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バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
始めようダンジョンDIY

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34/89

第34話 部下の戦いぶりにドン引きしていた俺は、本当の脅威に気が付かない

 ❖

「……えっぐ」

 

 自分で設定しておいてなんだが、テットは相変わらずエグい戦い方をする。

 

 始めは物質創造構成式で擬似筋肉を作成。 擬似的に増幅させたその腕力やパワーで、接近戦を繰り広げ敵を圧倒。

 

 そうして相手に接近戦専門で戦う魔術師だと勘違いさせたところで遠距離攻撃を誘う。

 

 ゲーム時代にわりかし使われていたテクニックだ。

 

 相手が遠距離からチクチク攻めてきたところで大規模な土壁で敵の視界を遮断。 壁の裏から間合延長などの魔術を使用して土壁ごと裏から串刺し。

 

 土壁は割と脆い防御魔術のため、武具精製によって創り出した武器でも余裕で貫通させることができる。

 

 ゲマトリア達は内蔵魔力が多いため、テットの場合は武具精製による大量の武具精製が可能だ。

 

 とは言え一度の武具精製で数十本の刀を精製し、その刀すべての間合いを延長させると言うのは、流石にやりすぎな気がする。

 

 壁の裏から本体を狙おうと回り込んでいたアイシェちゃん以外、見事に刀の餌食になっている。

 

 刀の雨ならぬ刀の林だ。 これは流石にマズイ気がすると思ったが……

 

「呵呵呵! 安心するが良い! 全員峰打ちでござる!」

 

 恐る恐るテオスくん達が固まっていた場所に視線を送ってみると、面白い格好で固まっている三人の体中をスレスレで刀身が伸びている。

 

 峰打ちとは言わない気がするが、テットは嬉しそうに鼻をふんすと鳴らしているのでとりあえず黙っとく。

 

 唖然としているアイシェちゃんに向け、テットは肩に担いでいた刀を向けながらニッコリを笑う。

 

「それにしても、そなたの魔術はなかなかに優れているな! まろに傷を与える可能性があった攻撃はそなたの弓矢以外なかったでござろう」

 

「そ、それはどうも」

 

「ともあれ、その体たらくではまろは愚か、ユーティ殿やザイン殿にも勝てまい。 フェイト殿に限っては手加減を知らん。 死にたくないのならばこのダンジョンには近づかないほうがいいでござるよ」

 

 ジリジリと後ずさっていくアイシェちゃんに向け、テットは余裕綽々とした態度で言葉をかける。

 

 距離を取りながらアイシェちゃんは、最初の一撃で壁に叩きつけられていたエラムくんの無事を横目に確認。 土壁の裏へ回り込む際、エラムくんの救出も考えて立ち位置調整していたらしい。

 

 あの中で一番冷静かつ戦い方と判断力が非常に素晴らしい。 今後はテオスくんよりもアイシェちゃんを要注意したほうがいいかも知れない。

 

 まあ、これにこりたら俺を討伐しようとこのダンジョンに来るのはやめてほしいというのが本音だが。

 

 テットが生成した武具をすべて消去し、天井に浮遊していた無数の刀が霧のように消えていく。

 

 未だ青ざめた表情のままだが、体を自由に動かせるようになったテオスくん達は、テットから目を離さないようにジリジリと後退していく。 アイシェちゃんも気を失っているエラムくんを肩にかつぎ、テオスくんたちの方へ小走りで駆け寄っていった。

 

 全員撤退する気満々と言った雰囲気だ。 一時はどうなることかと思ったが、これでテオスくん達は大人しくこのダンジョンから去ってくれるだろう。

 

 ホッと胸をなでおろしながら管制室に戻ろうとしたのだが、突然肌寒くなって来たためブルリと身震いする。

 

 ダンジョン内なのに突然気温が下がるとは何事だろうか? そんな風に思う間もなく、肌寒さが増していき流石に異変に気がつく。

 

 何事かと思いテオスくんたちを凝視しようかと思った瞬間、俺の真横を何者かが通り過ぎていった。

 

 この瞬間、突然感じた肌寒さの理由と、テオスくんたちがこのダンジョンに来たという事実が俺の想定よりも面倒な事態だったということにようやく気がついてしまう。

 

 なぜ、俺は忘れていたのだろうか。

 

「おにいちゃん!」

 

 テオスの記憶はマリヤムによって消去されている。 マリヤムは魔導士だから記憶に干渉することが可能だったからだ。

 

 だが仙術は放出か強化しかできない。 魔術のように概念や記憶に干渉できないため、仙術をどう使っても記憶を消すことはできない。

 

 だからこの子は冷凍保存されていたのだ。 平和になった世界で目を覚ますことを祈ってなのか、それとも未来へ飛ばされたであろう兄に会うためなのかは知らない。

 

 ただ一つ、確かなことは・・・

 

「メイモンお兄ちゃん! メイハオだよ! ずーっとお兄ちゃんに会いたかったんだよ!」

 

「誰だい? ……君は」

 

 今は、この二人が合うべきではなかったということだ。

 

「……え?」

 

 先程まで満面の笑みで駆けていったメイハオちゃんが、テオスくんの一言を聞いて目を見広げ、ピタリと動きを止めてしまう。

 

「テオス? あなた妹とかいたの?」

 

「いいや、僕は拾われる前の記憶がないからなんとも言えないけど、誰かと勘違いしてるんじゃないか?」

 

「勘違い? 違うもん、メイハオちゃんと分かるもん。 お兄ちゃんは、お兄ちゃんしかいないもん!」

 

