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ステージ2『毒』(4話)

◆◆◆

獣道。

草は茂り、樹木は倒れ、ところどころにコケまで生えている足場が最悪に悪い道を、二人はただひたすらに崖に向かって走っていく。

が、何を思ったのか突然ゼノがイズに足払いをし、その場に倒した。


「―――ッ!」


バランスを崩したイズがその場で大きく倒れるが、受身をちゃんととったおかげで、大事にはいたらなかったが、イズには何が起こったのか全く分からない。


「ゼノ、いきなり何をするん……ン」

「し~」


足をかけられ転倒させられたイズは、次にゼノの手で口を塞がれた。

一体何が起こっているのか分からないまま、イズは静かにゼノを見る。

どこか遠くを見ながら音、もしくは気配を探っているようなゼノに、イズも耳を澄ます。


「……急いでるのになぁ」


囁きにもにた小さな声でゼノが呟く。


「ゼノ?」


耳を澄ますが、聞こえてくるのは風で揺れる木々のざわめきだけ、イズは不審にゼノに問いかけるが、ゼノは持っていたロープをイズに差し出してくる。


「イズたん、これ」

「ロープ?」

「僕に団体のお客さん」


ここでようやくイズは、何が起こっているのか理解できた。

団体のお客さんの意味、それは天界人、もしくは地界人がここへやってきたということを意味する。

確かに木々のざわめきとは異なる音がわずかだが感じられ、イズは風音に混じる足音をやっと拾うことができた。


「まだ距離がありますね」

「僕、接客は得意じゃないんだけどな」

「もしかして、おもてなしするつもりですかゼノ?」


苦笑いをするゼノの言葉の意味をわかって、イズもそれにあう言葉を返す。


「ライたんは任せたよ、イズたん」

「だったらボクが行きます」

「ダメ。お客さんは僕に用があるんだから」


そう強くイズに言うと、ゼノは足音のする森を見つめる。

狙いはゼノで間違いない。ここで引きつけておけばイズが狙われることはないと、ゼノは判断する。真っすぐにクロネ草を目指せると。

言い出したらきかない。まるで子どもではあるが、その意志は時としてなによりも固いと知っている。

それをわかっているからこそ、イズは何も言い返せなくなる。


「……鬼ごっこにしてくださいねゼノ」


戦闘を好まず、いままで一度だって戦う姿を見たことがなく、決して強いとは思えないゼノに、イズが不安な感情を込める。

相手が天界人ならその命を奪われるかもしれない、地界人なら捕獲され地界に連れていかれてしまうかもしれない、結果はどちらかになるだろう。

だから、どうか逃げ切って欲しいと願う。

世界が生んだとされるゼノだが、自分たちと何も変わらない、手足があって、同じ血が流れ、心臓(鼓動)だって存在する。ゼノが死なないという保証などどこにもない。

むしろ、ハクコクジュはゼノの代わりなどいくらでも生み出せるかもしれないと考えたら、イズはどうしようもない不安に押しつぶされた。


「……」

「鬼ごっこは得意だよ」


口を閉ざしてしまったイズに、ゼノが満面の笑みを向ける。心配なんてどこにもないのだとそれは語っていた。


「そう、……ですね。逃げ足は一流ですから」

「そうそう、絶対捕まらない自信あるもん!」

「わかりました。クロネ草届けたら、ボクもすぐに駆け付けます」


とっとと薬草を手に入れて、すぐにゼノを助けに戻ると約束したイズは、服についた土を払いながら起き上がり、ゼノにいつもの優しい笑顔をつくる。

震えるほどの恐怖と心配を隠すように。


「とっとと叩き起こしてきますね」


毒で倒れているライラを叩き起こしてくると、イズは少しだけ意地悪な顔をする。

そして互いは背を向けて別の方向へと足を進めた。


「無茶は禁止ですよゼノ」

「イズたんも気をつけてね」

「……ゼノ」


遠ざかるゼノにもっと言いたいことがあったのだが、イズは名前を口にするのが精一杯だった。こみ上げてくるいいようのない不安がどうしても拭いきれない。

いつからこんなに心配性になったのかと、自分でも疑問に思うほどに……。

そしてゼノの無邪気な声は、絶対値に近い安心をイズに与えた。


「僕は平和主義者だから、ね」


戦闘はしないと言ったゼノの言葉に、イズが走り出す。


「ゼノ、あまり遠くに行かないでくださいよ」


すぐに迎えに行きますとイズは言い残して、断崖絶壁へと1人向かった。




◆◆◆

多数の足音は徐々に近づき、目的のものを見つけ一斉にその音を止めた。

とはいえ、わざわざ口笛を吹いて場所を教えたのはゼノであるが。


「見つけたぞ、ゼノ=クロノム」


リーダー格の男が姿を現すとゼノを見つけて真っ先に声をかける。そして声を掛けられたゼノはにっこりと笑って見せる。ちゃんと自分を見つけてくれたということは、イズに向かうことはないと考えたからだ。


「こんにちは」

「貴様の命いただく」


挨拶をしたゼノに対してそれを完全無視して発言した男に、ゼノが不機嫌な顔を見せた。挨拶したのだから、ちゃんと挨拶くらいするべきだと頬を膨らませて。


「第一印象は減点」

「みたところ1人のようだな。仲間がいると聞いてはいたが、ひとりとは好都合だ」

「僕の命が欲しいってことは、天界の人?」

「かかれ!」


ゼノの言葉も質問も完全無視され、男は自分の連れてきた仲間に抹殺の合図を送る。

人数にして8人。それぞれが合図を受け四方八方からゼノに襲い掛かった。



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