ステージ8『砂漠』(95話)
「でもでも天井から岩が落ちてきて、棺が壊れたのぉ~」
二人が助かったのはこの崩落のおかげで、落ちてきた岩が棺を破壊したとゼノが説明するが、現状はそれどころではなく、ライラが座らされていた椅子の後ろにあった通路は完全に水没、とても逃げられそうにない。かといって、イズとゼノが出てきた出入口は通路が完全に崩壊してしまったせいで、とても向かえそうにない。
下を見れば水が渦を巻いて流れ込んできている。
「どうしますかライラ」
完全に閉じ込められたとイズが青い顔をしてライラに問う。
「どうすりゃいい」
豪快に頭を掻きむしるライラに、必死に逃げ道を探すイズ。
どうあがいても逃げ道などどこにもなく、今立っている場所も水に削られ徐々に崩落を始めている。絶体絶命。
「せーのっ!」
「なっ!」
「えっ!」
唐突にゼノの声が聞こえ、ライラとイズはゼノに背中を押されて激流の中に突き落とされた。
水しぶきをあげて、三人は激流の中に落下する。
落ちる瞬間に目いっぱい空気を吸い込んだ3人は、激流に飲み込まれ、右も左も分からないまま成すがまま流されるが、ゼノは二人の手を必死に繋ぎとめ、突然何かに吸い寄せられるように奥深くに引き寄せられた。
呼吸が持たない。
3人は半分意識を飛ばしたまま水底へと引き込まれていった。
ササァ──
そんな音が耳を掠め、照りつける太陽の眩しさと熱さに顔を歪ませた3人は、息も絶え絶えで水辺に倒れるように這い上がっていた。
下半身は今だ水の中だが、そこから這い上がる元気はない。
「生きてるかぁ……」
弱々しいライラの声が呼びかける。
「ええ、たぶん生きてます……」
「……僕も」
イズとゼノから声が返り、ライラは苦笑した。みんな生きてると。
激流に飲み込まれた3人は、砂漠のオアシスに放り出され、自力で陸地まで到達したものの体力は限界、穏やかな水に浮かぶように漬かっていた。
人もおらず、建物もなく、数本の木々があるだけのオアシス。
時折風が吹けば、水面に波紋を描くだけの静かな場所。
「なぁ、ゼノ」
疲れ果てて動けないライラが不意にゼノを呼ぶ。
「何? ライたん……」
「お前、押したよな」
地下空洞で故意に激流に落としただろうと、ゼノを横目に見る。あの時、確実に背中を押されたと睨んで。
「そうだっけ? はは……」
「とぼけんな」
「だって、ああするしかなかったんだもん」
どの道逃げ道はなかったと、ゼノが反論した。いつもならここでライラの苦情とお叱りが浴びせられるのだが、ライラは軽く息を漏らす。
「今回は許す」
力なくライラはお叱りはなしだと言った。
偶然でもまぐれでもなんでもいい、命があって、助かったのだからゼノを叱る意味はないと決めた。
怒られずに済んだゼノだったが、体力はゼロ。いつものように反論や言い返すこともなく、素直にそれを受け入れた。
照りつける日差しを受けながら、3人はしばし水の中に沈んでいたのだが、今更、そう今更なことに気がついたイズが不意にライラに視線を向けた。
妙な視線を受け、ライラがイズを見れば哀れな眼差しを向けられていた。
「なんだその目は……」
「その恰好のまま旅するのかな? と思いまして」
イズに指摘され、ライラは現状の自分の姿を確かめて真っ青になった。
上半身は裸、下半身には煌びやかなふんどし? どっからどうみても変人か危ない人。
この姿のまま服が買えそうな場所まで行くのかと想像しただけで、ライラは恥ずかしさに顔を真っ赤に染めた。
そしてもう二度と届かない望みを砂漠のど真ん中で叫ぶ。
「オレの服を返しやがれぇぇぇ──!」
ステージ8 クリア
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ステージ9『闇』
今まで訪れた町と呼ばれる中では、かなり大きい町に到着した3人は、走りながらある場所に向かっていた。
ライラの腕の中にはゼノがしっかりと収まっており、両手でゼノを抱きかかえて走っていた。
「もうすぐ着きますから、頑張ってくださいゼノ」
一緒に走るイズが、ぐったりとしているゼノに声をかけ励ます。
「しっかりしろお子様」
イズの問いかけにも反応を返さず、眉一つ動かさないゼノにライラが軽く揺さぶるが、ゼノはぐったりとしたまま、動かない。
顔は真っ赤になり、汗も尋常ではない。呼吸も荒く、時より呼吸に雑音まで混じる。
「……チィ」
その様子にライラは舌打ちをし、少しだけ抱える腕に力を込めると、イズの案内する方向へと走る。
向かう先は医者だ。




