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バッドエンド回避に失敗した悪役貴族の俺、自作ダンジョンに引きこもる  作者: 【星願大聖】永福
始めようダンジョンDIY

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19/87

第19話 仲間に仕事を押し付けた俺は、予想以上の結果に度肝を抜かれる

 ❖

 メイハオちゃんを匿っていると面倒なことになりかねない。 とは言っても荒野に置き去りにする訳にもいかないため、いい引き取り先を探す目的で周辺の村を調査してもらっている。

 

 理由としては、メイハオちゃんの髪色や瞳の色が少々特殊なため、面倒なことに巻き込まれやすいからだ。

 

 どうも水色の髪と銀色の瞳と言う見た目は、ジュムフーリヤ帝国の英雄とされている、魔道士マリヤムと同一視されやすいようだ。

 

 そのせいで頭のおかしな宗教団体からしょっちゅうさらわれそうになる。 ゲームでも主人公のテオスくんがさらわれることで分岐するエンディングがあったくらいだ、気をつけるに越したことはないだろう。

 

 メイハオちゃんは下手に刺激すれば魔王級に強くなるかもしれない危険な幼女のため、引き取り先は慎重に選ばなければならない。

 

 最悪の場合、このダンジョン付近の村なら俺も遠くから監視できるし、何かあった時に対応しやすいだろう。

 

 なので、一番いいのはこのダンジョン付近にある村の中から、メイハオちゃんをこころよく引き取ってくれる人を探すことだ。

 

 一階層を担当するユーティいわく、このダンジョン周辺には村が三つあり、それぞれの村に異なる特産品や村人たちの特徴があるようだ。

 

「まず、一つ目の梅澄村《めいちぇんそん》は酪農が発達しているらしく、ここいら一帯に食料を配給しているようです。 家畜から取れる乳製品の他、ミネラル豊富な土壌で育てた野菜類を主として、各種調味料も育成しているようですね」

 

 梅澄村は俺の分身体がはじめて向かった村で、この村の住人達は比較的有効的ではじめて訪れた分身体たちでも暖かく迎えてくれていた。

 

「二つ目、珠寧《じゅうねい》は職人の村ですね。 質の良い粘土が取れるようで、陶器などの食器類を排出していたり、他にも大工や鍛冶師が多く、この村で作った農具や食器を梅澄村の住人たちは愛用しています。 この二つの村は交易関係にあり、非常に有効的です」

 

 こちらの村人たちは頭が硬い職人気質の人が多く、分身体が訪れた際も冷たくあしらわれてしまっていた。 とは言っても、根はいい人が多いらしく、ひどい罵倒を受けたりだとか権威を蔑ろにされたりなどといった心無い行為は一切なかった。

 

 おそらく口下手だが根は優しい村人が多いのだろう。

 

「最後になりますが、韶陽《しょうやん》。 この集落には戦闘部族しか住んでおりません。 非常に好戦的で、彼らの食事は主に駆除した害獣、または狩人たちが捉えた獲物。 または自給自足のために育成している作物です。 文化レベルは他の二つの村よりも大きく劣っていますが、戦闘力に関しては並の魔術師よりも上手でしょう」

 

 この集落には手を焼いている。 比較的標高が高い山頂部に集落を構えており、近づくだけで問答無用で攻撃。 言語も特有のものを使用しているため交渉もできず、他二つの集落でも近づかないよう口を酸っぱく言われていた。

 

「この一週間でよくもまあこんなにたくさん調べてくれたもんだ。 さすがはヴァブさん、引き続きよろしく頼むよ!」

 

「ふん、この程度、造作もありません!」

 

 メガネをクイクイ上げながらドヤ顔を披露し、ここ一週間の調査報告を終えたヴァブさん。

 

 話を聞く限りメイハオちゃんを預けるなら梅澄村が都合良さそうだが、どうも韶陽の存在が引っかかる。

 

「どうにかならんもんかなー、梅澄村と珠寧は交易もしてるから仲がいいんだろうが、韶陽の存在がジョーカー過ぎる」

 

 なんでも、戦闘になった際ヴァブと俺の分身体が対応したようだが、割と苦戦を強いられたという話だった。

 

 俺の分身体は記憶を引き継いでいる以上魔術の腕は俺並みだと言っていいだろう。 魔力量が十分の一程度になっているため強力な構成式は連発できないが、俺の分身体でもよくダンジョンに乗り込んでくる暗殺者たち程度ならあくびしながら返り討ちにできる。

 

 あの暗殺者たちも相当な使い手だと仮定すると、その韶陽の部族たちはなかなかに手練れ揃いなのだろう。

 

「俺みずから出向いて牙を引っこ抜くか? いやいや、そんなことしても反骨精神を刺激するだけかもしれんし、逆恨みしてダンジョンに乗り込まれるかもしれん。 そもそも、そんな近くに村があるとなれば、このダンジョンの存在もいずれ明らかにされるかも知れないしな」

 

 迂闊に外に出るのは避けたいところだ。

 

 一人ブツクサつぶやきながらどうしたものかと悩んでいると、こちらをちらちら横目に見ながら咳払いをするヴァブさん。

 

「会長、ここは一つ、自分に任せてはいただけないでしょうか?」

 

