第12話 考えるのが面倒になった俺は、ヤケクソの力技を行使する
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謎の遺跡を調べるため、ペペに頼んで遺跡の周囲をぐるっと一周掘ってもらうことにした。
「隊長! これで穴が繋がりました!」
「ありがとなペペ、もう戻っていいぞ!」
敬礼を向けてスタスタ六階層へと戻っていくペペを労い、俺は目の前にある豆腐型の遺跡をじっくり眺める。
「大きさはそれほどでもねーな。 サイズ的にはコンビニくらいの大きさか」
「コンビニとはなんぞや?」
シェンルゥが興味津々な反応を見せているが、今は面倒なので放置。
「さて、外周を掘ってもらったのはいいが、入口らしきものはないし、相変わらず極寒法印が壁中に書き込まれてやがる」
謎の壁は四角形の豆腐みたいな形状になっており、念の為天井に当たる部分も掘ってもらった。 そのためこの空間はちょっとした空洞のようになっている。
崩落しないよう天井や壁に補強の魔術をかけているため暴れたりしない限りは問題ないだろうが、壁を壊すために高威力の魔術を連射したりなどしたら、衝撃で岩盤がもろくなる可能性もあるだろう。
「どうしたもんか」
「童はどこまで魔術を使えるようになっておるのだ?」
「だいたい900とちょっとってとこだな」
シェンルゥの問いかけに反応し、俺はペラペラと魔術大全を開いて魔術を探し始めた。
先日、シェンルゥとの戦いに勝利したことで魔術大全は900ページ代に突入している。 なにか使える魔術があるとしたら850後半のページになってくるだろう。
そもそも事象回帰の魔術陣が裏に刻まれてる壁だ、そんじょそこらの魔術で破壊できるとは思えない。
「どうしたもんかな」
顎を撫でながら浮遊の魔術で上空から遺跡を確認。
「天井部分にも極寒法印が書かれてんな」
「そのようじゃのう」
しれっとシェンルゥも雲を召喚してついてきているが、こいつは仙術に正通しているためアドバイザーになってくれるかも知れない。
特に文句は言わずに放置しよう。
「入口も似たような感じじゃったからのう、鼠一匹入る隙がないようじゃな」
「ますますきな臭い遺跡だな。 これは間違いなくとんでもないお宝があるだろう!」
なんだかワクワクしてきた。 とは言ってもシェンルゥが言う通り法印のせいで侵入ルートなど一切見つからない。
ゲームだとこういった遺跡に入るための鍵やらなんやらがあるのだろうが、扉部分を見てみても取っ手がついているだけで鍵穴もないし、両扉の中心に仙術法印が書かれているだけでこれと言って変わったものもない。
「シェンルゥ、この法印はなんの法印だ?」
「これも極寒法印じゃのう。 これは……壁というよりも遺跡内の空間を凍結させておるのか?」
顎を撫でながら法印がどういう役割をしているのか推測し始めるシェンルゥ。
それにしても気になる見解だ。 遺跡内の凍結?
「なにか冷凍保存でもしてるのか?」
「冷凍保存?」
首を傾げているシェンルゥに、冷凍保存がどういうものかを説明する。
するとシェンルゥは難しい顔をしながら扉の法印をじっと眺め始めた。 なにかに気がついたのだろうか?
期待を寄せながら、横目にシェンルゥの様子を伺っていると。
「なるほど、まったくわからん!」
「ひっぱたくぞこのポンコツがぁっ!」
「んなっ! なにをするのじゃたわけ! 妾だって頑張って考えたのだぞ!」
こうして取っ組み合いになったため、考える時間を無駄にしてしまう俺達であった。
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さて、謎の遺跡を調べてみて分かったことをまとめてみよう。
ひとつめ、近づくとカチンコチンに凍らされる。
距離的には三センチくらいだろうか? そのせいで近づけない。
ふたつめ、凍るのはおそらく固体や液体、魔力も同様だということ。
手近にあった何の変哲もない石ころをぶん投げても凍ってしまうし、魔力で作った炎を近づけても炎ごと凍ってしまう。
こうなると、法印そのものを書き換えるという荒業が使えない。
みっつめ、地面から侵入するという頭の悪そうな作戦を使ってみたが、床部分も壁や天井同様に法印が書かれた石床になっている。
採掘の魔術で床から侵入するのは難しそうだ。
「手詰まりだな〜」
頭を抱えてしまいそうだが、こうなると意地でも中を確認したくなってくる。
とは言っても、高威力の魔術を連射しようにも洞窟内だと衝撃で崩落する恐れがあるし、魔術陣ではないため法印そのものの仕組みを解読して干渉することも難しい。
