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幕間 豊穣神の企み

ラクシュは、目の前に映し出された戦場の様子を見ながら、頬を大きく膨らませていた。


「どうなってるのよ! ワタクシ様の加護があるのに、負けてるじゃない!」


映し出された戦場では、シルヴァニアの兵達が次々と押し崩されている。


リン。


ランカ。


シオン。


クロエ。


セリア。


五人の少女達は、それぞれまるで違うやり方で戦場を蹂躙していた。


力で押し切る者。


技で切り裂く者。


魔法で焼き払う者。


薬や奇策で崩す者。


長い鍛冶人生そのものを武器へ変える者。


やり方は違う。


だが、結果だけは同じだった。


ラクシュの加護を受けた兵達が、押されている。


その光景を、アルトリウス達三人も険しい表情で見つめていた。


「……あれ程とは」


アルトリウスが低く呟く。


その声音には驚きが混じっていた。


だが、それも一瞬だけだった。


すぐに表情を引き締め、前へ出る。


「いや。ならば、我々が討ってみせましょう」


ドルガディンとセルディウスも無言で頷いた。


三人が踵を返し、戦場へ向かおうとする。


その時だった。


「待ちなさい」


ラクシュの声に、三人が足を止めた。


振り返る。


だが、ラクシュはすぐには続けなかった。


いつもなら勢いのまま何かを言い切るところを、珍しく黙って戦場を見つめている。


ひとり。


またひとり。


映し出された五人の姿を順番に眺める。


その戦い方。


使っている力。


兵達がどう崩されているのか。


しばらくして、ラクシュの碧眼が僅かに細められた。


「……時間を稼ぎなさい」


アルトリウスが眉を寄せる。


「時間、ですか?」


「そうよ」


ラクシュは腕を組んだまま、五人から目を離さない。


「ワタクシが、なんとかしてあげるわ」


三人は一瞬だけ顔を見合わせた。


だが、理由を問い返すことはなかった。


アルトリウスが静かに頭を下げる。


「承知しました」


その言葉を残し、今度こそ三人は戦場へ向かっていった。


残されたラクシュは、なおも映像を見つめ続ける。


そして。


ふっと息を吐いた。


「……いつまでも、皆を強くしてあげるだけじゃ埒が明かないわね」


ゆっくりと腕を下ろす。


それまで取り続けていた、《溢るる愛》の姿勢が解かれた。


同時に。


戦場一帯を包んでいた神力の気配が、僅かに薄れる。


遠く離れた戦場で、兵達を包んでいた見えない後押しが静かに消えていく。


ラクシュはその変化を気にする様子もなく、自らの手のひらを見つめた。


「なら――」


指先に、淡い光が集まり始める。


「別のやり方をすればいいだけよ」


口元に、小さな笑みが浮かぶ。


いつもの自信満々なものとは少し違う。


何かを思いついた時の。


創造する者の笑みだった。


「うん」


ラクシュは、ひとり納得したように頷く。


「そうしましょう」


その手の中で。


集まった神力が、ゆっくりと形を変え始めた。


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