第31話 不良妖精を召喚してしまった俺は、部下の教育方針に鳥肌を立てる
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魔獣ドラフト会議が終了したことで、正式に宝州へ潜伏させる人型魔獣のラインナップが決まった。
「それじゃあれっくん達! しっかりとお仕事してくるのよ!」
「ったく、しゃーねーな!」
「こられっくん! そういう可愛くない言葉を使う子は、お尻ペンペンしちゃいますからね!」
「が、頑張ってくるぜ……おふくろ!」
「よしよし、いい子ですね! 旦那様のためにしっかりと情報を集めてきなさいね!」
現在の俺は12才の体つきになっているため身長はさほど高くない。 その俺よりも身長が低いレルマレブたちは小学生にしか見えないのだが、なにぶん悪戯妖精という呼び方をされているせいか、頭の良さは魔獣の中でも群を抜いている。
いたずら小僧はずる賢さにおいては他の追随を許さない。 例に漏れずレルマレブたちもなにをされれば怒られて、なにをどうすればいたずらしたのが自分たちだとバレないのか。
先を見据えた効率的な立ち回りを得意としているようだ。
まあ、ヴェートの前ではなにをしようと悪いことはバレ、最初の数週間は毎日のようにお尻をパンパンに腫れさせていたようだが……
宝州へ向かう妖精小隊のメンバーを穏やかな笑顔で見送るヴェート。 その隣で俺はすっかり牙を抜かれてしまったレルマレブたちを苦笑いしながら観察していた。
レルマレブはランク的にはユーアールの部類だったため、召喚できたのは12体。
このダンジョンの魔獣の中で、今のところユーアールに分類されてるのはザイン率いる白虎小隊とヴェート率いる妖精小隊だけだ。
今回宝州へ向かったのは12体中6体。 部隊を二つに分けたらしい。
なんでも、精霊術の中には遠くの味方と会話ができるという画期的な技があるらしいので、情報収集班と情報整理班の二つに部隊を分けて行動に移すらしい。
「さて、これで宝州の情報収集に関してはどうにかなるであろうな」
「まあ、レルマレブ達はすっかり躾けられてたみたいだからな」
「ヴェートママは面倒見がいいからのう」
不良を改心させる熱血ママの称号を与えたいレベルの働きだった。 昭和の雰囲気を感じるしつけ方法だったのはココだけの話だが。
レルマレブたちを見送ったので、暇つぶしに罠の研究でもしようかと最終回層へ向かおうとする俺のもとに、一人のゲマトリアが駆け寄ってくる。
「会長、ご報告があります!」
「どうしたんだヴァブさん、ペペから連絡でもあったのか?」
「ああ、はい。 どうやら宝州に聖マリヤム教の構成員が潜んでいたらしく、テオスさん率いるパーティーメンバーは連日襲われているようです」
「え? 大丈夫なの? なんでもっと早く報告しないのさ!」
「まあ、テオスさんのパーティーメンバーはそれぞれかなり優秀で、襲いかかる構成員たちを連日撃退していますから」
あっけらかんとした口調で報告してくるヴァブさん。 そうだった、テオス達はああ見えてレベル50超えと推測できる魔術師たちだ。
聖マリヤム教は大司教がずば抜けて強いだけで、構成員たちは大して強くない。 なんなら、構成員程度なら国家魔術師や宮廷魔術師程度でも簡単に倒すことができるだろう。
テオスがぶっ倒されたとかさらわれたとか言った事態に陥るまでは、特段報告するような重要事項にはならないだろう。
そう納得して最終回層へ帰ろうとしたところで、ヴァブさんは慌てて俺の進行経路に体を滑り込ませてくる。
「ちょっと会長、一人で納得しないで下さい。 報告があると言ったではないですか!」
「ん、ああそうだったね。 でもテオスくん達は聖マリヤム教撃退してるんでしょ? もしかしてダンジョン内に聖マリヤム教構成員が入ったのか!」
「聖マリヤム教の構成員はこのダンジョンに入ってませんよ! それよりも対処が面倒というか、なんと言うか……」
ごもついてしまうヴァブさん。 報告しづらいけど報告しないといけないような面倒な事態が発生しているのだろう。
「もしかして面倒事か?」
