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特別編『真実の鏡』(72話)

「……はは、そういうことですか」


ゼノとライラの到着時間の誤差。それは迷子。イズは思わず笑みが零れてしまった。この二人らしいと。

が、そんなやりとりも長くは続かない。


「全員お揃いのようね」


優雅に佇むセラムがライラの姿を捉え、イズに視線を送った。状況は最悪となった。


「ライラは関係ありません」


せめてライラだけでも救いたいとイズが声を張る。


「イズの知り合いか?」

「ええ、よく知っているわ」

「目的はなんだ」


差すような眼差しでライラはセラムに視線を向け、殺気を含ませて武器を手にする。

強い、ライラは瞬時にその力の差を感じ取る。


「あら、必要かしら?」


目を細めて、この状況で説明が必要かと、セラムが綺麗に笑う。セラムが地界の者なら間違いなくゼノを狙っていることは容易に判断できる。つまりイズを人質にゼノを地界へ連れていくつもりだったのだろうと。

ライラは大剣を構えてゆっくりと体制を整える。


「必要ないな」

「お利口さんで助かるわ」

「それはどうだろうな、オレは聞き分けは良くない方だ」


そう言ったライラはセラムに突進した。大剣が空を切る。一瞬で姿を消したセラムがライラの背後に迫る。

背後をとられライラが瞬時に防御態勢をとるが、構えた大剣ごとライラの身体は、地を滑り大木に叩きつけられた。たったひと蹴りで。

そして、ゼノが崩したガイコツたちが、ガラガラと気味の悪い音を立ててその姿を蘇らせていく。


「セラムッ! 二人には手を出さないでください」


槍を支えに立つイズが悲痛に叫んだ。どうあっても勝ち目はない、イズは分かっていた。


「イズたん」

「……く、イズ」


背中からまともに大木に叩きつけられ、大木を背に支え立つライラが苦痛に顔を歪めながらイズを視界に捉える。ゼノもまた悲し気にイズを見た。

焦った様子も驚いた様子も見せず、セラムは静かにイズに近づく。


「それはお願いかしら」

「……ぅ、お願いします、二人には手を出さないでください」

「もっと頭を下げてちゃんとお願いしなさい、オオジサマ」


俯いて絞り出すように声を出すイズに近づいたセラムは、イズの頭を鷲掴みし地に頭を下げてお願いしてみなさいと命令をする。

ガクッと膝を地につけ、イズは地に頭をつけてセラムに向き合う。


「二人を助けてください。……お願いです、お姉さま」


指を地に食い込むほど押し付け、奥歯を思いっきり噛み締めたイズは絞り出すように声を出した。


「……お姉さま、だと」


たった一撃で大ダメージを受けたライラが、イズの言葉に目を細めた。同時にゼノも言葉を失いイズを見ていた。


「いい響きね、あなたが私に跪いてお願いなんて」

「……お願いします」


イズはさらに頭を下げて、大地に頭を押し付けセラムに願う。ゼノとライラに危害を加えないで欲しいと。だが、その返事はライラの苦痛の声で返される。


「グワッ……っ、ぐぅ……ッ」


イズが声に顔をあげれば、セラムがライラの腹に手加減なしの蹴りを繰り出していた。強烈な蹴りを直撃で食らい、身体がバラバラになりそうな苦痛を味わいながら、ライラは大木に身体を預けたままズルズルと地に崩れ去る。意識を手放して。


「ライラッ!」

「心配しないで、殺してなんかないわ。王子様のお願いだもの」


崩れ去ったライラの身体をガイコツたちに持ち上げさせて、セラムの口元が歪む。


「これで選択肢は一つよ」


ゼノとイズに向かいセラムが逃げ道はない、地界に来てもらうと告げていた。従わなければライラの命はないと脅して。


「イズたん、行こう」


普段とは違う瞳の輝きを見せるゼノが、少しだけ低めの声を上げた。何も聞かない、問わないゼノ。

むしろイズはそれの方が怖かった。興味津々で何でも聞いて、探って、わがまま言って、本当にお子様みたいなのに、どうして今、自分に何も問い詰めてこないのか、セラムとの関係や自分の正体も何も聞かないゼノ。


「どうしてですか……」


ふと口を出た言葉。涙が止まらなかった。


「どうして、……何も聞かないのです、か」

「イズたんは話したい」


ゼノにそう問われ、イズは静かに首を振る。本当は何も語りたくない、知って欲しくない、知られたくない事実。話してしまったら二人と一緒に居られなくなる、自分もここにはいられなくなる、だからずっと隠してきた。

だが、それももう無理だと、全てを話さなければいけないとサイレンが鳴り響き、イズは張り裂けそうな胸を掴む。二人と一緒に旅が続けられなくなるとしても、二人には話すべきことなのだと分かっている、分かっている、でもどうしても躊躇いが拭い去れない。

嫌われて、軽蔑されて、きっとイズ自身を二人は許さないだろうと分かるから。


「……ボクは、……二人を騙していたんです、きっと……」


涙交じりで声を絞り出すイズに、ゼノがその金髪に手を添えた。



ポンポン



いつもイズがしてくれるように、ゼノが頭を軽くポンポンと叩いた。



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