 涙混じりの悲鳴が室内に響く。

 

 3000年の眠りから解き放たれ、大好きな家族に会えたというのに、その家族に他人扱いされる苦しさを、俺は考慮してあげられなかった。

 

 ヴァブが慌てて俺を呼びに来た理由。 それはきっとこの事態を危惧したからだ。

 

 テオスが来た時点で気がつくべきだった。 注意するべきだった。

 

 メイハオちゃんが、テオスくんを見つけてしまうという最悪の事態に。

 

 肌を刺すようなこの冷気が、メイハオちゃんの苦しさを真摯に伝えてくる。 一瞬にして表皮が凍結しそうなこの気温が、メイハオちゃんの感情を明らかにしている。

 

「っクソが!」

 

 今頃失態を嘆いても仕方がない。 今はとりあえず、メイハオちゃんを止めなければならない。

 

 このまま放置すればメイハオちゃんはショックで力を暴走させ、ここは人が住めない極寒のダンジョンになってしまう。

 

「何だこの冷気は!」

 

「テオス! このままじゃエラムが凍死しちゃう!」

 

「お兄様! 起きて下さいエラムお兄様!」

 

 兄を心配するパリサちゃんを見て、メイハオちゃんは目を見開いたままボロボロと涙を流す。

 

 まるで、遠い昔に感じていた幸せを、遠目に眺めているかのような……虚しそうな瞳で。

 

「どうして……メイモンお兄ちゃん」

 

「メイモンって誰だい? そんなことより君、この冷気を沈めてくれ!」

 

 テオスが必死に声を上げるが、逆効果。 冷気はさらに激しさを増し、メイハオちゃん中心に吹雪が吹き荒れる。

 

 このままではここにいる全員が凍死する。

 

「テット! そいつらを土壁で囲え!」

 

「お、お、お? お殿様? なぜこちらに?」

 

「いいから早くしろ!」

 

「はは! 直ちに!」

 

 飛び出した俺を見て大騒ぎを始めるテオスたちを、慌てて土壁で囲うテット。

 

「今動けるゲマトリアは全員集合しろ! メイハオちゃんを止めるぞ!」

 

 大声を上げると、俺のもとに推参したのは三人のゲマトリア。

 

 一階層の守護を担当するユーティ。

 

 三階層を担当するフェイト。

 

 最終回層を担当するアレフ。

 

「主、これは一体……」

 

「うわわ、機長。 流石にメイハオちゃんが相手となると、当方には荷が重い」

 

「ご命令に従い推参いたしました御主人様。 ご指示を」

 

 ペペは宝州の監視中だから分かる。 ギメルはまぁ、なんで来ないんだろうか?

 

 いつもみたいにダンジョン内で道に迷ったか、急いで駆けつけようとして盛大にずっこけたか?

 

 転移陣を間違えた説が濃厚な気がする。 考えれば理由は大量に浮かんでしまうところがギメルの残念なところだ。

 

 だがザインやヴァブ、ヴェートが来ていないのはなぜだ?

 

 集まったメンバーを横目に、眉をひしゃげていた俺へ、アレフはお辞儀した姿勢のままゲマトリアの現状を説明してくれた。

 

「シェンルゥ様に遊んでもらおうと五階層の監視室にメイハオ様が入室した際、侵入者のテオス・メルレインを目視してしまいました。 その後は暴走状態になったメイハオ様をヴァブ、シェンルゥ様、ヴェートが三人がかりで止めに入りましたが力及ばず。 低体温症に陥ったため、現在はダレットの集中治療を受けております」

 

 聞くまでもなく来れないメンバーの事を話してくれたということは、俺の聞きたいことを察してくれたのだろう。

 

 さすが初代ゲマトリアだ。 メイドの格好をさせたからもっとラブリーな性格にしようか迷ったが、変に改造しないでそのままの設定で残しておいてよかった。

 

 それにしても……三人がかりで止められなかったわけか。 そりゃそうだ。

 

 俺ですら逃げ回ってようやく無力化できたほどの相手なのだから。

 

「ギメルとザインは?」

 

「シェンルゥ様の呼びかけに応じて推参いたしましたが、力及ばず。 現在は最初の三名と同じくダレットの治癒を受けております」

 

 つまり最終回層で畑の世話をしていたアレフと、五階層より上にいたゲマトリアしかすぐに動けるメンバーがいないわけだ。

 

 アレフは基本的に俺が命じたこと以外はしない。 だからどんな非常時でも俺が呼ばない限り永遠に作物の世話をし続ける子だ。

 

 シェンルゥの呼び掛けに応じなかったのはそのせいだろう。

 

 なんならアレフは、三時間働いたら一時間休めと命じないと永遠に働き続けてしまうほど融通が利かない。

 

「仕方がねえ。 俺がメイハオちゃんを止めるから、ユーティはサポート。 フェイトは囮だ! 正面から全力火力でぶちかませ!」

 

「委細承知」

 

「機長! それは流石に無茶振りが過ぎる!」

 

「フェイト、御主人様の命は絶対。 すぐさま動きなさい」

 

 涙目のフェイトを叱りつけるアレフに礼を言って、腹をくくって魔術大全を開くのであった。

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 ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

 僭越ながら、少しでも面白いなとか、続きが気になると感じてくださった方は、ぜひブクマや☆評価などをよろしくお願いいたします!


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 ・作品に関する裏話だったりとか

 ・執筆する上で考えている事

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