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ステージ8『砂漠』(84話)

不安は消えず、イズはもう一度背後の砂を振り返る。


「大剣があるってことは、ライたんは生きてるよ」


イズを安心させるようにゼノが言う。


「それは……」

「イズたん達の武器は、一心同体なの。持ち主がいなくなれば消えちゃうんだよ」


出会った時に施した術は、持ち主と同化するようにしたのだと、ゼノが告白した。

もしもイズが死ぬようなことがあれば、愛用の武器も一緒にその命を絶つ。誰かの手に渡るようなことも、遺品として残ることもないと語っていた。


「……ボクと一緒」

「ダメだった?」

「いえ、この槍はボクの大切な相棒ですから、一緒に死ねるのはむしろ嬉しいですよ」


自分の武器を誰かに使われるのは御免だと、イズはゼノが施した術に感謝する。


「だとすれば、ライラはどこへ?」


自分たちが落ちてきた場所からはかなり離れている、一緒に飲み込まれたのだから当然砂山に落ちたことは予想される。けれど、ライラの大剣は砂山からかなり離れた場所に落ちいる。これはどういう意味なのか、イズは今考えられるだけの推測を考えるが、何も結び付かない。

現在分かっているのは、ライラの生死のみ。


「ここにこれがあるってことは、……ライたんはきっとあっちに行ったんだよね」

「この奥ですか……」

「真っ暗だね」


砂漠の熱さが嘘のようにひんやりと冷たい空気が漂う空洞の先は、真っ暗で光を飲み込むほど深い。

思わず息を飲む闇を見ながら、ゼノがイズを振り返った。


「行こうよ、イズたん」


ライラを探しにいこうと誘う。


「いつまでもここにいても仕方ありませんし、行きましょうかゼノ」

「うん」


服についた砂を軽く落として、ゼノとイズはゆっくりと闇に歩き出した。

どれほど歩いただろうか、二人は空洞に違和感を覚えた。ゴツゴツとした岩肌だった壁が、人工的な石の壁に変わり、わずかではあるが明かりが灯り始めていたからだ。


「誰か住んでるのかな?」


明らかにただの洞窟ではないと、ゼノが疑問を口にする。


「まるで石の宮殿のような作りですね」

「けど、人の気配は全然ないね」

「生活感もありませんし、そもそもこの明かりは人工的なものじゃありませんし」


壁につけられた燭台に灯る明かりは、熱も温度もなくただ揺らめているものであり、仕掛けもまったく分からず、二人は疑心を抱きながらただ歩いていた。

砂漠の下に広がるここは一体なんなのかと、不安と疑心を持ちながらも二人はライラの行方を追う。


「階段があるよイズたん」


道なりに歩いてきたゼノが見つけた下に続く階段。階段もまた石造り。

真っすぐに続く道と下へ降りる階段。二人はその道を交互に見ながら頭を悩ませる。


「さて、どちらが正解か……」

「ん~、真っすぐ!」


ゼノが悩んだのは一瞬。すぐに正面を指さしてこのまま進むと決めた。


「根拠はなんです」

「だって、あの階段ちょっと狭いよね」


確かに人一人くらいなら普通に通れそうだが、狭いと言われれば狭いような気もしたが、降りれない幅でも、通れない幅でもなく、イズはゼノを見る。


「最近お腹出てきたライたんには絶対通れないもん」

「へ……?」

「あの幅だよ。ライたんが通れると思うのぉ」


そこは危ない予感がするとか、気配があるとか、まともな答えが返ってくるのかと思ったイズは呆れて頭を少しだけ抱えた。

そして同時に思うことは、ゼノにそれを求めた自分が情けないの一点。

ライラはあの階段を通れないと言い切ったゼノの肩に、イズはそっと手を置く。


「それ、絶対にライラに言ってはダメですよ」


ゼノとライラの大喧嘩が思い起こされ、イズは余計なことは言わないと釘を刺す。面倒ごとに巻き込まれたくないのだと、イズはため息とともに冷ややかな声で「約束できますね、ゼノ」と氷の視線をゼノに送る。

当然、睨まれたゼノは首を竦めて静かに約束した。

結局、階段を通過し真っすぐに進んだ二人が次に見たのは、大きな部屋。

大きく広がったその空間には、目を見開いたような顔の煌びやかな大きな銅像が壁に埋め込まれていた。

立っているのか、座っているのか、どちらともとれる銅像は金色で、所々に装飾と彩色が施されており、息を飲む光景だった。


「おっきぃぃぃ~!」


当然のようにはしゃぐゼノ。


「これはまた……」

「キラキラしてて綺麗だね」

「金なんでしょうか? 全部?」


あまりにも煌びやかで、目を奪われる。散りばめられた宝石にも見える石は、わずかな明かりの中でも輝きを放つ。

これが全て本物だとすれば、その価値は計り知れないとイズは銅像に見入った。しばらく釘付けになっていた二人だったが、ゼノが突然走り出す。


「ゼノ」

「足音が聞こえたっ」


耳がとてもいいゼノは、わずかな音を拾った。

その音は銅像の真下にある入り口の奥からしたと、ゼノはイズを手招きして呼ぶ。呼ばれたイズはゼノの元へと走ると、口元に指を置く。

その合図は静かに。

ここがどこで、誰がいるのかもわからない状況で、むやみに出ていくのは危険だとゼノに伝える。


「とりあえず、様子を見ましょう」


声を落としたイズが、そっと壁を伝ってゼノが聞いたという足音を探しながら、奥へ奥へと音と気配を消しながら進む。

そのイズの後をゼノも静かについていく。

確かに誰かの足音が聞こえてきた。音からして速足で歩いているようであった。


「なんなんだ、いったいここは……」


足音に紛れ声が聞こえ、イズとゼノは同時に顔を見合わせた。

探し人の声だったからだ。



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