第44話 もの好き連中に頭を悩ませる俺は、面白そうなイベントに胸踊る
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ダンジョンの防衛機構は高まりつつある。
人が寄り付かないように罠の質はより性格が悪いものを作成、さらにはここにポップするモンスターは全員人型。 その上ドロップアイテムも落とさず光の粒子になって消える。
ダンジョン内に宝箱の類もなく、普通に考えればただただ面倒くさい上にモンスターが異常に強いだけの不気味すぎるダンジョンだ。
にも関わらず、馬鹿な冒険者は今日もこのダンジョンに忍び込んでくる。
「随分繁盛しておるのう」
「しておるのう!」
「おかしい、なんでコイツラはこのダンジョンにわざわざ足を運ぶ? モンスタードロップもなければ宝箱もないんだぞ? 罠は嫌がらせをパンパンに敷き詰めた極悪仕様にしてるっつーのに、どうしてこんなに足繁く通い続ける馬鹿がいる?」
頭を掻きながら管制室に移された画面を眺める。 現在ダンジョンに侵入している冒険者は三組。
しかも、肝試し感覚で来ている物好きな連中のせいなのか、なにげに腕が立つというところがまた腹立たしい。
いつものようにお膝を占領しているメイハオちゃんの頭越しに、最終間までたどり着いてしまった冒険者を見かけて小さくため息をついてしまった。
「テオス以外にも最終間までたどり着くやつが出てきたな」
「今回の守護者は誰かのう?」
「えーっとですね、確か……」
シェンルゥの質問を受け、俺の横で直立していたヴァブさんは手元の資料をペラペラめくる。
「あ、フェイトですね」
「総員、配置につけ」
フェイトの〝フェ〟を聞いた時点で早々に立ち上がった俺は、急いで四階層最終間まで向かう。 俺の予想だと、最終間まで三十秒以内にいかないと……
「あれは! 殺戮ツインテール! 逃げろお前ら! 丸焦げに……」
「出会い頭にファイアァァァァァ!」
冒険者たちが丸焦げになり、処置が間に合わなくなる。
「こんのバカタレが! 火力抑えろって何度も言ってるだろ!」
「機長、聞いて驚け。 さっきの戦いは最高記録! 出会って五秒で鎮圧」
「何勝手に黒焦げRTA始めてんだよ!」
慌てて黒焦げになった冒険者たちに事象回帰をかける俺。 こういう事があるので、俺は毎日のように管制室に入り浸らなければならない。
「フェイトの設定を書き直すか? でもせっかく産んだ、我が子同然のゲマトリアを後から改造するのはマジで嫌だからなぁ〜」
「よせやい機長。 照れるじゃね〜か」
「よし、フェイトは例外だ。 今すぐオペを始めよう」
「機長、この世には冗談というものがあるんだぜ? 下段でも、中段でもない、冗談というものがね」
「メイハオ、寒い」
いつの間にか俺の背中にコアラのようにしがみついていたメイハオちゃんが、目をジトーっとさせながらフェイトを見ている。 こんな幼女にすら憐れまれるなんて、悲しいギャグセンスだなフェイトは。
「ふふ、メイハオちゃん。 寒いのは、君の心が冷たいから、だぜ?」
「こいつ淡々とボケるけどさ、こんな設定した覚えないんだけど?」
ちなみに、口下手でお茶目という概念は設定したが、どうやらこのお茶目という概念はとても悪い仕事をしているようだ。 毎日のようにつまらないぎゃギャグを淡々とした口調で聞かされ、ものすごく頭が痛くなりそうである。
「とは言え、各階層で護衛についている魔獣たちの対応が少々お粗末ですね」
遅れて駆けつけていたヴァブさんは、俺が事象回帰をかけている冒険者たちをじっと見ながらメガネをクイッとする。
「会長、わたしに一つ提案があるのですが」
「それってどのくらいすごい提案?」
前科が二度ほどあるヴァブの提案は、しっかりと吟味しなければ面倒事が増える可能性がある。
その雰囲気を感じ取ってしまったのか、ヴァブさんはスーッと目を逸らしながらごにょごにょと提案を口にし始めた。
「えーっと、そのですね。 最近人型魔獣たちのダンジョン守護がおざなりになってきているので、その……何というか。 ゲマトリア対抗、魔獣集団戦闘演習会を開こうかと思いまして……」
名前が長ったらしくてよく分からなかったが。 つまりはゲマトリアがそれぞれ率いている魔獣達を教育および指揮して、集団戦闘演習をして互いに高め合おうという提案だろうか?
