ステージ7『真理』(46話)
シオンとクレイデスの戦闘能力は高い。同じハクコクジュから生まれた二人だが、二人の役割はレムを守ること。ハクコクジュの力がないわけではないが、レムにはかなり劣る。しかしその戦闘能力は、レムを守るために生まれたというだけのことはある。
「そいで、完成まであいつどないすんねん」
ゼノを捉えてきたのはいいが、まだレムの目的は完成していないとシオンが困った顔を見せる。
その言葉にクレイデスが少しだけ前に出た。
「力が使えないのなら、このまま捕えておけばいい」
「そういうもんなんか」
「あの男は目的のために必須だ」
クレイデスは目的が果たされるときに、ゼノが絶対に必要なのだと強く声を出す。自分たちの望みを叶えるためにはゼノが必要不可欠であるがため、このまま捕えておくと言う。
「ゼノおにいちゃんが何してるかわからないけど、邪魔されると面倒だからね」
自分たち同様、ゼノも世界に何かを仕掛けている、それだけは分かっていた。しかし、その内容まではまったくわからず、レムはそれが望みの邪魔になると判断した。
「力が使えなければ、ただの人だ。捕えておくことなど造作もないだろう」
「それもそやな」
「逃げられないようにだけ見張っておけ」
クレイデスはシオンに監視役を任せた。
「危害とか加えないでよシオン君。ハクコクジュから生まれたって言っても、人なんだから怪我もするし、死ぬことだってあるかもしれないんだから」
活気盛んなシオンに釘を刺すレムは、暴力とかは控えてと忠告する。
「わぁってるって。まだなんもせえへんうちから加害者にせんで欲しいわ」
片手を挙げたシオンは、まだ何もしてないうちから犯罪者呼ばわりは勘弁してほしいと、軽くあしらう。
「ところでレム。あの二人はあのままで良かったのか?」
「おにいちゃんと一緒にいた二人の事?」
ゼノを追ってこない保証はない。些細なことかもしれないが、邪魔をされると面倒だとクレイデスが問う。
「あの金髪美人さんたちなら全然問題ないでレム。片手でも全然余裕や」
力の差は歴然だったとシオンが笑う。あの二人なら指一本でも勝てると余裕の笑みを見せた。
だが、レムの表情は険しくなりシオンに真っすぐな視線を向けた。
「シオンくん、あの二人をあまり甘くみないほうがいいよ」
「なんでや? どうみても俺のほうが上やろ」
「……それはそうなんだけど、なんか嫌な感じがするんだあの二人は」
強い弱いではなく、何か言いようのない不安が募ると、レムは嫌な予感が拭い去れないと顔を曇らせた。
力なら圧倒的にこちらが勝っている、それは間違いない。けれど、微かに感じる胸騒ぎがどうにも収まらない。それはゼノが選んだ二人だからなのか、ゼノと長くを共にしているせいで、ハクコクジュの力の影響を受けているからなのか、レムは言葉にできない不安だけを抱えた。
「気を抜くなということだシオン、いいな」
レムの心境をわかってか、クレイデスがシオンに忠告する。
釘をさされたシオンは小さくなりながらも「へいへい」と軽くあしらうように返事を返した。
「……ん……ぅぅ」
小さなうなり声とともに、暗く冷たい部屋でゼノがようやく目を覚ましていた。固いベッドに薄気味悪い天井。
「まったく乱暴なんだから」
ことの成り行きを覚えていたゼノは寝起きから機嫌がよろしくない。それからゆっくりと身体を起こし、ゼノはベッドに腰掛けた。
「僕の望む世界……ハクコクジュはそれを望んでもいいっていったよね」
誰もいない部屋でゼノは誰かに話しかけるように声をだした。その声はまるで涙でできているかのように寂しく。ギュッと拳をにぎりしめたゼノは、レムの言った「ハクコクジュはそれを望んでいない」という台詞を思い出していた。
「だから僕には見つけられないの?」
どんなに探しても見つからないハクコクジュ。その力を感じることもできず、ただただあてもなくさまよいながら旅をしている。いつか見つけることができると信じて。
「……会いたいよ」
俯いてゼノは消え入りそうな声をだした。柄にもなくゼノは一人大人しくする。……が、次の瞬間なにを思ったのか、ベッドから飛びおりた。
「そうだ、ライたんとイズたん。……大丈夫だったかな?」
ハクコクジュから生まれた者を前にして無事でいたのか? 二人の安否が気にかかりゼノはこうしてはいられないと、ドアをものすごい勢いで開けると廊下へと飛び出した。
ドカッ
廊下に出ていきなりゼノは鳩尾に鋭い蹴りを喰らった。
「うっ、ぐぅ」
あまりにも突然におもいっきり入れられた蹴りに、ゼノが苦しげに廊下に転がる。
「どこいくんや」
転がったゼノの顔を覗き込むようにシオンが立っていた。蹴りを入れたのは間違いなくシオン。それからシオンはゼノの前髪をもち、顔をあげさせる。
「……ぅ」
「油断も隙もないなぁ、めぇ覚めたんならおとなしゅうしててくれんと困るわ」
「僕がどこへいこうと、僕の勝手だもん」
無理な体勢で顔をあげさせられながらも、ゼノは拗ねたように顔を背けた。




