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ステージ5『友』(24話)

「あいつらが優しいのはわかってんだ。少し一人になりたかったのも確かだ」


今更ながらライラはそれを認めた。

それでも


「ゼノにもイズにも変わってほしくなかったんだよ。いつもみたいに笑って、怒って、バカやってたら、お前のことをバカな親友だと思わなくてすむと思った……」


割り切れない気持ちがある。忘れるためにそれを望むんじゃない、今でも最高の親友だと望みたいからそれを望む。

でも本当は、1人になれば嫌でもよみがえる記憶が、怖かっただけかもしれない。

自分が今生きていることが間違いだと、そんな風に考えたくなくて、いつもと変わらない生活、旅をして欲しかったと思っていた。だが、二人はライラに気を遣い、傷口に触れないようによそよそしく振舞うようになった。

それがいつしかストレスとなり、苛立ちへと変わり、許容量を超えた。



『俺はお前の傍にいる。……そうだろ、ライ』



風の音に声がした気がした。


「……馬鹿はオレか」


人を寄せ付けないオーラを纏っていたかもしれないと、ライラは自分にも落ち度はあっただろうと、思い直す。

だが、時すでに遅し。今更どうにもならず、するつもりもないと、ライラは深いため息を吐く。

青い空を見上げたライラは、ゆっくりと一度瞳を閉じた。


「イズ、お前の小言、嫌いじゃなかったぜ」


どこか楽しげにライラはそれを口にすると、瞳を開けて再び空の青さに視線を奪われた。

壁にくっつけていた足裏を地に降ろすと、町を振り返る。

待ち人の姿はまだなく、影も形も見えない。


「あの屋根まで陽が昇ったら、出るか……」


降り注ぐ太陽の光を眩しそうに見上げたライラは、夕刻を待たずして一人旅に出ることを決めた。

約束を果たせないことは心残りだが、イズなら料理や金銭管理、ゼノの教育係も大丈夫だろうと考えての選択。

元々一人は得意だと、ライラは建物の壁に背を預け、しばしの休息をとる。

目的のない一人旅に何か目的を見つけようと、目的の場所に陽が昇るまでのしばしの時間考えることにした。






◆◆◆

西の門。


「短気……」


門の出口より少し街に入った横の壁に寄りかかり、イズはふと呟いた。

普段ならもっと冷静に受け答えができたはずなのに、ここ最近ライラに気を遣いすぎて疲れてしまっていた。だからめずらしくライラの言葉を買ってしまった。

一人になり、気持ちが落ち着いたイズは、自分らしくもなかったとため息がでる。


「馬鹿はボクかな? 同情なんてなんの慰めにもならないのに……」


サラサラとした金髪をかきあげて、イズは地面に視線を落とす。

その人の代わりなんてなれないし、気持ちだってわかるはずもない。

『その気持ちわかる』なんて、気休めの嘘にしか聞こえない。たとえ同じ境遇にあったとしても人の心も想いも深さも同じじゃないのだから。

優しさ、親切、慰めは時に嬉しいが、時にそれは悲しみ、痛み、傷となる。

そこまでわかっていたのに、今でなければ分からなかった。


「ほんと、おとなげないなぁ、ボク」


なぜあんなにムキになって、喧嘩売って、こんなことになったのか? イズは後悔を胸に抱いた。

街は賑わい、大勢の声が聞こえているはずなのに、イズの耳にそれは届かず、静かな世界がイズを取り囲んでいた。


「さて、これからどこに行きましょうか」


自己嫌悪に浸り、暗くなっていた気持ちを振り払うように、イズはいきなり声を高く顔を前にあげる。

約束の夕方にはまだほど遠いが、イズは身体を伸ばして旅立ちの準備を始める。


「ゼノはライラに懐いてましたからね」


自分の元へはこない。そう判断したイズは、一足お先に旅にでることを決めた。

お別れくらいちゃんとしかったのが本音ではあるが、ゼノに会えばきっとまた問題が起きる。これ以上ライラと険悪になるのは避けたい……その結論が、このまま黙って消えるという選択をイズに与えた。


「とりあえず、大きな街かな」


次の目的地は大きな街にすると、イズは決める。

兎にも角にも、仕事と住むところがないと生活ができないと、イズは現実を見る。大きな街ならば仕事も住むところにも困らないし、そこで一生平凡に暮らしていこうと老後までの設計を見積もる。


「将来的には、マイホームが欲しいですね」


そこで静かな老後を過ごしたいと、イズは叶えられるかどうかわからない果てしない先の夢を妄想し、微かに笑うと軽くストレッチをしてから、靴紐を確認し、忘れ物がないかチェックし、イズは西の門をくぐる。


(二人ともいままで、本当にありがとうございました)


門を出ると同時に、イズは心でゼノとライラに感謝を込めて言う。

もう会うことはないだろうと、一人街を後にした。






◆◆◆


「助けてぇぇ~~~~~~~!!」


街を出てすぐにイズの耳に助けを求める声が響き、思わず何事かと振り返ったイズは目を丸くした。

街の大通りを両手を挙げて必死に走っている人物に、よぉ~く見覚えがあったから。

そしてイズは慌てて街中へ引き返した。


「ゼノ?」


走っている人物を再確認するようにその名を口にする。



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