表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/35

ステージ5『友』(21話)

「イズ、余計な気使うんじゃねぇよ」


朝一番、ライラは寝起き一番に不機嫌気味にそうイズに声をかけた。

誰よりも早く起きて身支度を整えていたイズは、思いもよらないライラの台詞に動きを止める。

朝日が差し込むベッドの上で、上半身のみをおこし、睨むように視線を向けているライラに、イズもつられて眼を細めた。


「なんのことですか?」


身に覚えないとイズは言葉を返す。


「この超お子様がここずっと絡んでこない……これでも白を切るか」


隣のベッドでぐっすりと熟睡中のゼノを視線で指しながら、ライラは問う。

レックの一件があってから、ゼノは天地がひっくりかえるほどに大人しくなり、ライラにまったく絡んでこなくなっていた。

普通に考えて、裏でイズが糸を引いているだろうことはわかる。だからゼノを問い詰めるよりも黒幕を問い詰めた方が早い。


「ゼノも大人になったんじゃないですか」

「なら、お前の口数も減った……、これはどういうことだ」

「ボクは元々無口な方ですから」


淡々とライラに返事を返しながら、イズは自分が使っていたベッドを整えなおす。

その行動はいたっていつものイズではあったが、どこかいつもと違う空気があった。

それに、ライラもここ数日様子がおかしい二人にイライラが積もり、かなりのストレスが溜まりつつある。

ようするにイズもライラも自分を抑えるギリギリまできていた。


「同情なんかいらねぇってんだよ!」


ついに我慢ができなくなり、ライラのストレスは爆発した。

妙な同情、情け、慰みなんか邪魔だ。

そんなものはかえって傷にしかならない。傷をより深くするのはそんな同情の類だ。

哀れんだ感情で接するくらいなら、いっそ全てなかったことにした方がマシ。

そう、あの日はただ雨が冷たかっただけなのだと。

ライラは抑えきれなくなった感情をイズにぶつけた。

そして怒りの矛先を向けられたイズも、


「同情じゃなくて、優しさっていってほしいですね!」


勢いよくライラのほうへ振り向くと大声で怒鳴る。


「ゼノがお子様じゃなくなって、お前が無口になった……これのどこが優しさだってんだ」

「言わせてもらいますけど、ライラに気を遣ってなにが悪いんですか?!」

「いいか、レック……あいつはああなることを望んだんだ。あいつが自分で望んだ」


吐き捨てるようにライラは苦々しくそれを口にする。

救う手段は何一つない、それが願いの代償。

冷たく崩れたレックの身体の感触、重さは、まだライラに染み付いている。

大罪を犯した後のように鮮明に……、それでも笑っていたあの優しい表情は、全てを許すことを許していた。

だから何も変わらないとライラは思いたかった。

あいつはいつでもどこかにいる。

所詮ご都合主義の考え方だとしても、自分を見失うような馬鹿な真似をしなくてすむのなら、それでもいいと。

でもゼノもイズも優しすぎた。ライラをこれ以上傷つけないようにと気を遣いすぎて、接することを避け、なるべく一人にしておいた。

ライラがいつものように振舞おうとすればするほど、違和感は大きくなり、ストレス、不満へと変わっていく。


「あの時ライラ、あなたはこの結果を望んでいなかったんじゃないんですか?」


無言になった部屋でイズが話を切り出す。

間違いなくあの時ライラも命を落とそうとしていた。

イズやゼノがどれほどの恐怖を味わったかなんて、ライラにはわかりはしない。

相打ちなんてバカなことを。

シーツを整えたイズはじっとライラを見つめてその場で動きを止めた。

二人の視線は熱く、それでいて氷のように冷たく交差する。


「オレの勝手だ」

「簡単に言ってくれますね」

「……言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだイズ」


声のトーンが一気にさがり、部屋の気温さえ下がったような気がした。


「別に言いたいことなんてありませんよ。言ったところで頭の固いライラにはわからないと思いますので」

「前々から思ってたんだが、お前のその嫌味な性格なんとかならねぇのか」


背中に朝日を浴びながら、ライラが鋭く瞳を光らせる。


「ライラの言いたいことはよぉ~くわかりました。なら言わせてもらいますけど、いい年してゼノと一緒になってはしゃぐのやめていただけます」

「はしゃぐだぁ?! オレのどこがはしゃいでるってんだ」

「自覚ないなんて重症ですね」


売り言葉に買い言葉。

頭に血が上った二人の会話はどんどんエスカレートしていく。


「ゼノを甘やかしてんのはどいつだ」

「そんなつもりはありませんが」

「お前が甘やかすから、こいつは調子に乗んだ」


イズがゼノを甘やかすから、ゼノはどんどんわがままで自由奔放になるのだと、ライラは舌打まで含ませて不機嫌を振りまく。


「ゼノのわがままは、生まれつきですよ」

「お前が甘やかさなきゃ、もっとマシになんだろう」

「どういう意味ですかっ」

「一般常識くらい身につくってことだ」

「常識がないのはボクのせいだと、そう言いたいんですか」

「そうだ」


ゼノがこんなにもお子様で非常識なのは、全てイズが甘やかしたのが原因だとライラははっきりと口にする。

互いの視線は複雑に絡まり、火花が見えそうであった。

それは、つかみ合いの喧嘩よりもそれは恐ろしいものと変化していた。

目が完全に笑っていないイズと轟々と燃え盛る瞳のライラ。そしてぐっすりと眠るゼノ。

宿の一室は誰も近づけさせないオーラを放つ。


「買ってやるよ」


先に動いたのはライラ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