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ステージ8『砂漠』(92話)

しかしミイラたちは順調に事におよび、ライラを棺まで無事運び終える。


「入れろ」


女性から命令が下ると、ライラは抵抗も虚しく棺の中へと放り込まれた。


「んんっー!」

(イズでもゼノでもいい、マジで誰か助けろー!)


重い石の蓋がミイラたちにより動かされ、ズゥーズゥーと石が擦れる音をたて、徐々に閉められていく。

閉められる蓋が半分を越えた頃、ライラはもう終わりだと目頭に涙を浮かべた。



『ライたんを返さないと、月に代わってお仕置きしちゃうぞ』



突然空洞に明るい声が響き、女性とミイラたちが動きを止めた。

声は上の方から聞こえ、全員がそこへ視線を向ければ、かわいいポーズを決めたゼノが立っており、その隣ではイズが恥ずかしそうに片手で顔を覆っていた。


「なんで、その登場なんですか……、ゼノ」

「一度やってみたかったんだよね。カッコいい登場シーン」

「それ、女の子の憧れのヒーローですよね……」


男の子のゼノが真似るのはちょっと違うと、イズがツッコミ。

女の子がするからかっこよくて可愛いのだと指摘され、ゼノが慌ててイズを見る。


「じゃあ、予告状とか出せばよかったかな? 『今夜、ライたんをいただきに参上する』とか」

「時間と手間がかかりすぎですよ」

「んー、じっちゃんの名にかけて!」

「今使う台詞じゃありません」

「じゃあ、じゃあ、へ~ん~し~ん、トウォ!」


大きく両手で数字の2を描いて跳び跳ねて見せたゼノに、イズが大声をあげた。


「違いますっ!」


もはやそれは、ピンチに駆けつけたヒーローの第一声ではなく、敵と対峙する直前の台詞。

イズは軽い頭痛を覚えて、さらに頭を抱えるが、ここで諦めないのがゼノであり、


「事件は会議室でおきてるんじゃない! 洞窟でおきてるんだっ」


唐突にそう叫んで、女性を指差した。


「ゼノっ! それ使うところ全然違います!」


ビシッと決めたゼノに、イズが思いっきりツッコンだ。

使いどころが根本的に間違っていると。

よってゼノは悩みながら再びヒーローを思い描く。


「それはもういいですから、早くライラ助けてきてください!」


痺れを切らして、イズがゼノに指示を出す。

空洞中心部の祭壇にある、石の棺に押し込められそうになっているライラを早く助けに行ってきなさいと命令した。

ここまで訳が分からずただ見ていた女性だったが、邪魔をされては困ると大きく手をあげた。


「あの者たちを捕らえよっ」


その掛け声にミイラたちが一斉に動き出す。

祭壇まではかなりの距離があり、その上祭壇に向かう通路は一本だけ、まともにここを下って行けばかなりの時間がかかり、ミイラたちの邪魔が入る。しかし、ゼノならばその身軽な動きで祭壇まで最短距離で行けるとイズは瞬時に判断して、ライラ救出を命じた。


「むぅ~、次までにちゃんと決め台詞作っておこうっと」

「そうしてください」


少々むくれたゼノだったが、イズに言われそこから空洞中心へと向かって、宙を舞うように戸惑うことなく飛び降りた。

獣のように身軽にゼノは、わずかな足場を跳ねるように下へ下へ降りていく。

それを見送ったイズは、通路を下から上がってくるミイラたちを見据えた。


「さて、ボクはあれを相手にしないといけませんね……」


得たいの知れないミイラたちに、イズが冷や汗をかく。

槍を構え迎え撃つ準備をするイズは、ふと足元に黒い水が流れているのに気を止めた。

しゃがみこんで少しだけ指で掬い上げて、イズはそれを鼻先に当てる。


「この匂いは……」


鼻をつく独特な香りがし、イズは黒い水の正体を知る。

そして近場を見回し、手頃な石を見つけると流れる水を塞き止め、通路へと流れるように仕向けた。

塞き止められた黒い水が溢れて、通路を下へ下へと流れていく。

イズは、ひとまずそこを動かずミイラたちを待った。

一方、ライラの元へとあっさりと到着したゼノは、半分ほど閉められたら蓋の隙間からライラをなんとか引っ張り出す。


「ライたん、おっも~いっ」


全身を使ってライラを引きずり出そうとするが、大男のライラをそこから出すのは一苦労。

なんとか棺から引きずり出したゼノは、包帯で全身を巻かれたライラを棺の中に立たせると、にまぁ~と笑った。

何か面白いイタズラを思いついた顔。


「んんっ! んー、んっ」

(てめえ! とっとと外せ)


心で叫ぶライラだが、その願いは願ってもない形で叶えられる。

包帯の先端を見つけたゼノは、それを思いっきり引っ張った。


「よいではないかぁー、よいではないかぁー」


全く意味の分からない言葉を叫びながら、包帯を力任せに引っ張り、全身を包帯で巻かれていたライラがそれに合わせてクルクルと回る。


「んん! んー! んんっ~……っ……」

(ぜってぇ、ぶっ飛ばす……あ、なんか目が回って……)


「面白いぃぃ~。いつかやってみたかったんだよねぇ」


どこかでみたコレをやってみたかったのだと、ゼノは完全に遊んだ。

で、包帯からライラが解放されると当然、


「いったぁーッ!」


ゼノは見事なげんこつをお見舞いされた。

痛みが訪れた頭を抱えて、涙目でライラをみるゼノだが、ライラはげんこつをお見舞いした後、棺にもたれ掛かるように崩れ去った。


「気持ち悪りぃ~」


クルクル回され、完全に目が回った。



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