第24話 幼女の秘密を察した俺は、憂鬱にかられて不貞腐れる
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——いいかいメイハオ、お父さんが必ず迎えに来るから、ここでお父さんたちの帰りを待っていてくれ。
それは、突然両親と分かれることになってしまったとある少女の記憶。
——いたぞ! あの仙人たちは俺達人間を滅ぼそうとする悪魔の使いだ!
——悪魔どもと同じ奇跡を使うバケモノなど、この世界には必要ない!
——人間界を滅ぼすために、悪魔界から遣わされたバケモノ共!
平和な生活は突如として終止符を打つことになり。 大好きな家族と引き裂かれてしまった少女の苦悩。
——美夢は私が連れて逃げるわ? だからあなたは美好をお願い
——メイハオ、少しの間お別れだな。 無事に逃げることができたら、また一緒に遊ぼうな
——こっちだメイハオ早く逃げろ! お父さんが指示するまで、絶対に仙法は使うなよ!
仙人の血を濃く受け継いだ少女の、心を引き裂くような辛い過去。
「……うう、ぱぱ……捨てないで? メイハオを置いていかないで!」
「あらあらどうしたのメイハオちゃん? 怖い夢でも見たのかしら」
少女は目を覚ますと、優しげな微笑みを浮かべながら髪を梳くように撫でてくれる女性が目に映る。
赤紫の髪をゆるく括った母性溢れる笑顔を浮かべた女性は、日課の夕食の仕組みを終えたのか、編み物をして時間を潰していた。
手芸が得意なその女性は、この廃ダンジョンに住む住人たちの衣服を作っており、食事を作る合間に様々な種類の衣服を作っている。
「ヴェートママは、どこにも行かない?」
「うーんどうかしら、旦那様の命とあればママもどこかに行かないといけなくなるかも知れないわね?」
「いや、あんなやつ、放って置いて」
少女は、涙を浮かべながら女性の腹部にしがみつくが、その女性はそんな少女を見て困ったように笑いながら、
「そんなこと言ってはダメよメイハオちゃん? ママは旦那様に作っていただいた魔造人間なんだから。 旦那様の命とあればこの身を犠牲にするのもいとわないんだから」
「いや! いやーーー! あんなやつのためにママがいなくなるなら、メイハオがあんなやつやっつけてやる!」
涙を浮かべながらぎゅっとヴェートにしがみつく少女だったが、女性はそんな少女を少々乱暴な手つきで突き放す。
「メイハオちゃん? 我々ゲマトリア達の前で、旦那様に危害を加えようとするだなんて、冗談でも言っちゃダメよ?」
冷たく、突き放すような口調で立ち上がる女性を、少女は涙を蓄えた瞳で見上げる。
「あなたが旦那様に危害を加えるっていうのなら、あなたは我々の敵になってしまうんだからね?」
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うーむ困ったことになった。
ヴェートになにが起きたのか聞いたところ、俺を倒すと宣言したメイハオちゃんを、ムキになって説教してしまったと自白された。
ぶっちゃけた話俺のために怒ってくれるのは非常に嬉しい。 だって今まで人間どもにないがしろにされてきたのだから。
とは言っても、メイハオちゃんの気持ちも何となく分かる。
俺はこのゲームを何度もクリアしているから、メイハオちゃんがマジフロ主人公でもあるテオス君の記憶に出てくることを知っているのだ。
三千年前、魔導士や仙人の強大過ぎる力を恐れた人間たちは、団結して彼女たちを迫害するために奮起した。
だがマリヤムもメイファンも、人を殺すという選択肢が取れず、ただただ逃げることしかできなかったのだ。
反撃されないことをいいことに、人々は卑劣な手練手管で二人を追い詰めた。 あろうことか夫婦が育てていた二人の子供を人質にしようとしたのだ。
そこで更なる事件が発生した。
さらわれそうになった二人の子供は、魔導士の血を強く受け継いだ兄と、仙人の血を強く受け継いだ妹だった。
命の危機を危惧した二人は、正当防衛のために力を暴走させてしまう。
