第17話 新たな住民が増えた俺は、仲良くしようとして嫌われる
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どうやら俺は、メイハオちゃんに嫌われてしまっているらしい。
「おはようメイハオちゃん」
「あっち行ってーーー!」
「はっはっは、寒いじゃないか」
挨拶をしただけなのに猛吹雪が返って来る。 ここ最近は毎朝極寒だ。
「メイハオちゃん、暇なら遊んであげようか?」
「うざーーーーーい!」
「はっはっは、氷柱飛ばすのは危ないじゃないか。 俺じゃなかったら死んじゃうぞー?」
暇そうにしてたので遊びに誘ってあげたのだが、命懸けの遊びをご所望らしい。 お陰様で窒素障壁の発動速度が早くなった気がする。
「メイハオちゃん、ご飯の時間だぞー?」
「うん、行く」
ご飯の呼び出しだけはこうして素直に応じてくれる。 それもそのはず、メイハオちゃんはヴェートにだけはめちゃくちゃ懐いているのだ。
「あらあらメイハオちゃん! 今日の夕ご飯はメイハオちゃんが大好きな冷奴を作ったわよ!」
「わーいわーい!」
オヤジか! っとツッコミそうになるが、間一髪で飲み込んだ。
メイハオちゃんの好物は醤油と香草で味付けをした冷奴なのだ。 将来酒豪になりそうな好物である。
とまあメイハオちゃんが来てから早数週間、遭遇した時は命の危機すら感じた仙人幼女とは、ヴェートのおかげで友好的な関係を築けているだろう。
だがしかし、彼女と遭遇した際頭に付いていたお札。 あれが破けたせいで色々と面倒な事実を知ってしまうことになったのは否めない。
率直に言うのなら、俺はメイハオちゃんの顔を見た事があるのだ。
氷色の長い髪をハーフツインのお団子にまとめており、長いまつ毛も髪と同じ氷色。 白雪のように白い肌に馴染む銀色の瞳。
お人形さんのような可愛らしさ、そんでもって一度見たら忘れられない特徴的な見た目。
お札のせいで隠れていた素顔があらわになり、こうしてまじまじと見る機会が増えたせいで深刻な悩みができてしまっている。
「……あげないもん」
「いや、いらんわ」
思考の渦を巻いていたら、無意識にメイハオちゃんを凝視してしまっていたようだ。 おかげで俺が冷奴を狙っていると勘違いされ、メイハオちゃんはお皿を抱えてそっぽを向いてしまう。
その行動は年相応で可愛らしいが……ぶっちゃけた話この子をこのダンジョン内に置いておきたくない。
だがこっそり山に放そうとでもすれば、世界に混沌が満ちるよりも早く、ヴェートに怒られて正座させられる未来が待っていそうだ。
正座三時間は予想以上に過酷だった、二度とゴメンだ。
「童、もう諦めよ。 こやつはもうヴェートママの側を離れようとせんのじゃ」
我が物顔で野菜スティックをポリポリ齧っていたシェンルゥが、悟りを開いたような顔で語りかけてくる。
「そうは言ってもな……」
「そう怖がることは無いであろう? お主が言うことが本当ならば、こやつと仲良くしておけばプラスになることがあるやもしれんぞ?」
「なるほど……そういう捉え方もアリっちゃアリだな」
シェンルゥが珍しくまともなことを言っている。
確かにメイハオちゃんと仲良くしておけば、バットエンド回避の都合上得な事しかないだろう。 むしろ、最善策なのかもしれない。
だがしかし、それが最善策だとしても困ってしまうのは……
「ねーねーメイハオちゃん。 ご飯食べ終わったらお兄さんと一緒に遊ぼうか?」
「嫌っ!」
「じゃあダンジョンの中を案内して……」
「やっ!」
このように、めちゃくちゃ嫌われているので仲良くなるのは無理そうだ。 そもそも幼女と仲良くしようとしている絵面は危険なのではないか?
……臆してはダメだ。 安心しろ俺、ここには俺しかいない。
だから幼女と仲良くなろうとしたところで、ロリコンだとバカにするロリコンキッズはいないのだ!
「めめめメイハオちゃんぅ〜〜〜、お菓子あげるからぁ、お兄さんと一緒に……」
「嫌っ! 否っ! 厭ぁぁぁぁぁ!」
なんかこういう歌あった気がするな、そう思う事で現実逃避するのが関の山だった。
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このゲーム、マジシャンズ・フロンティアの主人公は、テオス・メルレインと言う少年だ。
氷色の髪に銀色の瞳、白雪のような白い肌。
このゲームのプレイヤーに女性が多かった理由はこの主人公がイケメンだからである。 まあ、このゲームの男キャラは主人公以外もイケメンが多かったが……
ちなみに俺の魂はしっかり男性だ。 男性でもゲームシステムや世界観が好きならイケメンが沢山出てくるゲームだってするだろう。
それはともかく、物語は記憶を失った主人公が、行くあてもなく荒野を徘徊しているところから始まる。
腹が減りすぎて行き倒れになった主人公は、たまたまそこを通りがかった夫婦に拾われ、何の変哲もない村で平民として過ごしていくことになる。
そうして平和な生活を送っていると、村にやってきた商人が護衛として連れていた魔術師と出会うのだ。
その魔術師はテオスくんを見て意味深なことを言い始める。
「君、魔法で記憶を消されてるね」
この謎の魔術師、言うまでもなく黒幕である。
一応ネタバレになるからこの話はおいておいて、主人公はこの魔術師の言葉に後ろ髪を引かれ、魔術を学びたいという人生初のわがままを育ての親に言うことになるのだが……
この村の人達は優しかった。 村中の人達に呼びかけお金をかきあつめ、テオスくんがナボニドゥス魔術学校に入学するお金を工面してくれたのだ。
このエピソードは悔しいが泣いた。
こうしてテオスくんのナボニドゥス魔術学校での生活、ゲームで言う本編がスタートし、魔術を学んで失った記憶を取り戻そうと言う名目でストーリーは始まる。
そんな物語中盤でこの俺ティメル・シャプールは闇落ちして中ボスとして登場するわけだ。
そして、俺はこのゲームを何周もクリアしてるわけだから、あらゆるルートでのエンディングを履修している。
ほとんどのエンディングはテオスくんの記憶が戻り、人間を滅ぼそうとしているラスボスとの戦いになる訳だが……
「なるほど、そのテオスという男児の記憶にメイハオ殿が現れるのですね?」
「そうなんだよ、だから偵察のついででいいからさ、メイハオちゃんが平和に過ごせそうな村見つけてくれない? どう考えても近くにおいておくのはデメリットしか無いと思うんだよね」
「御意に」
メイハオちゃんはテオスくんの記憶にでてきた、彼の妹とそっくりなのだ。 そっくりというか本人だと確定していいだろう。
なので俺の傍に置いておくのは少々というか、かなり危険。
こっそりユーティに相談し、近くに村がないかを偵察してもらうことにした。
基本的に一階層を担当するユーティは、暗殺者たちが来た時以外はダンジョン周辺の偵察をしてくれている。
ヴェートが出してくれる肉も、ユーティが偵察のついでに狩ってくれた野ウサギやイノシシの肉だ。
村を探す程度、わけないだろう。
「こちらをご覧ください主」
とまあ、村を探すおねがいをするやいなや、ユーティは俺の目の前に地図を広げ始めた。
見たことの無い地図だが、どこで手に入れたのだろうか?
「僭越ながら、こちらの地図は拙者が記させてもらったものになります」
「え? マジ?」
「はい、見ずらかったり至らない点はあると思いますがどうかご容赦を」
「いやいやいやいや、めっちゃ見やすいですありがとうございます」
驚くべきことに、ユーティは俺が命じるまでもなくこの辺り一帯を偵察及びマッピングしてくれていたらしい。 有能すぎて怖い。
言われてみれば兎や猪を捕まえた時も、命令する前にさっさと捕まえていた上に的確な下処理まで済ませていた。
『主が肉を食べたいと呟いておりましたので、僭越ながら拙者が狩りをしておきました』
なんてことを言って、頼む前に大体の仕事を完了させている優秀なゲマトリア。
感動のあまり涙がほろりとこぼれそうになる俺だったが、ユーティの有能劇場はまだ終わらない。
「主がおっしゃる平和な村という場所ですが、実はこの近くに三つの集落を確認しており、簡単にではありますが調査も済ませています」
地図の上を指さしながら、さも当然とでも言いたそうな真顔で説明を始めようとするユーティ。
「え? 既に村見つけてるの? しかも調査済み?」
「ええ、村の人口や戦闘員の数および総戦力、他にも男女比や村の特産物程度しか調べは付いておりませんが……」
めっちゃ調べてるやん、って言うか三つも村あるのかよ。
改めてユーティの優秀さに脱帽しながらも、俺たちは村の様子を直接確認するために準備を開始するのだった。




