表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/6

第2話 国外追放された俺は、早速命の危機に襲われる

 ❖

 ジュムフーリヤ帝国国境。 国境には関所があり、本来なら他国からの入国者をここで検問するわけなのだが。

 

「おら極悪貴族、いいや爵位は剥奪されてるからこいつはただのクズか」

 

 蹴り飛ばされ、国境の外へとふっとばされる俺。 もう泣きそうである。

 

 俺が追放されたのは、ジュムフーリヤ帝国と隣接した大国、華ノ国である。

 

 華ノ国ではジュムフーリヤ帝国とは違い、仙術という力が広まっている。 仙術とは地脈の力を利用して奇跡を起こすもので、主に身体能力の強化や自然の力を利用した奇跡を起こすもの。

 

 これら仙術を使う術師は仙術師と呼称されている。 いわば、ジュムフーリヤ帝国で言うところの魔術師のようなもの。

 

 魔術師と仙術師の大きな違いは、地脈の力を利用するか体内の魔力を利用するかの違いだろう。

 

 それぞれにメリットもあればデメリットもあるわけだが、それでも俺が学んだ魔術は仙術にも引けを取らない。

 

 そもそも、ジュムフーリヤ帝国では仙術というものを毛嫌いする傾向にある。 その理由としては、かつて英雄と言われた伝説の魔導士マリヤムが、華ノ国の仙人と駆け落ちしたと言うのが理由に上げられるのだが……

 

 そんな事をぼんやり考えながら歩いていたら、いつの間にか関所が見えなくなるほど歩いていたらしい。 ジュムフーリヤ帝国から離れすぎず、近すぎない距離。

 

「そろそろ狩りの時間だな」

 

 そんなつぶやきとともに、左右に生い茂っていた林の中から黒尽くめの男が顔を出す。

 

 予想はしていたことだが、これはあれだ。

 

 いわゆる暗殺者。

 

「ざまあねえなクソガキ。 未成年だから命拾いしたと、本気で思ってたのか? あんなもん建前に決まってんだろ」

 

 言われるまでもなく分かっている。 未成年だから公開処刑はできない。

 

 だからこそ国外追放という重い刑に処した皇帝の意図。

 

 名目上は国外追放ということにしているが、国を出てから暗殺者を差し向けて命を刈り取る。

 

 こうすることで、国外で死亡した俺は変死という扱いにされても国民は納得するし、そもそも反乱分子をみすみす生かしておくなんて、帝国にとっては不穏分子にしかならないだろう。

 

 だから、ジュムフーリヤ帝国から離れたこの山中で、秘密裏に密入国させていた暗殺者に手を下させる。

 

 そもそも、華ノ国で命を落としたとなれば、魔術師を毛嫌いする仙術師たちに殺された、などの偽情報を言いふらしても多くの人間が信じることだろう。

 

 クソ喰らえだ。

 

「おい、この俺を誰だと思ってる三下暗殺者共」

 

 俺は、唯一堂々と持ち出すことができた私物、魔術大全を開きながら体内の魔力を練り上げる。

 

「ガキのくせに強がるなよ。 ぴーぴー泣き叫んでいればいいものを」

 

「暗殺者のくせに、ご丁寧に声をかけてくれたことには感謝しよう。 だがな三下共、それで俺の注意を引けるとでも思ったか?」

 

 俺はこの四年間、ただただ失敗を繰り返していただけではない。

 

「その口ぶり、もうバレてんな。 だったら遠慮はいらねー」

 

 俺の前に姿を表した暗殺者以外に、木陰に隠れた他の暗殺者が三名。 さらに樹上で魔術大全を開いている遠距離攻撃特化の魔術師が二名。

 

 計六名の暗殺者集団。 国内有数の実力者を差し向けているのだろう。

 

 気配の消し方は申し分なかった。 だが、気配を消した程度では俺の探知をかいくぐれない。

 

「とっととぶっ殺して首を持ち帰るぞ!」

 

 俺の前に姿を現していた暗殺者の掛け声に呼応し、他の暗殺者たちが魔術を構成する。

 

 この世界の魔術師たちは、それぞれ魔術大全と呼ばれる魔術書を贈呈される。

 

 初めは最初の数ページ以外白紙になっているこの本は、持ち主の成長に合わせてページを埋めていき、鍛錬すれば魔術大全の中に記されている全ての魔術を使用することが可能。

 

 ゲームだった頃は、プレイヤーのレベルに合わせて魔術大全のページが埋まっていく仕様だったが、どうもこの世界は現実世界に近いらしく、自分のレベルを確認できない。

 

「魔術大全【第23頁】物質創造構成式:鉄杭!」

 