二人の力が暴走したことで、街が一つ焼け野原になった。
これで過激派な人間たちは更なる暴挙に出る。
その後のことは悲惨以外の何物でもない。 マリヤムとメイファンは、それぞれ子どもを連れてひたすらに逃げ、人間たちに殺されそうになっても反撃せず、ただただひたすらに逃げ続けた。
そうして、逃げ場がなくなった二人は、それぞれの方法で子どもを守るために一世一代の力を使用する。
ゲームをしていた俺が知っているのは、マリヤムが息子のメイモンにかけた記憶消去と未来送還という固有魔法。
この魔法で記憶を失い、未来へと飛ばされたメイモンは、みずからの名前すら忘れ、荒野を一人でさまようことになる。
そうして未来の一般市民に拾われたメイモンは、テオスという新たな名をつけられ、なんの因果か彼は魔術師としての道を歩もうとしてしまうのだ。
マジシャンズ・フロンティアは、未来に飛ばされ記憶を失った主人公が魔導士になるまでの話だ。
彼のストーリーの中で、記憶を復活させる一世一代のイベントがある。 そのイベントの中に出てきた妹、メイハオちゃんはゲーム時代名前すら知らされていないシークレットキャラだった。
だからファンの間ではあの子は何者だと話題になり、華ノ国やジュムフーリヤ帝国の禁書庫を隅から隅まで調べ尽くすプレイヤーが続出したが、分かったのはマリヤムとメイファンの子どもが二人いたという事実のみ。
だから俺達はメイハオを連れて逃げたメイファンは、残念なことに娘もろとも殺されてしまったのだと思っていた。
だがしかし、この世界に転生した俺が、見つけてしまったのだ。 謎に包まれていたはずの妹、メイハオちゃんを。
しかも、彼女を連れて逃げたのは仙人のメイファンだ。 記憶消去の魔法も使えなければ未来送還と言った魔法も使えない。
彼は仙法しか使えなかったのだ。 だから、誰も近づけないよう特殊な遺跡を作り、その中に娘を冷凍保存した。
なにが目的だったのかは知らないが、恐らく仙人や魔導士の迫害が無くなった優しい未来で目を覚まし、心優しい誰かがこの子を拾ってくれるであろうことを祈っていたのだろう。
「はぁ〜〜〜〜〜」
「盛大なため息じゃのう」
「そりゃーため息の一つもつきたくなるわ」
俺からヴェートを説得してメイハオちゃんとヴェートは仲直りした。 とは言っても互いに不満は残っているのだろう。
夕食の席はいつも一緒なのだが、ものすんごくギクシャクした空気になっていた。
いつもはぅんまいぅんまいと飯にがっつくシェンルゥすら気を使って静かにもそもそ食べているほどだったのだから。 相変わらず口の周りはカレーまみれになっていたが。
今日のカレーも美味かったなぁ……
「これは早々にメイハオちゃんの預け先を決めたほうが良さげだな」
「あの娘を世に放出して本当に良いのか?」
「とは言ってもなぁ。 ここで匿ってたら絶対に、絶対に面倒なことになるぞ!」
「意気地なしじゃのう」
「好きに罵れ畜生が」
やけくそ気味にぼやきながら手作りソファーに体を投げる。 このソファーの土台は粘土を固めて作ったものだが、カバーとクッションはヴェートが暇な時間に編み編みしたものだ。
ヴェートは料理以外に手芸も担当している。 俺が着ている洋服も何着かヴェートに作ってもらった。
ふかふかなクッションに眠気を誘われていると、俺に近づく気配を察知する。 半分寝ながらも視線をそちらに送ると、
「しょうがないから、遊んであげてもいいよ」
「随分上からですねメイハオさんや。 つーかもう夜や、良い子は寝る時間だからな?」
「じゃあ、おねんねするまで、子守唄……歌ってあげる」
多分この子、俺と仲良くなればヴェートに褒めて貰えると思っているのか?
未だにギクシャクしてるのを肌で感じ取っているのだろう、子供とは意外と空気が読めるものなのだ。
まぁ、何を企んでるのかは知らないが、嫌そうな顔をしながらもメイハオちゃんは俺と仲良くしようと気を遣い始めたわけだから、仕方がないから相手をしてあげようと思い、のっそりと立ち上がる俺であった。