「なるほど、面白そうだから許可します!」
「童、おぬしただ暇つぶしをしたいだけであろう?」
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「レディーーース、エーーーンド、ジェントルメーン! ようこそお越しいただきました!」
急遽ペペに依頼して、六層に大型闘技場を作成してもらった。
コロッセオのような形にしたこの闘技場の中央部には、ペペと俺が協力して創り出した幻影創造構成式により、ランダムで十二種類の戦闘ステージが展開される。
今回のステージは樹海ステージ。 幻影創造構成式は触れることができる実像幻影と、視覚を惑わす虚像幻影の二種類がある。
この二つを上手く折り合わせればあら不思議、岩で敷き詰められている天井には真昼の空を投影し、戦いの舞台になる闘技場は樹海のような様相に大変身。
これからこの樹海エリアの闘技場で、人型魔獣達の戦闘演習会が開かれるのである。
「それでは皆さん! 第一回、繭居迷宮最強部隊選抜トーナメントの開催です! 拍手喝采で選手たちを迎え入れましょう!」
司会進行の人型レルマレブ。 妖精小隊副頭取のれんれんが、大げさな動きで入場口を指し示す。
人型魔獣の観衆たちがパチパチと形式的な拍手を送る中、樹海ステージに現れたのは二組の人型魔獣隊。
「ひがぁ〜し〜、大鬼中隊、鬼のぉ〜うぅ〜みぃ〜〜〜」
「誰だれんれんに変な紹介の仕方を教えたのは」
「多分ヴェートじゃろうな」
「じゃろうな!」
お膝の上で楽しそうにしているメイハオちゃん。 暇つぶしにこの大会の見物に来たが、果たしてこの光景は幼女に見せていいものなのか疑問である。
とはいえ仲間はずれにしたら泣かれるため、渋々今回も膝の上にメイハオちゃんを装備中である。
「にぃ〜しぃ〜、妖狐小隊、狐のぉ〜さぁ〜とぉ〜〜〜」
妖狐小隊、サアラブが人型になった姿。 狐の耳にもふもふの尻尾、袴を着込んで腰に日本刀をさした獣耳娘たちが堂々とした足取りで会場に入ってくる。
このダンジョンで三部隊しかいない、レアリティUR(俺がかってにランク付け)の妖狐小隊は、テットが率いる部隊である。
相手は屈強な鎧武者のような見た目をした大鬼中隊、ワシュハシュが人型になった脳筋チームだ。
レアリティ的にはサアラブのほうが上だが、ワシュハシュは初期からこのダンジョンにいる古株だ。
最近俺やシェンルゥにパシられてばかりの大鬼中隊だが、しっかり毎日稽古はつけていたようで、どう転ぶのか結果は読めない。
互いのチームの代表、大鬼中隊総隊長の鬼蔵と、妖狐小隊斎王の壱姫。
体格差は歴然で、身長三メーター近い鬼蔵を見上げる壱姫は、クスクスと上品に笑いながら口元を扇子で隠す。
「おやおや、随分とむさ苦しいお相手ですこと」
「何だべかのこいけすかねーおなごは! けちょんけちょんにしてやっから覚悟するべさ!」
ムキーッと鼻息を荒げる鬼蔵を、一笑に付す壱姫。
個人的に、見た目は壱姫たち妖狐小隊のほうが好きだ。 袴に狐耳、極めつけは腰にさした日本刀。
テットは空気は読めないがセンスがいい。 ちゃっかり壱姫が扇子を持っているのもポイントが高い、センスだけに。
「お兄ちゃん、なんだかすごく寒くなってきた気がする」
「エスパーなのかな?」
脳内ギャグに反応するメイハオちゃんが少し怖い。
それはともかく、この戦いのルールは人型魔獣たちだけで戦闘演習をするというもの、倒されても光の粒子になって、魔力を消費すればまた再召喚できるから互いに遠慮なしの戦いになる。
それぞれの隊を率いるゲマトリアは監督として会場の外から声掛けしかできない。 なぜかシェンルゥは自分の部隊の戦いにも関わらず、観客席でのんびりしている俺の横でふむふむ唸っているが、指示を送りにいかなくて大丈夫なのだろうか?
そんな事を思いながら、横目にシェンルゥの様子を見守っていると……
「案ずるでない童よ。 妾がしつけた部隊じゃぞ? そう簡単にやられはせん」
なぜだろう。 悔しいが、ちょっとばかしわくわくしてくる俺であった。