「はい、かなり面倒なことになると推測できます。 個人的には聖マリヤム教構成員がダンジョンに侵入してくれた方が対処は楽だったかと? なんなら、聖マリヤム教の構成員なら、秘密裏に処分したりして真実を闇の底に隠す事もできたかも知れませんからね」
サラッと物騒なことを呟いているヴァブさんに細目を送りながらも、とりあえず状況を見てほしいと促されたため、五層にある監視室へと向かうことになったのだった。
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「エラム! サポート頼む!」
「任せとけ!」
三回層、竪穴式だった廃ダンジョンはいつの間にかその内装に大きな変化を施しており、洞窟らしさは皆無になっている。
そんな階層内に、五人組の冒険者たちが挑んでいる。
「何なのここの魔物たち! ほとんど全部人型になってるし、言語も話してるわよ!」
「ティメルくんはシャプール家の血を引いているからね、おそらく魔物の生体実験でもして新種の魔物を創り出してしまったのだろう!」
「未成年だからとかいう理由で国外追放なんかにしないで、父親たちと一緒に斬首にしちゃってればこんな事にならなかったのに!」
カナリア色の髪を揺らめかせ、ぶーぶー文句を言いながら混合構成式の業火砲弾を使用し、人型の機械人形を吹き飛ばすラーニア。
テオス率いる特殊行動部隊は、連日の治癒魔術で回復したテオスを筆頭に、ティメルが根城にしているというダンジョン攻略に望んでいた。
前衛のテオスとエラムが敵の注意を引き、中衛のパリサが二人を補助。 トドメは後衛のラーニア、またはテオスの幼馴染であるアイシェが下すという流れでパーティーは動いている。
基本的に雑魚敵相手なら前衛二人だけで倒すことが可能だが、第三層に入ってからは前衛二人だけでは対応しきれず、後衛の高火力アタッカーであるアイシェやラーニアが度々高威力の魔術を使用するハメになっていた。
業火砲弾を喰らった機械人形は、数メーター吹き飛ばされ、背後に合ったベルトコンベアにめり込み、光の粒子に変わっていく。
その様子を見てホッと息を整えるテオスだったが、隣に立っていたエラムは階層内を総覧し、顔を引き攣らせていた。
「それにしても、この階層は随分物騒な見た目なんだな」
「なにかの生産工場なんだろうか? その割には機械は稼働してないように見えるけど」
階層内はまるで巨大工場のような内装になっており、この時代にはふさわしくない仰々しい近未来風の機械がそこら中に配置されている。
ダンジョン開拓担当のゲマトリア、ペペによる幻影創造構成式をフル活用した大規模リフォームが完了している第一層〜第六層は、それぞれの階層を担当するゲマトリアの趣味嗜好によって内装が変化している。
ここ三層を担当するのはフェイトというメカスーツを纏ったゲマトリアだ。 彼女はこういった見た目のステージを所望したらしく、現在三層攻略中のテオスたちを高台から見下ろし瞳を輝かせている。
「骨のありそうな、獲物!」
「フェイト殿。 くれぐれも出陣は控えられよ」
その階層守護を担当するフェイトは、首輪をつけられてしまっており、その首輪から伸びたリードは排気用の太いパイプに繋がれている。
まるで猛犬を手懐ける強行策だ。
隣で腰掛けているユーティは、敵を見ると誰彼構わず高火力の火炎放射をブッパなってしまう猛犬を見張るため三回層まで降りている。
基本的に最近のダンジョン防衛方法は一貫しており、階層守護を任されているゲマトリア達は直接手を下さず、冒険者たちが四層の最終間までたどり着いた際、手空きのゲマトリアが一人で対応するという方針に変わっている。
そうでもしないと冒険者たちが事故死したり、暗殺者たちが消息不明になる可能性があるとヴァブが危険視したためだ。
それでなくてもフェイトは手加減という言葉を知らない。 先日黒焦げにした冒険者も、創造魔術に高い耐性を持っていたおかげで消し炭にならずにすんだが、普通の冒険者なら灰すら残さず焼失してしまっていただろう。
「ふむ、絡繰中隊でも押されているか。 存外、腕が立つのだなあの御仁達は」
「ユーティ、当方が出陣したほうがいい! きっとあの冒険者たちはゲマトリアでないと対応できない!」
「安心されよ、四層を守護しているのは白虎小隊だ。 奴らならそう簡単に突破できまい」