 やる気満々なのを必死に隠しているのだろう、ちらちらこちらに視線を送りながらも、体をフリフリ揺らしてはやる気持ちを抑え込んでいる様子。

 

 わかりやすいツンデレ仕様なヴァブさんの一挙手一投足にほっこりしながらも、まあ気軽に頑張れよと背中を押してみることにした。

 

 ❖

 そうして、一ヶ月と少し経過した頃……

 

「任せるとは言ったんだが……」

 

「なんじゃこれは! おい童、妾はこの村を直接見に行きたいぞ!」

 

「村というか……もはやこの景色、村と言うには明らかに……」

 

 街だなこれは。

 

 前回のモニタリングの際は、梅澄村の家屋は土壁でできている貧相なものだった。 しかし現在、分身体越しにモニタリングしている梅澄村の家屋は、そのほとんどが木造ないし石材で作られたものに変わっており、なんなら一つ一つの家にガラスでできた窓までついている。

 

 変化はそれだけではない。

 

「道……どうやったらこんな短期間にここまで発展するんだよ」

 

 土を固めただけの通路はレンガを敷き詰められて整備されており、なんなら道を彩るために植木まで植えられている完成度。

 

 一ヶ月でこの進展は、流石におかしい。

 

 この結果を見せるがためにウキウキしていたヴァブさんは、俺とシェンルゥの反応を見てそれはそれは満面の笑みを浮かべている。

 

「会長からいただいた記憶を頼りに、まずは珠寧の鍛冶師たちと交渉を試みました!」

 

 ヴァブの報告によると、まず彼女は珠寧の鍛冶師達に、前世の知識をフル稼働して最先端の技術を提供したらしい。

 

 もちろんこの前世の知識は俺が見聞きした情報をもとにした物だ。

 

 職人気質な珠寧の村人たちにとって、自分の知らない建築技術や陶芸技術は喉から手が出るほど欲しかったものらしく、ヴァブはそれを餌にしてとある提案を持ちかけた。

 

 韶陽の戦闘部族のために武具の精製をしてほしいと。

 

 始めは珠寧の村人たちも危険すぎるだなんだと反対していたようだが、ヴァブが持っている技術は職人たちにとっては宝も同然。 言葉巧みに乗せられた珠寧の鍛冶師たちは操り人形のように武具の精製を始め、ヴァブはこれらの武具を持って韶陽の戦闘部族たちと交渉したらしい。

 

 交渉内容はいたって単純。 この武具を提供する代わりに、その戦力を貸してほしい。

 

 相手は言葉も通じないというのに、相手の言語を見聞きしただけで理解してしまうあたり、ヴァブはとんでもない知識を宿しているだろう。 これに関しては恐らく概念干渉構成式で書き込んだ、インテリと言う概念による影響だろう。

 

 だって、俺はこんなに賢くないもん。

 

 コミュニケーションを取れるようになって分かったのは、どうやら韶陽の民たちは非常に臆病だっただけらしい。

 

 族長の方針で近づくものすべて敵という認識で対応しており、あくまで自衛のために力を振るっていただけだったとか。

 

 そのため言語も部族間でしか通じないものになってしまい、ほとんど鎖国状態。 そんな部族に武具を提供することで、この武具があれば比較的安全に村を守れるようになるとヴァブは提案した。

 

 警戒されなくなるまでに数週間浪費したようだが、その間を無駄にせず職人たちに依頼して梅澄村の家屋やら道の整備やらを依頼していたらしく、韶陽の部族たちは瞬く間に発展していく二つの村に劣等感と恐怖を抱いた。

 

 そうして眼の前にある武具を手に入れることで安心しようとしたのだろう。 韶陽の部族たちはヴァブが出した条件を快く飲み込んだらしい。

 

「韶陽の部族たちは運動能力および筋力、更には戦闘能力に秀でていました。 なので、梅澄村の畑を荒らす害獣の駆除、およびこれら三つの村を交代制で徘徊させる自警団に。 こうして私は、食料を供給する梅澄村と、技術を提供する珠寧、安全を提供する韶陽の関係を構築し、これら三つの村を合併させたのです!」

 

 腕を組みふふーんと胸を張りながら、この一ヶ月間で築き上げた有能すぎる三村統一劇場を話し終えたヴァブ。

 

 隣りに座っていたシェンルゥはすごいすごいと拍手喝采を送っていたため、俺も苦笑いしながら称賛しまくっていたのだが……

 

「どうですか会長! 自分は会長の思惑を汲んで、この三つの村を共存の関係にすることができました! これでメイハオさんをどこに預けても同じような結果になることは間違いないでしょう!」

 

 少し距離があった三つの村には安全に行き来できるよう街道が整備されつつあり、村の人々は食料にも困らず、魔物にも脅かさることの無い快適な生活を送れるようになっているだろう。

 

 とても喜ばしいことだ、俺が産み出したゲマトリアが人々のためにその有能過ぎる知恵を使って多くの人間を笑顔にしたというわけだ。

 

 だがしかし、

 

「こんなに発展させちゃったらさ、これからどんどん人増えるじゃん。 ってことはさ、このダンジョン見つかる可能性高くなってない? そもそも、メイハオちゃんはあんまりひと目のつかない村に預けたかったんだけど?」

 

 と、ヴァブがご機嫌な歩調で部屋を出た後に、ボソリとつぶやく俺であった。

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