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特別編『真実の鏡』(79話)

輝く光が霞み、ゼノの白髪化が上部まで進行する。

互いに時間がない。けれど、できるだけイズのことを教えてあげたと思ったゼノの優しさはギリギリまで待つことを選んだ。イズは今自由だと、自分の意志で行動しているのだとどうしても話しておきたかった。

彼女の光が徐々に小さくなり、ゼノの黒髪もほぼ白髪に変わってしまっていた。

わずかな沈黙が生まれる。


『ありがとう、ゼノ君』


もう時間だと、彼女が静かに終わりを告げる。

イズのことを聞けて、とても嬉しかったと彼女の光から、悲しくも嬉しい温もりが溢れる。


「……ごめんなさい」


ゼノは彼女をここから救うことができないことを謝る。


『どうして、あなたは私を救ってくれるのでしょう』

「……僕は、」


それが彼女の願いだとしても、ゼノはどうしてもそれが救いだとは思えなく、わずかに俯く。



ドクッ



ゼノの身体がわずかに震えた。自身の力に飲み込まれてしまう。ゼノは白く染まる髪を忌々しそうに睨むと光と向き合った。


「あなたの意志は、ハクコクジュが、僕が受け継ぐから」


だから心配しないで。ゼノは泣き笑いの表情でそれを告げた。

光が一瞬輝きを増した。イズの母が施した術は、術者が消えれば消滅してしまう。けれどハクコクジュがそれを受け継ぐと言った、それは世界が消滅するまで、永久に解けない術となる。

この先永遠にイズは普通の人として生きていく、それは母の願い、彼女はとても温かな光を見せ、


『いつまでも愛していると伝えて』


イズにそれを伝えて欲しいと願った。

闇に耐える力が失われ、兵器に飲み込まれていく彼女に、ゼノが指を伸ばし、指先が彼女の光を捉える。

こんな化け物に彼女を取り込ませないと、強い意志で。


「僕もイズたんのことも、イズたんのお母さんのことも大好きだよっ」


叫ぶように声を出したゼノの指が、ゆっくりと上に弾かれた。

クリスタルのような光がゼノの放った力で粉々に砕け散る。彼女に秘められた力ごと全て消滅した。



『救ってくれてありがとう……、私も大好きよ、ゼノ君……』



最後に闇に紛れて声がした。それはそれは温かくて、優しくて、すごく輝く声だった。

ゼノの放った強大な力は闇をも打ち砕く。何もなかった空間に裂け目が入り、そこから光が差す。

ゼノは急いで光に向かいながら、


「我が名は、ゼノ=クロノム。その命によりその姿を戻せ」


低く言葉を紡ぎ、普段首にかけている雫の首飾りを出現させ、化け物の中に渦巻く力を吸収しつつ、自身の力をその力で抑え込むように封印を施す。

光の外に出る頃には、白く染まっていた髪が黒髪へと戻っていた。

爆発、そう表現するのが正しい。静止していた化け物の一部が突然爆発を起こした。

膨大な力とともに爆発を起こしたそれは、一番近くにしたアセトビノスとライラ、イズを直撃する。

だが、爆発により外にでたゼノが爆発に驚いてイズを手放したアセトビノスよりイズをキャッチし、ライラの身体を全力でタックルして、部屋の端まですっ飛ばした。

同時に、ライラとイズを床に伏せさせ、わずかに遅れて発生した追加の爆発の直撃を限りなく防ぐ。

化け物の中で放ったゼノの力が渦となり、亀裂の入った場所から一気に溢れ出たのだ。

耳を塞ぐ轟音と熱波、衝撃波、辺りは一瞬で粉塵に見舞われ、視界を奪われた。


「グワァッァァァァァッ!」


粉塵の中から地を這う声が響いた。化け物の声なのか? 誰もが息を飲んで粉塵が収まるのを待つ。

徐々に開ける視界に映ったものそれは、左手を失い、身体も部分的に失っていたアセトビノスの姿であった。


「ググッ……ウォォオァ……ッ」


苦痛な唸り声をあげ、床に崩れ去るアセトビノス。その反動なのか、それとも爆発の影響なのか、部屋が崩壊を始める。支柱が倒れ、天井が徐々に崩れ落ちてくる。

瓦礫がゼノの上に襲いかぶさる。

が、瓦礫が落ちる中、ゼノは誰かの下に押し込められた。

正確には誰かがゼノの上に覆いかぶさったのだ。


「ライたん」

「オレの役目だ」


ライラはゼノとイズの上に盾になるように覆いかぶさると、崩れ落ちてくる瓦礫をその背に受け止めた。


「……くっ、てめえはそいつを、……っう、何とかしろ」


苦痛に歪むライラに、瓦礫が容赦なく降り注ぐ中、ライラはゼノに光を失ってしまったイズをなんとかしろと視線で合図を送る。

まるで生きる人形。イズの瞳は何も映し出さず、身体もまた動くことを忘れているようだった。


「イズたんっ、しっかりして、ねえ」


ゼノはそっとイズを揺さぶるが、反応はなし。琥珀の瞳に光が宿らない。


「イズたんってば、ねえ、僕はここにいるよ、ねえ」

「……」

「目を覚ましてよッ」


胸倉を掴むように揺さぶるゼノだが、反応はゼロであった。


「お父様っ!」



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