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ステージ9『闇』(96話)

※ご注意 ステージ9は流血および暴力的シーンを含みます。

今まで訪れた町と呼ばれる中では、かなり大きい町に到着した3人は、走りながらある場所に向かっていた。

ライラの腕の中にはゼノがしっかりと収まっており、両手でゼノを抱きかかえて走っていた。


「もうすぐ着きますから、頑張ってくださいゼノ」


一緒に走るイズが、ぐったりとしているゼノに声をかけ励ます。


「しっかりしろお子様」


イズの問いかけにも反応を返さず、眉一つ動かさないゼノにライラが軽く揺さぶるが、ゼノはぐったりとしたまま、動かない。

顔は真っ赤になり、汗も尋常ではない。呼吸も荒く、時より呼吸に雑音まで混じる。


「……チィ」


その様子にライラは舌打ちをし、少しだけ抱える腕に力を込めると、イズの案内する方向へと走る。

向かう先は医者だ。






「今の見たか、アニキ」


ゼノを抱えて走るライラとすれ違った男が、不意にそんな声をだした。


「ああ、ありゃぁ~、かなりの上玉だな」

「へへへ、アニキどうするよ」

「町を出る前に、もうひと稼ぎするか」

「うへ、了解だぜ」


下品な笑いをした男2人は、町を走るライラとイズを視線で追いながら、こみ上げる笑いを抑えきれず、ニタニタと気色の悪い笑みと声を発した。


「あれだけの上玉そうそういねえ、……すげえ大金になるぞ」


アニキと呼ばれた男は、怪しく瞳を光らせて静かにライラたちの後をつけた。






それからしばらくして、3人は町に宿をとりゼノをベッドへと寝かせた。

相変わらず、真っ赤な顔で息も荒いが、先ほどよりはいくらか落ち着いたようにも見える。


「まさかゼノが風邪引くなんて、思ってもみませんでした……」


医者から告げられた病名『風邪』……多少肺炎併発中

どうやら発症してから放置が続いたせいで、重症化してしまったらしいが、薬をちゃんと飲んで数日も安静にしていれば治ると言われ、ライラもイズもとりあえず安心できた。

高熱が出ているせいで、意識が朦朧としている、解熱剤を投与してもらったのだが、完全に効いてくるのは明日の朝だろうということで、今日はあたたかくして安静にするようにとの忠告を受けた。

容体が変わればすぐに連れてこいとも言われて。

どことなく苦しそうな呼吸をしているゼノに、ライラがそっと触れる。

熱い。やはりすぐには下がらないのか、触れた手に伝わった熱に険しい表情をしてみせた。


「……バカはひかねえんじゃなかったのか」

「迷信ですよ、それ。……それより、水かえてきていただけますか」

「ああ」


桶のような入れ物に水を汲み、イズが冷たく冷やした布をゼノの額に乗せては取り換える作業をしていたのだが、水が温かくなってきたので、ライラに新しい水を汲んできてくれるように頼んだ。

そんなことがしばらく続き、二人はゼノがようやく落ち着きを見せた頃、重たい腰をあげた。


「さて、ゼノも少し落ち着いたようですし、何か栄養のあるものでも買いに行きましょうか」

「目が覚めたら、お腹空いたとか言いそうだしな」

「ええ、真夜中に目を覚ましてそんなこと言われても、用意できませんからね」


薬が効いて、真夜中にでも目を覚ましたら店も開いてない時間なので、ご飯を与えられないと二人は苦笑した。なので、今のうちに少し食べ物を買ってこようと決めた。

静かな寝息がするゼノを起こさないように、二人はそっと宿を後にした。

すぐ戻ってくるので、お留守番しててくださいと小さく言って。






それから数時間後。

買い物から戻ってきた二人は、部屋に入るなり酷い頭痛を覚えた。

ベッドが空っぽだったから。


「一人でお留守番もできねえのか、あいつは」


開け放たれた窓を見ながら、ライラが額に手を添えた。あんな状態で一体どこへ行ったのか? もはやため息もでてこない。

何か手掛かりがないかと窓に近づいたイズは、窓に不自然なものを見つけ息を飲む。


「ライラっ」

「なんだ……」

「これ見てください」


そう言いながらイズが手にしたのは、土。

良く見ればそれは誰かの足型を示している土。普通窓に土など、ましてや泥の足型などありえない。どういうことなのかと、イズが部屋を振り返ればゼノの靴が視界に入る。


「ゼノの靴型じゃありませんね」

「だな」


二人は窓の外へ視線を向け、その足型が宿の庭にも続いていることを確認した。

しかも複数?

そして二人は同時に同じことを叫んだ。



「「誘拐?!」」






◆◆◆

「さて、お集りの紳士、淑女のみなさま。今回最後の商品となります」


薄暗い地下のホールにて、壇上に立つ煌びやかな男がホール中に響く声を上げた。

ライトが当たるのはホール中心にある壇上のみ。

観客はみな怪しげな仮面をつけて、その壇上を見つめる。

男が「こちらになります」と声を出し、手で合図を送れば舞台の中心から鳥かごのような檻が姿を現す。

その全貌が明らかになれば、観客から盛大な歓声があがった。


「なんと綺麗な黒だ」

「神の申し子に相応しい」

「あれほどの者がいたとは……」


歓声とともに席を立ち、皆が舞台の中心を凝視する。

鳥かごの中に囚われてたのは、長い黒髪のゼノであり、ゼノは意識を失ったまま横たわっていた。

闇オークション。



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