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ステージ8『砂漠』(91話)

◆◆◆


その頃、本当に助けて欲しいライラは、大きく広がった部屋のような空洞全てが見渡せる位置に固定されている石で造られた椅子に括り付けられていた。

逃げられないように、椅子と身体を一緒に包帯で括られ、大声も上げられないように口まで包帯で覆われていた。呼吸はかろうじて鼻でできるため、問題はなかったが眼下に広がる異様な光景に身震いが止まらない。

部屋の中心に炎が立ち上り、その奥には二つの棺が設置してある。

一つは蓋が閉まっており、中は見えないが、もう一つは蓋が開けられており、中身は空っぽ。


(何かの儀式か……)


天井まで伸びる勢いの炎と棺を囲うように、ミイラたちが不気味な十字を一台一台立てていく。半分ほど建てられた頃、隣に座っていた女性が席を立ちライラの元へと歩み寄った。


「同じ瞳だ」


ライラの頬に手を添え、女性が微笑む。


(冷たい)


触れられた手に温度がなく、ライラは目を細める。まさか死者なのか、ライラはそう感じた。


「わらわの夫に相応しい」


愛しい人をライラに映し出すように、女性はライラを通して誰かを見ていた。温度のない手が頬を撫で、ライラの顔を包む。

体温を奪われる冷たさ。ライラは寒気と悪寒でわずかな身震いをする。


(……何者だ)


女性の正体が不気味で、ライラはじっと女性を見るがその視線は絡むことなく、女性はすぐに向きを変えるとミイラたちに蓋の閉まっている棺の蓋を開けさせる。

炎と棺を囲うように建てられていた十字が全て立てられ、ミイラたちは女性の指示に従う。

棺の中身が見えるとライラは目を見開き、ゾッとした。

そこには一体のミイラが素のまま入っていたからだ。胸元に短剣を添えられたそのミイラは、少し色あせているようにも見えたが、煌びやかな装飾を身に纏っているのが分かる。

開かれた棺の中身を遠くに眺めながら、女性はうっとりとした声を出す。


「ああ、愛しの人。……わらわの元へ戻ってきておくれ」


右手を差し出すように棺へと伸ばし、女性はそのミイラに向かい合う。


(おいおい、あのミイラ動き出すんじゃねぇだろうな)


ミイラたちのように動き出すんじゃないかと、ライラは額に汗を浮かべて棺をじっと見たが、棺のミイラは動かなかった。その代わり女性が不敵な笑みを浮かべてライラを振り返る。


「お前のその身体と魂を捧げよ」


強く言い放った女性は、数体のミイラを呼び寄せる。


(捧げよって、オレは生贄かぁー!)


ここまできて、ようやく事の成り行きが見えてきたライラが激しくもがく。何の儀式かは分からないが、先ほどの言葉からして自分は棺に横たわるミイラへの生贄にされるのだと理解したライラは、シャレにならないと激しく抵抗するも、全身を拘束された状態では大した抵抗もできず、ただ唸り声をあげるだけとなった。

数体のミイラが女性に導かれライラの元へと集まると、石の椅子と括られていた包帯がまるで生き物のようにスルスルと外された。


(チャンス!)


ライラは包帯から解放されると、大剣を構えてミイラたちと対峙する。


「やっと自由だ」

「無駄な抵抗を」

「やってみなきゃわかんねえだろう」


このチャンスを逃すわけにはいかないと、ライラは冷たい汗をかきつつも大剣を真っすぐに構えて相手の出方を伺う。

ミイラが1体ライラに迫り、大剣を思いっきり振り上げると頭上から振り下ろす。


「嘘だ、ろう……」


振り下ろした大剣でミイラを一刀両断の予定が、ミイラの中身は空洞で大剣は包帯をわずかに切っただけでそのまま布で覆われてしまう。

ぶった切ったミイラの包帯で動きを封じられたライラは、力任せに大剣を振り回す。


「ふざけんなぁぁー!」


両手で大剣を持ち、包帯を振りほどくように豪快に振り回し絡まった布を振りほどく。いや、切り刻んだ。


「ほう、なかなかの腕前だな」

「ったりめーだ」


感心したように頷いた女性に、ライラは荒くなった呼吸を整えながら薄く笑う。

訳も分からないところで生贄になんてされてたまるかと、鋭い眼光でライラは次の攻撃に備えるが、立ち塞がるミイラたちから一斉に包帯が放たれればライラの身体は一瞬で拘束された。

当然、先ほどと同じように足の先から口元までしっかりとグルグル巻きにされて、地に転がった。


「んー、んんッー!」

(放せ、放しやがれ!)


「手こずらせよって」


無駄な抵抗だったと女性はライラを見下ろすと、ミイラたちにライラを担ぐように指示を出す。

包帯で動きを封じられたライラは、ミイラたちに担がれて祭壇の中心に設置されている石の棺へと運ばれる。


(冗談じゃねえー!)


ミイラたちは間違いなく、蓋の空いた棺へと向かっていた。推理が間違っていなければ、間違いなくその棺の中へと入れられる。

石でできた棺、蓋を閉められたら自力で脱出するのは不可能。

ライラはグルグル巻きにされた身体を動かして、なんとか逃れようとするが、手足が不自由では大した抵抗にもならず、どんどん石の棺へと運ばれていく。


「んー、んー!」

(マジでしゃれにならねぇ!)


口まで塞がれたライラは、うなり声をあげる。



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