どこかの誰かさんみたいに見たものを質量関係なしに転移できれば話が早いのだが……そんな理想論を並べたところで無意味だろう。
「しょうがねえ、力技で行くしか無いか」
「おぬし、考えるのが面倒になっておるな?」
のっそりと立ち上がった俺に細目を向けてくるシェンルゥ。
「そんな事言われてもな、こんな常識外れな遺跡を攻略するとなれば、こっちも常識外れな力技で対応するしか方法ないだろう?」
魔術による攻撃を行使しても、魔力そのものを凍らせてくる遺跡なのだ。 こうなってくると凍らせられるものと凍らせられないものの違いを考えるのも少々億劫になってくる。
「現時点で、あの遺跡に触れても凍ってないものを上げるとしたら二つだ」
「ふむふむ、あの土台であるな?」
「それはひとつ目だ。 ちなみに、土なら凍らないのかと思ってそのへんの土をかけてみたが、見事に凍ったぞ?」
「なんであの土台だけ凍ってないのだ?」
「鑑定の構成式を使ってみたんだが、あの遺跡の下にある土だけ粘土の土じゃねーみたいだ。 おそらくあの法陣は特定の材質を凍らせないようプログラムされてる」
じゃないと今頃この空間は銀世界になっていないとおかしい。
「ということは、ふたつめは空気であろうな?」
「お前意外と頭いいじゃねえか」
「バカにしておるのか童」
シェンルゥがジトーっと俺のことを見てくるが、そこまで分かるのならば話は早いだろう。 これから俺がなにをしようとしているのか。
「魔術大全【第912頁】混合構成式:時空断絶」
「んなっ! 防御系魔術最強の時空断絶? なにをするつもりなのじゃ?」
時空断絶は、コスパは悪いが防御において他の追随を許さない鉄壁の魔術。
特定空間内の時間を短時間限定で止めることが可能なため、どのような攻撃が飛んできてもこの時空断絶で産み出した空間に触れたありとあらゆる現象は確実に止る。
よって、この時空断絶で産み出した壁で自分を守れば、一部を除いてあらゆる攻撃が当たらない。
「この魔術が永続発動できれば、理論上最強の盾となるわけなのだが……」
なにぶん消費魔力も尋常ではない。 よってこの魔術を永続発動などすれば、魔力が枯渇して干からびる。
「だからあんまり使いたくなかったんだがな」
「ぅおいおいおいおい! 範囲っ、なんちゅう範囲で時空断絶を展開しておるのだ童!」
その時空断絶を引き伸ばしていき、遺跡を囲い込む。 無論、範囲を広めれば広めるほど魔力の消費は激しい。
この時空断絶引き伸ばしは、以前使用した魔術の重ねがけを応用しているのだ。 数十回の重ねがけを繰り返し、範囲をどんどん引き伸ばしていく。
このようにして遺跡の周りを円形に囲ったところで、二つ目の魔術を行使。 効果時間は長く見積もっても三十秒行くか行かないかだ、ここからはスピード勝負になる。
「魔術大全【第95頁】物質創造構成式:創気」
「912ページの魔術を重ね掛けして使っているというのに、別の魔術も同時に使えるのかおぬし!」
いちいちリアクションがうるさいシェンルゥはさておき……
この95ページに記されている構成式は非常に優秀だ。 気体を創り出す魔術であり、創造構成式の中で最も難解な魔術であると仮定できるだろう。
物質を創造する過程では、個体や金属、液体から薬物まであらゆるものを想像できる。 薬物に関しては治癒薬のような、体に良い者から毒物まで幅広く作れるが、作れるのは自分が理解している物質のみ。
創造構成式を成功させるには、創造したい物質の仕組みやら原素式やら、作りたいものの理解と知識を学ばなければならない。
「まあ、窒素や酸素などは普段から触れる機会が多い気体だから創り出すのはそう難しくない」
先日の創水同様、作るものさえ決まっていれば、後は魔力を注げば注ぐほど大量に作成することができる。
「つまり、今回の力技はこうだ。 時空断絶で隔離したこの空間内に、大量の気体を送り込む」
そうすれば時空断絶によって隔離された空間内の空気はパンパンに詰まっていく。 だが時空断絶は絶対に破れないであろう最強の壁だ。
となると、限界まで圧縮された空気によって、最初に悲鳴を上げるのはなんだろうか?
「おいおいおいおい! ぅをぬしっ! とんでもねー童じゃのう!」
シェンルゥが顔を青ざめさせながらジリジリ後ずさっていく。
そんな中、大量の空気が送り込まれた空間に聳えていた遺跡は、徐々にヒビが入り始めていき……
「芸術は、爆発だぜ?」
かっこつけながら右目にかかっていた前髪を弾くと同時に、大量の空気によって押しつぶされた遺跡は盛大に破裂した。