 暗殺者が唱えた魔術を耳にして、ふむふむと納得してしまう俺。 初手は鉄杭か、基本的な攻撃魔術だが、発動も早く人型相手なら殺傷能力も高い。

 

 序盤に覚える魔術だが、割と終盤まで需要がある万能な技だ。

 

「まぁでも、ゲームの設定上は300ページ台の魔術が使えれば一人前と呼ばれていたよな?」

 

 これは恐らく小手調べ。

 

 そもそも、暗殺者たちはほとんど一瞬で魔術を構成し、鉄の杭を俺の心臓目掛けて寸分の狂いもなく飛ばしてくる。 この時点で手練れであるのは間違いないだろう。

 

 魔術を構成するためには、魔術大全に記された構成式、カスディム文字と呼ばれる特殊言語を使用しなければならない。

 

 本来なら、魔術大全を見ながらこのカスディム文字を模写し、魔力をインクのように変換させて文字を構成するという手間が必要になるわけだ。

 

 構成難易度が高い魔術ほどカスディム文字の構成式は複雑化し、構成するのには非常に時間がかかる。

 

 その点、鉄杭は構成式が簡易的なので構成しやすい。

 

 魔術大全をわざわざ開かなくても構成できる点、射出速度が早い点などが評価され、俺でも使用頻度が高い魔術だ。

 

 デメリットがあるとすれば狙い撃つのが少々難しい点くらいか?

 

 FPSが得意なプレーヤーが使うと化ける魔術でもある。

 

「魔術大全【第31頁】物質創造構成式:土壁」

 

 それはそれとして、防がないと確実に死んでしまうので早々に防御魔術を展開。

 

 この構成式は、床から土の壁を隆起させることで物理的な攻撃を防ぐ事が出来る。

 

 鉄杭程度なら問題なく防げるだろう。

 

「やはり、ガキだな」

 

 土壁で鉄杭を防いだ瞬間、暗殺者は含み笑いを漏らした。

 

 直ぐに頭上へ視線を向け、笑われた理由を悟る。

 

「ほほう、駆け引きまで上等だ!」

 

 俺の頭上に見えたのは、重力に逆らいふわふわ浮いている巨大な剣。

 

 これは物質創造構成式の中でも上位の魔術、武具精製だろう。

 

「なかなかやるじゃん!」

 

 ゲーム時代に熱狂していた対人戦を思い出し、楽しくなってきた。

 

 俺は土壁を構成した直後のため、再度魔術を構成し直す暇は無い。

 

 つまり頭上から降ってくるであろう巨大な剣を防ぐ手段が無いわけだ。

 

 となると、自らの足で回避するしか選択肢がない。

 

 バックステップで後ろへと跳ぶ。

 

「こんなガキの討伐に、わざわざ俺達が差し向けられたとはな」

 

 読んでいたと言わんばかりのタイミングで、両側から首狩り刀を振りかぶった暗殺者が突進してくる。

 

 なるほど抜かりがない。

 

 鉄杭を防ぐために俺が使用した魔術、土壁の弱点は視界が塞がれることと、正面に障害物が発生してしまうこと。

 

 マルチプレイで土壁を使うと邪魔だなんだと文句を言われるほどだ、立ち回りが重要なこの魔術戦において障害物が増えるのはデメリットになりかねない。

 

 おそらくあの暗殺者たちは、最低限の殺傷力を秘めたうえで基本的な魔術を使用することで、高レベルの守備系魔術を使わせないようにしようとする心理的揺さぶりをかけてきたのだろう。

 

 まんまと術中にハマった俺は、頭上に現れた巨大な剣をかわす選択肢しか取れなくなり、更に逃げる方向は限定される。

 

 壁から出てしまえば鉄杭の餌食となるため、避けるなら真後ろしか選択肢がないわけだ。

 

 それを予測したうえで暗殺者達の半数は加速の魔術で先回り。 首狩り刀で直接首を取りに来たわけだ。

 

 魔術師の弱点は構成式を作成している際の硬直。 そこをつくために近接戦闘技術を極める魔術師も多くいる。

 

 ゲームを始めた当初は魔術師が格闘の練習するとか解釈違いだと思っていたが、なるほど理にかなってると分かった瞬間から格闘系の戦闘スキルも熟練度を上げたことを思い出す。

 

 さて、たった三手で俺は追い込まれたわけで、このままでは見事に首をチョンパされるだろう。 バックステップするために地面から足を離したタイミングで襲われたのだ、これはさすがにかわせない。

 

「終わりだ、哀れなクソガキ」

 

 こうして、俺は見事首を切り飛ばされてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