「れんれん、ちょっとテットに連絡お願いできるか?」
「なんて言えばいいんすか?」
「時間を稼げって伝えといてくれ」
「りょーかいしやした」
れんれんは精霊術を使用してテットに連絡を取る。 それを確認してからゲンガーはとあるゲマトリアに連絡を試みた。
「フェイト、聞こえるか?」
『木こりマックス』
「ちょっと管制室に来てくれ」
『ようかん』
精霊のいたずらのせいで全く話が噛み合ってない気がするが、ここら辺はニュアンスで納得するしかない。 れんれん以外にもレルマレブを呼ぶべきだったと後悔するゲンガー。
一回層でユーティをボコボコにしたティメルは、観光感覚でいるのだろうか? チンタラ歩きながら二階層までの階段を降りていき、二階層に広がる和風の城下町を目にして間抜けに大口を開けている。
二階層は侍のような容姿をしたテット中心に、同じく袴を纏った妖狐小隊が待ち受けている。 和風の様相が二階連続で続き、センチメンタルに浸りながら入っていくティメルの視線的に、妖狐小隊の変化はモロバレなのだろう。
これではコッファー達の二の舞いになりかねない、慌ててれんれんに連絡を取ってもらい、暗殺作戦を変更させようとするヴァブ。
妖狐小隊達はこれを受けて慌てて撤退、その様子を察知したのだろうか? 顎を撫でながら感心したように頷いているティメル。
ティメルが二階層の攻略に取り掛かったタイミングで、ゲンガーに呼ばれたフェイトは管制室に顔を出していた。
「機長の偽物、たぶんフェイトを呼んだよな?」
「ゲンガーだ、せっかく名前があるんだからそっちで呼んでくれ」
「うい」
不思議そうな表情で入ってきたフェイトに、ゲンガーは真剣な表情で告げる。
「この映像を見ろ、見ての通り俺のオリジナルはバケモノだ」
「うわぁ、妖狐小隊が遊ばれてる」
「今はテットに足止めを中心に立ち回れと指示してるが、このままじゃ一時間もしない内に二階層も攻略される」
苦笑いしながらティメルの戦いぶりを眺めるフェイトは、頬を引きつらせながら踵を返した。
「すまないゲンガーさん、当方は用事を思い出した」
「おいこら、自分より明らかに強い相手を前にすると弱腰になるのやめろ」
そそくさと逃げ出そうとしたフェイトの肩をがっしり掴み、般若面を浮かべるゲンガー。
「フェイトは戦うのは好き、だけどボコボコにされるのは楽しくない。 ノーモアボコボコ、ワンスモア丸焦げ」
「変な語録作るな、後いい加減丸焦げ欲は改めろ」
真顔のまま淡々とツッコミを入れるゲンガー相手に、フェイトはむっと口をとがらせてしまう。
しかしゲンガーは悪巧みを匂わせるいびつな笑みを浮かべたかと思うと、ちらりと四階層のモニターを横目に見た。
「フェイト、これからお前に秘策を授けてやる!」
そう言って、ゲンガーはフェイトに秘策を伝授し、二人はくつくつと不気味な笑みをこぼしていた。
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二階層の攻略には時間を要してしまったが、はっきり言って期待外れである。
「む、無念でござる」
「テットお前、なんか今回は逃げに徹してたよな?」
「そんな事はないでござるよ」
ユーティもそうだったが、俺を見た瞬間距離を取って逃げようとするゲマトリア達。 テットは初めから本気だったのだろう、初手で大量の武具精製からの間合い延長を放ってきた。
これに関してはいい判断だったと言えるだろう。
だが問題はその後だ、俺がその攻撃に対処している間に間髪入れずに二手目を仕掛ければ冷や汗をかいていたかもしれなかったのだが。
「おまえ、まさか時間稼ぎでも指示されてたのか?」
「うっ、そんなことはないでござりゃんせ」
「語尾変だぞ?」
明らかに動揺しながらそっぽを向いてしまうテット。 妖狐小隊も蝙蝠大隊の失敗を踏まえて奇襲作戦を改め、遠距離からちまちま攻撃してくる作戦にシフトチェンジしていたところを見るに、恐らくゲンガーのやつがれんれんあたりを使って遠隔指示を出しているのだろう。
となると、ここでテットに時間稼ぎさせたのは防衛システムの再構成のためと考えられる。
「三回層は捨てる気だな?」
「うっ、ななな何を言ってるでござるんか?」
「ござるんかは草」
テットは嘘がつけないらしい、わかり易すぎて逆に微笑ましく感じてしまう。
「まあいいや、事象回帰かけてやるから脱落者ルームでこの戦いの顛末でも見届けてろ」
「かたじけない」
脱落したゲマトリア達は最終階層に作った大部屋で待機してもらう手筈になっている。 勉強になると思うからこの戦いの中継を五階層の管制室同様見れるようにしてあげているため、暇にはならないとは思いたい。
とは言ってもテットとはガチで戦いたかったというのが本音だ。 たぶんゲマトリアの中では状況次第で一番強いのがテットだからである。
俺から言わせればパワーこそ正義、物質創造構成式で擬似筋肉を作成してのパワーでゴリ押しは単純だからこそ対処しづらいものがある。
だからどうやって対応しようかとウズウズしてたのに、つまらん命令のせいでテットは遠距離攻撃に特化して逃げ回る始末。
倒すのにもかなり時間がかかってしまった。
「まあいいや、とりあえずさっきの戦いで三十分も使っちゃったから、ここからはぱぱっと攻略するか」
俺のつぶやきを聞いて青ざめるテットを横目に、やはり俺の予測が合っていることを確信する。
案の定、三回層の近未来風の工場は、人型マキナカーテルが点々と配置されており、全員を倒すとなると明らかに時間が掛かる布陣になっていた。
こうなってくると、もはやオチがわかりやすい。 遠距離攻撃を駆使してマキナカーテル達を一体一体討伐していき、三回層の最奥へと向かうと、
「やっぱり、フェイトはお留守ですか」
「フェイト様は、貴方様を倒すための作戦行動に移っております」
「相変わらず機械的に話すんだね、一号さん」
絡繰中隊空将、一号。 フェイトの意味不明な命名のせいで三の倍数以外のマキナカーテル達は〇号と名前がつけられている。
一号はそんなマキナカーテル達をまとめるリーダー格で、話し方が機械のようにカタコトだ。 いつか暇があったらボカロの曲を歌ってみて欲しい。
どうでもいい話は抜きにして、ゲマトリア以外の相手では俺の相手など到底敵うわけがなく……
「や、やーらーれーたー」
「なんか、フェイトに似てきたな? 悪い影響受けてないか?」
ものの数秒で光の粒子に変わってしまう一号。 俺は久々のダンジョン攻略で気合が入っていたというのに、このていたらくではこのダンジョンの難易度は中の下と言ったところだろう。
はっきり言って期待外れ……っと思ったけど、これ作ったの俺なんだよな。
この難易度じゃ、カイムさんが散歩感覚で攻略するのも納得できると感じてしまい、一人でショックを受ける今日このごろ。
「まあ、まだ三層攻略したばっかりだからな。 おそらく、本命は四層なんだろ?」
気持ちを切り替え弾むような足取りで三回層の下り階段を降りていく。 きっと四層の攻略は、メイハオちゃんとの戦い以来久々に本気を出すことができるだろうと祈って!




