ステージ5『友』(25話)
西の門にいたイズに気づいたゼノは、さらにスピードをあげると両手をめいっぱい広げて、イズに向かって全力疾走。
「イズたぁぁ~~~ん!」
半分泣きながら走ってくるゼノはまっすぐにイズに向かってくる。
まさか自分の方へ来てくれるとは思ってもみなかったイズは、嬉しいのやら驚きで、しばし混乱する。
抱きっ!
ものすごい勢いで走ってきたゼノはその勢いのままイズに飛びつく。
「ゼ、ゼノ?!」
「イズたん助けて。ほんとに誤解なんだってばぁ」
「誤解?」
一体なにを言っているのかさっぱりわからないイズは、ゼノに抱きつかれたまま考え込む。
『ガルルル』
『ウウウッ』
抱きつかれたゼノの背後から低いうなり声が聞こえ、イズは恐る恐るそれを確認した。
真っ黒の大型犬が2匹。
しかもかなりご立腹のご様子。
「……ゼノ」
イズは低い声でゼノの名前を呼ぶ。そこに込められた意味は『なにをしたんですか?』であり、答えなければ助けませんを意味している。
「宿屋の二階から飛び降りたら尻尾踏んじゃったみたいなの……あはは」
「それだけですか?」
さらに冷たい声がした。
「んと、前足も踏んじゃったかも……てへ」
『ガウウウウ……ワンッ』
少し距離を置いていた犬が痺れをきらし、再びゼノに襲い掛かる。
が、ここで犬はイズをゼノの仲間と認知。標的は2人となる。
つまりこれが巻き添えというものであり、
「わぁぁぁぁ~~」
「なんでボクまでこうなるんですか?!」
仲良くゼノとイズは犬に追いかけられることとなった。
街の中を大騒ぎで駆け抜けていく二人はついに東門まで逃げていた。
でもって逃げ足の速いゼノが今度はライラを発見。
「ライたぁ~~~~ん! 会いたかったよぉぉ~~」
の言葉とともにゼノはイズ同様ライラに飛びつき、背後におぶさるように身を隠す。
「なにやってんだお前?」
全力で走ってきたかと思ったら、その勢いのまま抱きつかれ、なぜかおぶさる形になったことに、ライラは顔をしかめてその疑問を投げかける。
だが、その答えを聞く前にゼノと同じく全力で走ってくるイズを見つけ、ライラは呆然とその光景をみた。
「ゼノ、自分で蒔いた種くらい自分でなんとかしてください!」
ぜぇぜぇと息を切らしながらイズは精一杯叫ぶ。
「ライたん、手かして」
背中から唐突に声をかけられ、ライラは素直にゼノに手を出してしまう。
「タッチ交代」
パンッと乾いた、いい音をたててゼノがライラの手のひらを叩き、そのまままたどこかへ走り去る。
「お、おいゼノ!」
状況がまったく掴めず、読めないライラは、走り去るゼノの後姿に声をかけるが、止まる気配もなくゼノはそのまま逃走。
ポンッ
呆然とゼノを見送るライラが、誰かに肩を叩かれた。
「はぁ……はぁ……あのお子様、殴ってもいいですか」
息を整えながらイズが超真面目にそう声をかけてきた。
そんなイズの後ろからは、殺気だった犬が2匹走ってくる。
もちろんここで犬の標的は2人から3人へ。
さらに巻き添えを食らったライラも走り出す。
「なんでオレまで逃げなきゃならねえんだ!」
「それはボクの台詞ですよ! 文句ならゼノに言ってください」
ライラとイズは肩を並べて走りながら、すっかり姿の見えなくなったゼノを必死に探す。
「で、なにしやがったんだあいつは」
「尻尾と足を踏んだんだそうです」
「あいつは馬鹿か」
あまりの情けない事実に、ライラはため息とともにその言葉しかでてこなかった。
それでも自分にはまったく関係ないことに変わりはなく、無関係で犬に追いかけられるはめになったことに、ライラの怒りはフツフツと湧いてくる。
「イズ、さっき殴ってもいいかって聞いたよな」
「ええ、聞きましたよ」
質問にイズがそう答えると、ライラはイズの方へ顔を向け、楽しそうなこわ~い笑顔をつくった。
「答えはYESだ」
「Roger!」(了解!)
かくしてライラとイズは、犬に追いかけられながら、ゼノ捕獲作戦を実行すべき手を組んだ。
きっと明日も良い天気になるだろう。
3人の旅もまだまだ続きそうだ。
◆◆◆
世界の深奥、ハクコクジュの深い闇に蠢くものがあった。
光の届かない奈落の底のような場所で動いたのは、白い腕だった。
ステージ5 クリア
―――――✂―――――✂―――――
ステージ6『深淵』
夕日がオレンジに染まり、地平線へと姿を隠そうとするころ、相変わらずの3人は地図とあるものを見比べていた。
前方に見えるのは小さな村。
だが、その村は地図に記載されていない。
「どう思いますか?」
まだかなりの距離がある村を眺めながら、イズがゼノとライラに問う。
「小さい村っていうより集落みたいだね」
「荒野のど真ん中だな」
「不自然に目立ってますね」
不信感を募らせて3人は罠である可能性が高いとみた。
広く開けた大地にあり、かなり目立つ村であるにもかかわらず、地図に載っていない。
なにかの罠だと考えるのが妥当。




